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転職時の肩書に翻弄され、自分の器の小ささを改めて痛感

アメリカ上陸20周年となる今年、5度目の転職をした。転職は、これまでの仕事と比べ、仕事内容、やりがい、給料、肩書などを向上させるチャンスだ。そんな転職への期待から、肩書に翻弄された自分の器の小ささを改めて痛感した。

2年前に大企業から小さなスタートアップ会社へ転職した。大企業にいた時の肩書はシニア・プリンシパル・サイエンティスト。よく分からない肩書だった。小さなスタートアップ会社へ転職したら、シニアディレクターとなった。偉くなったように聞こえる。しかし、実際は人材不足に悩む小さなスタートアップ会社は、大企業より肩書を高くして、何とか人を集めようとする。僕はそれにつられただけだ。

今回、小さなスタートアップ会社から再び大きな会社へ戻る形の転職となった。応募したポジションはシニアディレクターだった。同じシニアディレクターの肩書でも、小さな会社と大きな会社では重みが違う。肩書の面で、僕には魅力的な転職だった。以前に働いていたひとつの大企業の中だけでシニア・プリンシパル・サイエンティストからシニアディレクターまで出世するのは結構大変だ。それに対して、いったん小さな会社に移ってシニアディレクターの肩書になっておき、その肩書をキープしたまま、もう一度大企業に戻ることができるのは、おいしい転職だ。アメリカでは、たくさんの人がそうやってひとつの会社内で出世していくより、転職でキャリアをステップアップしていく。

今回の転職が決まると、新しい会社から採用確認のメールが来た。メールには、仕事内容、給料などの雇用条件とともに、シニアディレクターの肩書で採用しますと書いてある。よしよし!と顔がほころぶ。

しかし、いざオファーレターをもらうと、肩書が違っていた。プリンシパル・サイエンティスト2となっているのだ。「えっ!何かの間違いかな? 前に採用した人のオファーレターを下書きにして作り直して、肩書を直し忘れたのかな?」

オファーレターを見ながら、採用担当者と最終確認する機会に、「ポジションがプリンシパル・サイエンティスト2と書かれていますが、シニアディレクターの間違いですよね?」と確認した。すると、採用担当者は、「いえ、間違いではありません。社内では、研究職で直属の部下を持たない場合は、シニアディレクターとは呼ばずに、プリンシパル・サイエンティスト2となります。ただし、シニアディレクターと全く同じ雇用条件で、呼び方が異なるだけです。なので心配しないでください。この肩書で何か問題ですか?」と返された。

雇用条件は変わらないのだから、僕は問題ないとしてオファーレターにサインした。でも、何となく自分の中にモヤモヤが残った。なぜだろう? 自分の中で知らず知らずの間に肩書にめちゃこだわっているからだ。仕事内容もやりがいも何も変わらないのに、人に自分のポジションを説明する時、プリンシパル・サイエンティスト2ですと言うより、シニアディレクターですと言いたいのだ。LinkedInの自分のプロフィールにシニアディレクターと書きたいのだ。他人にキャリアダウンの転職だと思われたくないのだ。人にどう見られるかで、くだらないプライドと見栄でモヤモヤしていた。そして、そんなくだらないプライドに翻弄されている自分の器の小ささにさらにモヤモヤしていたのだ。

立派な肩書に憧れること、出世してより高い肩書が欲しいと思うこと、これらの欲求はとても自然なことだし、悪いことでもない。向上心の表れだ。自分の人的資本価値を考える時、収入と肩書は、とても分かりやすい指標にはなる。収入と肩書が上がれば、励みになる。分かりやすい設定目標になるので、エネルギーの原動力となる。ただし、内容が伴っていなければ、空っぽの誤解を招く指標だ。分かっていたつもりでいたが、知らず知らずのうちに、そんなくだらないプライドと見栄で肩書に翻弄されてしまった自分を恥ずかしく思う出来事だった。

自分はちっぽけなことにまだまだこだわるなぁと痛感し、反省したところで、考え方を変えてみた。仕事内容、やりがい、雇用条件のすべてが、向上しているんだ。肩書だけが分かりにくいものに戻っただけだ。つまり、自分は肩書につられてではなく、仕事内容、やりがい、雇用条件で転職を決められたとできる。この方が、すっと清々しいと。


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