小説【 あの夏あの島で 】-3-

1日に二度も見るなんて、と美歩は心に残り、その日だけでなくゴールデンウィークが終わっても思い出した。迷子を肩車していた彼。日傘を届けた彼。いい人なのは間違いない。

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「美歩ちゃんちって藤沢なの?」とゼミ仲間に聞かれたのは5月下旬の水曜日。女子5人で学生食堂のランチを食べている時だった。美歩はまだ馴染んでなく隅に座っていたが声をかけられ、「江の島近い?」と聞かれて「まぁ」と答えた。

「どんくらい?」

「歩いて2~30分とか」

「行こうよ今度みんなで江の島」と別のひとりが言い「あの辺いいよ、エノスイとか」

「鎌倉も近いしね、江ノ電で」と場は盛り上がった。

「1日でそんなあちこち無理っしょ」と言ったのは棚橋彩という女子だったが、

「泊りがけよ泊りがけ。波多野さんち近いって言うし」と他の女子はノリノリで、

「え」と美歩が困惑しても、

「いいねそれ。泊めて泊めて」「お家おっきい?」「雑魚寝でいいから」「布団もいらない。最近暑いし」と話をどんどん進め、

「いいけど」と美歩がうなずくと翌週の金曜日にみんなで江の島に行くことになった。

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