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2019/10/2

小さい頃から高校までずっと野球をやってきて、ずっと一塁手で、ずっと補欠で遠くからグラウンドを眺めていた私にとって、マウンド上にいる先発投手は一際光って見える憧れの存在だった。そのせいか、ピッチング前のロジンを指先につける行為、試合終わりにキャッチャーと行う腕を脱力させた緩いキャッチボール、ガンダムのような肩のアイシング、これらのような先発投手特有の文化や仕草にまでいちいち格好良さを感じてしまう。

その一つにプロ野球選手の登板間隔による調整がある。プロ野球の先発投手においては通常、中6日や5日、つまり約週一でしか登板を行わず、あいだの期間は調整に時間を費やす。そこにピッチングという運動の繊細さと重大さが現れていて、なんか、格好いい。投手をしたことがない自分にとっては雑な想像しかできないが、一回の先発登板によって投手は神経体力ともにすり減らせ、ほぼほぼ全身全霊をかけているといっていいだろう。ダルビッシュ選手はメジャーの基本である中4日での登板は間隔が短く、肩肘の怪我を誘発させるのではないか、という意見も上げている。それに対して、疲れが抜けきっている状態でもピッチングが上手くいかないのだ、という話も私は高校の同級生から聞いた。冬を超えて、春先、全く肩肘に疲れが無い状態でピッチングをすると、肩が軽すぎてボールが高めに抜けるというのだ。バッティングピッチャー程度しかしたことがない私にとって、それは驚きの話だった。疲れは無ければ無いほど、単純にマックスのパワーが出せて良いと思ってたからだ。そのとき投手というのは、とことん繊細かつ怪我の脅威と隣合わせの厳しいライン上で戦ってるのだなと朧げに感心した。同時に万年補欠で、しかも野手の自分とは縁遠い話だとどこかで思った。

おとといの夜に熱を出して、風邪の症状がある。しかし仕事は休みたくないので風邪薬を飲んで、昨日、今日と出勤している。明らかにいつもより、仕事への集中力が上がっていて驚いた。正常時に比べて、頭の上までポカポカしていて、動かせる脳のキャパが60%くらいなのだが、その分、いつもの気にしい癖を発揮する余裕がなく、60%をマックスで仕事にぶつけられている感覚なのである。投手でいえば球速は自己最速の10キロ下くらいしか出ないが、放る球が面白いように低めにビシビシ決まるようなイメージだろう。そうか、これが投手でいうところの調整されたベストの状態なのか。風邪を引いて、熱を出す、これが私にとっての最善の調整だったのだ。憧れていた、高校時代の投手の友達の気持ちを、少しわかった気になってやった。疲れも苦しみもない状態が、万全というわけではないのだ。

今は、熱が少し落ち着いてきて、やっぱり健康の方が百倍いいわボケ、と思う。冷静に振り返ると昨日、今日で片付けた仕事も「仕事」というよりは作業ばかりで大したことやってなかった。

熱の勢いそのままに、日記を書き始めたがぽつりぽつりと続けていく。

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