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いわゆる「出題ミス」について

今年も受験シーズンがやってきたが、残念ながら出題ミス(?)の報道などもちらほらと聞かれる。実際に大学入試の採点や作題に長年従事し、このマガジンでも「大学入試について思うこと」や「採点基準と頭のよさ(1)〜(5)」などの記事を書いてきた私にとっても、いろいろと考えさせられる次第である。

報道などで出題ミスとされるケースは、チェック体制の甘さやうっかりミスなどから起こるものとされることが多い(今年もそういう種類のものがあったようだ)。しかし、端的にいって、報道されるようなミスが本当に起こり得るなんて、私の経験からすると、とても考えられないようなことばかりである。だからこの手の報道に接するたびに、どうしてこんなことが起こったのか?と考え込んでしまうことが多い。少なくとも私の経験では、何度も何度も何重にもチェックを重ねて問題は作られるので、初等的な間違いやうっかりミスなどが起こる隙は、とてもないように思われるからだ。

そこで、少々憶測が過ぎるかもしれないが、どのような状況でどんなことが起こった場合に、このような出題ミスが起こってしまうのか考えてみた。以下で取り上げるのは、特定の事例について論じているのもではない。あくまでも一般論として考えられ得ることを、すでに大学を辞職してアウトサイダーになっている人間が論じるものであることを最初にお断りしておく。

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このマガジンのタイトルにある「数学する精神」は2007年に私が書いた中公新書のタイトルです。その由来は、マガジン内の記事「このマガジンの名…

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