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心苦しい面接官の胸の内。

私の本業はキャリアコンサルタントなのだけれど、副業として企業の面接代行なども行っている。言葉を選ばずに言うならば、ある企業の採用担当のフリをして面接を実施しているのである。

たいていは1次面接を担当するので、これまた言葉を選ばずに言うと、色々なレベル感の候補者がいる。今担当している企業は、母集団形成のために広告媒体ではなく人材紹介業者を利用しているのだけれど、それでも候補者の質感というのは非常にマチマチである。

従って、自ずと合格率はある程度絞られてくる。
ざっくりと言うと、この3か月くらいの平均で言うと35%くらいだったので、3人面接したら1人合格というくらいの割合だ。

決して、クライアントから「3人に1人の割合で合格させてください」というようなリクエストを受けているわけではない。(企業によっては選考プロセスごとに合格率をある程度明確に設定している場合もある)

合格率の指定を受けているわけではないが、与えられた合格基準や必要要件に照らし合わせて採否判断を行っていくと、自然とそれくらいの割合になっていたというのが実際のところである。

元々は合格率を意識していなかったにも関わらず、ある程度の数をこなした結果、合格率35%というのが私の中での一つの目安のような位置づけになってきている。

もちろん、要件を満たす人がいれば3人連続で合格を出すという事もある。(合格率が設定されている場合は、絶対評価ではなく相対評価で合否を判断することになる)


という、合格率の前提を踏まえた上で、最近少し心苦しいことがある。

それは、ここのところ立て続けに不合格判断が続いている。
”期待値的”に考えれば3人に1人というところなのだが、10人ほど連続で不合格が続いている。計算が合っているか自信がないが、こんなに不合格が続く確率は2%にも満たないはずである。

面接の割り振りは完全に日程の合うところから調整をしていくので、面接で話を聞いてみるまで、どのような候補者なのか私は全く知らない。

候補者はランダムに割り振られているはずなのに、不合格がこれだけ続くというのは、私自身の判定基準が無意識のうちに高ブレしているか、或いは人材紹介業者から推薦されてくる候補者の人物像がズレてきているかのいずれかという事になる。

母集団形成や人材紹介業者とのやりとりというのは、別の方の担当領域なので、そこはノータッチだとして、自分の目線がズレてきていることをまずは疑ってみる。
もし1次面接の目線がズレていたら、採用成果へのインパクトはかなり大きいものとなってしまうので、かなり危ない。


そんな考えもあって、今日の面接はかなり慎重な姿勢で臨んだ。
変な話だが、「よほどのことが無ければ合格」というくらいの姿勢だったと言っても過言ではない。

もちろん、クライアントから委託されていることなので、明らかに基準を満たしていない方を合格とすることは出来ないが、ギリギリ?と迷うくらいの方であれば、諸手を上げて合格にしようと思っていた。


・・・そんな姿勢で臨んだにも関わらず、よほどのことがあったのである。


今日対応した面接は2件。
まさか?と疑いたくなるほどの状況だったが、結論からいうと2名とも不合格。


面接というのは、面接官以外にも様々な人たちの協力で成り立っている。
候補者を推薦してくれる紹介業者、その業者とやりとりをする担当者、面接日程の調整担当者、そして面接官。

面接で不合格にするということは、その前プロセスの労力を水に流してしまうという事になる。
従って、出来ることならば合格にしたい。どんどん次に進めたい。

けれど、明らかに次の選考で不合格になりそうな方を無理矢理に合格させてしまうと、次の面接調整のための労力、次の面接官の労力、そして候補者の時間と労力を奪ってしまうことになる。

従って、たまたま算出された合格率を守るために、そのような無茶は出来ない。そして、私は今日も不合格を続けて出した。

あぁ、こんなに合格にしたいと思っているのに。


ちなみに、合格が続いてしまうようなときは、全く逆向きのベクトルが働く。「少し合格しすぎている。目線が下がっているのか?もう少し厳しめに見た方がいいのか?」という考えが一瞬でも頭をよぎると、無意識のうちに判定が厳しくなる。
本来はそういう目線のブレがあってはいけないのだが、常に完全に同じ基準で判断することは非常に難しい。なぜなら、人間の能力や資質について、偏差値表みたいに数値化された指標があるわけではなく、どこまでいっても“感覚”にならざるをえないから。


こんな風に考えると、人間が行う面接とその判断というのは実に曖昧なものだ。(こんなことを考えているのは私だけかもしれないが)

面接や採用活動のAI化が進んだら、採用品質はもっと均一化するのだろうか。まぁ、均一であることの是非についても議論の余地がありそうだが。









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