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自由になった時の君の姿

「縛られてみたいんです。」
初めて会った頃のあの子はSM未経験者。緊張を解すためにお茶を一緒に飲んで話を聞いていると少しずつ体験したいコトを溢していく。風呂敷をといて縄を並べて行く。彼の身体にはどの長さが合うだろうか。どう縛っていけば安心して身体だけでなくマインドも預けてくれるのだろうか。色んな質問が私の頭を過ぎる。縄を解いて縄尻を摘む。半分に畳んだ縄を彼の身体にできるだけ丁寧に這わせる私の指先。
「どう?気持ちいい?」
思わず言葉数が少なくなりつつも、時折彼に声を掛ける。キチキチに縛り上げながら彼の反応を見ていく。身体全体をプルプル震わせる彼。つい私の口角が上がってしまう。なんて可愛くリアクションをとってくれるのだろう。縄で他人の自由を奪うとついつい相手を愛おしく感じてしまう。

手をスッと上げてパチンと臀部を叩く。我慢しつつも変な声を漏らしてしまう彼。平手打ちが続けば続くほど声が続く。
「こんなことされて嬉しいの?」
手のひらからバラ鞭へ。真っ赤に腫れ上がりつつあるお尻を指先でなぞって遊ぶ。
「もっと欲しいの?」
素直におかわりをお願いできたご褒美に一本鞭を取り出す。リズミカルに打ち続け、言葉のない対話を長引かせる。苦しみと快楽に入り混じった彼の姿。私の手の中でこんなになってしまうとは。

楽しい時間はあっという間に終わってしまうー この現象はなぜ何時も起こるのだろうか。縄を解くと彼は蹲ってピクピク動いている。何か抱え込んでいたことを放出したのか、彼は会った時とは正反対、温かい笑顔になっていた。
「ありがとうございます。」
シンプルな一言でも、私にとっては最高の褒め言葉。目をキラキラさせた彼の表情にこちらもつられて笑顔になってしまう。
「また会おうね。」
私の縄に抱き締められ、苛められ、最後は自由になった彼。別れる前の満面の笑みが私の心の中に残っている。

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