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カナブンびより

 良子は田舎に住む平凡な主婦。ある日、良子の家の庭に巨大カナブンの死骸が転がっていた。茶色いほう。

 良子は虫が触れないので、警察に電話したが、「民事には介入しません」と言われた。それでも、しつこくなんとかしてくれと食い下がったものの、「カナブンが出たくらいで110番するな」とポリスマンはピストルの入った黒い革のケースを撫でた。

 困った良子はNHKに電話した。テレビが取材に来てインタビューを受けた。テレビに映りたくなかったがカナブンの大きさが分からないと、モザイクなしでTVデビューしてしまった。

 夕方の地方ニュースに少しだけ映ったそのニュースのせいで、近所の子供達がカナブンババアの家と勝手に庭に入り込むようになった。面倒に思った良子は役所に電話する。

 翌朝、ゴミ収集車がやってきてカナブンをパッカー車に放り込んだ。てっきり、博物館か何かが採集するものだと思っていたので良子は驚いた。
「カナブンじゃダメなんだよ、カナブンじゃ。」
 収集人は、そう言った。

 カナブンはペキペキと音をたて粉砕され、パッカー車の中に吸い込まれていった。


 



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