小説【 dreamers 】14
「唐揚げとサラダと、あといくつか」
恭子は食器棚から皿を出す。唐揚げは揚げたてで湯気を上げている。
「やった」と英理は1つつまみ食いし「うん、おいしい」とうなずく。
「やめなさい」と恭子は顔をしかめ、
「いいじゃん。お腹減って」
「手ぇ洗ってないでしょ。汚いでしょ」
「うん――」
「いつまでも子供ね」
「ハラハラヘリヘリ」と英理はおどけて「ハラヘリヘリ」と歌うように言いながら廊下へ。2階に上がる。心外だった。気をつかったのに、と思う。確かに手は洗ってなかったが『汚い』なんて言われたくない。
昨日ホテルに入った母を見て最初に思ったのは「汚い」だった。知らない男に抱かれてあり得ない。
だから言われたくなかった。でもイライラを出してしまったら、なんのために階段を下りて話しに行ったかわからない。
『いつまでも子供ね』
言われた通り子供っぽくおどけるしかなかった。空気を壊さず離れるしか。
なんなのこれ? なんでこんな目に?
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