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アジア人パワー・イン・アメリカ

僕はアメリカの製薬会社で働く日本人研究者です。僕の会社は、アメリカ東海岸にあるボストンのすぐ北、ケンブリッジという街にあります。ケンブリッジにはアメリカ屈指の大学であるハーバード大学、MIT(マサチューセッツ工科大学)があり、その周りには巨大な製薬会社から小さなスタートアップカンパニーまで無数のバイオテック企業がひしめいています。僕はそんな中の150人足らずの比較的小さな会社にいます。そんな環境にいると、日々強く感じるのがアジア人パワーです。

アメリカ人よりもはるかに多い比率のアジア人

僕の会社にもたくさんの中国人、インド人、韓国人、イラン人、トルコ人などがいます。率にすると半分以上、純粋なアメリカ人よりはるかに多い率でアジア人が占めます。僕は、優秀で野望を持った元気なアジア人がアメリカに流入してくることで、アメリカの企業のレベルが底上げされ、それがアメリカがビジネス・経済でいつも世界をリードすることになる理由のひとつになっており、アメリカはこうした優秀な人材を取り込み続けることで更に発展していくと信じてます。

コロナ禍により転職が超加熱

コロナ禍によりリモートワークが主流になり、殆どの社員が自宅から働くようになると、バイオテック業界では転職活動が一気に加熱化しました。コロナ禍により転職などのリスクは取らない人が多くなるかと思いきや、簡単にバーチャルで転職活動が行われるようになり、会社側も優秀な人材を取りやすくなったため、超加熱化したのです。実は僕自身もそのようなコロナ禍で大きな製薬会社から今の会社に転職しました。

応募してくる人材・アジア人パワー

僕の会社でも新薬の開発が進むに連れ、新たな人材が必要となり、たくさんの募集をかけてます。転職が加熱化すると、同時に人材の流出も起こり、突然重要なポストの人材が会社を辞め、急遽補充が必要となることもあり、さらに人材の募集も多くなります。そこに応募してくる人の中でも、中国人、インド人を始めとするアジア人のパワーをとても強く感じます。

新たな人材の採用を考える時、該当部署の社員の何名かが個別にインタヴューして、候補者の経験・知識や人となりを見ます。僕も、新規採用者選びのためのインタヴューに参加することがありますが、そこでもアジア人のパワーを強く感じます。彼らは、本当に能動的でワクワク感が伝わってくる対応を取ってきます。自分の知識・能力をアピールするだけでなく、この会社に入ったら何ができるか?何に挑戦させてもらえるか?どんなことが学べるか?なども積極的に聞いてきます。ただ、採用されたいだけではなく、彼らも積極的に自分のキャリアアップのため、自己成長のため会社を選んでいるのです。

個別インタヴューに加えて、自分のこれまでに達成してきた研究成果などを1時間程度でプレゼンしてもらうこともよくあります。そこでもアジア人は、母国語ではない英語のハンディキャップを埋めるべく、創意工夫して、すばらしいプレゼンをしてくれることがよくあります。ただただ、文字を並べるだけのプレゼンになりがちなアメリカ人と比べて、オーディエンスのことを考えたわかりやすくストーリーフローを考えたプレゼンをしてくれて、感心することがよくあります。

中には、応募しているポジションには関わらず、とにかくアメリカで働きたいと、インドなどから連絡をしてくる元気な若者もいました。残念ながら、応募もしていないポジションの人を採用することはまずないので、大雑把に厳しい質問をして諦めてもらいます。
「たくさんの応募者がいる中で、僕たちにあなたを採用したいと思わせるユニークな点はなんですか?」
国外から血気盛んにコンタクトしてくる人に対しては
「就労ビザの手配までして、あなたをアメリカまで呼び寄せて雇用するメリットはなんですか?」などの厳しい質問を投げかけます。

採用まで行けなかった人がとる3つのパターン

メールや電話の段階で、次に進めず、採用されなかった人がとるパターンには以下の3つがあります。
1. 簡単に引き下がる
2. アドバイスを請う
3. 自分を売り込む理由をさらに説明する

ほとんどの人は、採用まで進むのは無理だという厳しい現実を感じると、簡単に引き下がります。ただ、人によっては、今回はだめだけど、アメリカで働く夢は捨てきれないので、自分には何が足りないか?何をすれば夢が叶う確率が高くなるかのアドバイスを求めてくる人もいます。あるいは、諦めきれずにさらに自分を売り込む理由を説明し続ける人もいます。残念ながら、それで判断が覆り、採用となることは殆どないと思いますが。

どのパターンも正解

僕はどのように引き下がっても正解だと思ってます。すでに彼らは行動を起こし、その結果、採用には至らなかっただけで、行動を起こした事実は経験として糧となります。簡単に引き下がった人も、実は諦めずに次の戦略を練っているかもしれません。もちろんアドバイスを請った人は、そこで得たアドバイスを基に自分を成長させるでしょう。

転職活動のメリット

こうして僕にコンタクトしてきてくれたり、インタヴューで出会う若いアジア人のパワーを見ていると、こちらもとても良い刺激を受け、応援したくなります。少なくともこうした血気盛んな転職活動をすることには絶大なメリットがあると思います。

自分の経歴・経験の棚卸しの機会となる

転職活動をするには、これまでの自分の学歴・職歴を見直し、整理し、履歴書にまとめ、自分がこれまでに行ってきた何をアピールすればよいかを考えるでしょうから、とても貴重な自分の経歴・経験の棚卸しの機会となります。

自分の市場価値が客観的に分かる

自分の市場価値を、自分だけでなく、他人に評価されることになるのです。厳しい現実を突きつけられることになるかもしれませんが、自分の市場価値が客観的に分かる貴重な機会となります。

自己成長につながる

不採用になったとしても、自分の夢がかない、採用にこぎつけたとしても、そこまでに行った自分の行動、そこから得た経験は、計り知れない自分の成長の糧になるはずです。

僕はこうした元気なアジア人のパワーを感じて、自分も元気になれるし、そこで見つけた掘り出し物の優秀な人材が実際に僕の職場に入ってくれて、職場を活性化してくれ、さらに楽しく働けることになるのが、めっちゃ嬉しいです。ただ、そこに日本人が入っていないのが残念です。わざわざ米国に来る必要がなく、日本自体がすごく住みやすく働きやすい、すばらしい国であることの裏返しかもしれませんが。




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