ぼくは恋愛ができない

人との関わりにおいて、情に流されると、ろくなことがない。

人との関わりにおいて、情に流されないと、恋愛はできない。

恋愛なんて、ろくでもない。

ぼくは思うのだ。どんなに成績が良くて、りっぱなことを言えるような人物でも、その人が変な顔で女にもてなかったらずい分と虚しいような気がする。女にもてないという事実の前には、どんなごたいそうな台詞も色あせるように思うのだ。

「僕は確かに成績悪いよ。だって、そんなこと、ぼくにとってはどうでも良かったからね。ぼくは彼女と恋をするのに忙しいんだ。脇山、恋って知ってるか。勉強よか、ずっと楽しいんだぜ。ぼくは、それにうつつを抜かして来て勉強しなかった。

「何よ、あんただって、私と一緒じゃない。自然体っていう演技してるわよ。本当は、自分だって、他の人とは違う何か特別なものを持ってるって思ってるくせに。優越感をいっぱい抱えてるくせに、ぼんやりしてる振りをして。

「時田くん、なんだか、少し困ってるようだけど、気にすることないよ。誰だって困ってるんだから。あなたは、自分のように考えてるの自分だけと思ってるかもしれないけど、それって、一種の特権意識よ。反省した方が良いかもよ」

なにげなく『ぼくは勉強ができない』を読み返していたら、ぶちのめされて、何も書けなくなった。ぼくは脇山だし、ときどき時田秀美でもある。そしてどちらにしろ、しょうもない。あなたはしょうもないことに気づいた方がいいし、しょうもなさに気づいたところで、しょうもないわよ。なんだかそんなことを言われてるような気になる。反抗心がせりあがってくるけど、どんな反抗の矢も届かない。ただただ心のなかでモヤが膨れあがるだけだ。「恋愛なんて、ろくでもない」と詭弁めいて書こうとしていた己はどこへ。

ぼくを叱ってくれたり、ぶった斬ってくれたりする本は、大切だ。

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