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3年ぶりの帰国での東北の旅 盛岡ボンネットバスツアーと仙台タクシー観光

僕は2003年に渡米以降19年間アメリカに住んでいます。毎年日本へ帰国するのを楽しみにしていましたが、2019年に帰国して以降、コロナ禍で帰れずにいました。ようやく入国制限も緩和されたので、今回3年ぶりに日本へ帰ることができました。2週間の帰国でしたが、その間に親、兄妹、親戚、友だちに会い、あっという間に楽しい休暇は終わってしまいました。慌ただしい2週間の帰国中に、4泊5日の東北の旅も組み入れました。実際の計画は、僕が休暇前の追い込み仕事でアタフタしている間に、妻が全部立ててくれたのですが。。。

限られた2週間の日本滞在中に強引に組み込んだ東北旅行は、盛岡、花巻温泉、仙台・松島、秋保温泉と毎日場所を変えるちょっと落ち着かない過密スケジュールの旅になってしまいましたが、それでもとても思い出に残る楽しい旅になりました。

東京に戻り、日本を去る前の晩に妻と旅の思い出を話しました。初めての東北旅行で温泉、食べ物、街、すべてがすばらしかったのですが、ふたりが一致して最も思い出深かったと感じたのは、意外なものでした。

盛岡ボンネットバスツアー

盛岡に泊まり、翌日の午後に花巻温泉に移動するまでの午前中の空き時間に何かできないかとネットをサーチしていると、妻が面白そうなツアーを見つけました。

1968年(昭和43年)製のボンネットバスで盛岡の街を巡るものでした。ちょうどツアーの開始が午前9時、終了がお昼の12時で、限られた時間で盛岡を巡りたい僕たちにぴったりでした。前日に滑り込みで妻が電話予約し、当日の朝、盛岡駅前の集合場所で待っていると、写真通りの可愛らしいボンネットバスがやってきました。盛岡の人にとっても珍しいらしく、通りがかりの人たちがバスの写真を撮ってました。

岩手県北バスWebより抜粋

バスの運転手さんと若い男性のバスガイドさん、そして参加者は妻と僕の2人だけ。試行的なツアーらしく参加費はひとり700円。ツアーが開始されてからまだ3日しか経っておらず、盛岡内でも認知度がまだまだだそうです。僕たちにとっては何とも贅沢なツアーとなりました。
旧式バスは、走り出すと、とてもうるさく、大きく揺れ、それに反してスピードはぜんぜん出ません。そんなバスですが、何とも憎めません。頑張って走ってくれているのを応援してくなり、何か昭和に戻った懐かしい気分にもさせてくれます。客は僕たち2人だけなのに、バスガイドさんはぜんぜん手を抜かず、うるさく揺れるバスの中で一生懸命とても楽しいガイドをしてくれました。バスガイドさんのお人柄と楽しいガイド、そして、何とも憎めない可愛らしいバスで僕たちはとても楽しいバスの時間を過ごすことができました。ガイドさんも僕たちがアメリカから3年ぶりに帰国し、偶然見つけて参加したことをお伝えすると、とても驚き、同時に喜んでくれました。
ツアーは途中で盛岡城跡公園、東京駅丸の内と同じ建築家による明治に作られた岩手銀行レンガ館、古い商店街などを散策しました。

岩手県北バスWebより抜粋
岩手県北バスWebより抜粋

ガイドさんは僕たち2人のために、盛岡城跡を案内してくれました。盛岡城は、現在は石垣だけで、城はありません。城の現存資料が殆どなく、城を再建することがとても困難な状況にあるそうです。ただ、僕は、現在残っている石垣の素晴らしさに注目しやすくなるので、それはそれでとても良いなと思いました。
たった二人の客のためにガイドさんと運転手さんの時間を拘束してしまい、その上至れり尽くせりの対応に妻も僕も恐縮してしまいました。でも、ほんの限られて時間でこんな充実した街巡りができるとは思っていなかったので、東北の旅一番の思い出になったのです。

仙台 タクシー運転手トッシーさんとの青葉城観光

仙台でも次の滞在先の秋保温泉に移動する前に午前中の空き時間がありました。限られた時間しかないから、伊達政宗公霊屋 瑞鳳殿(ずいほうでん)のみ見学して、その後は仙台三越にでもいて、お昼に有名店で名物の牛タンを食べて、秋保温泉に移動しようと計画を立ててました。

瑞鳳殿

予定通り、瑞鳳殿を見学し、昼食まではまだ早いけど、それまで三越百貨店で時間を潰そうと、タクシーに乗り込みました。しかし、そのタクシーは、トッシーさんのタクシーだったのです。

三越百貨店までお願いしたのですが、トッシーさんは強引にせっかく仙台に初めて訪れたのなら瑞鳳殿だけで帰るのはもったいない、ぜひ青葉城を見よう、と誘われました。時間が限られているし、お昼には名物の牛タンも食べたいと伝えても、それでも何とか青葉城は観光できるよとかなり強引です。余分に観光させてぼったくるつもりじゃないか?と思いましたが、ここは日本語が通じる日本。妻も僕もせっかくだから、トッシーさんの提案に乗ってみよう!となりました。

トッシーさんは、ただのタクシー運転手ではありませんでした。仙台市街にあるたくさんの碑文(石碑に彫りつけられた文章)をひとつひとつ調査され、それを「トッシーの伊達なブログ」に紹介し、仙台の観光の発展や歴史紹介に貢献している方でした。

普通の観光だったら通り過ぎてしまうようなさりげない場所ですが、歴史的にはとても重要というところをいくつかわざわざ案内してくださいました。青葉城と仙台の街並みの関係も説明してくださり、伊達藩主が、どうやって青葉城を発展させ、仙台の城下町を統治していたかが分かるような気持ちにさせてくれました。

最後は、トッシーさんオススメの地元の人達に愛されてる牛タンのお店に僕たちを落としてくれました。最初に自分たちで調べていこうとしていた牛タン料理店よりとてもお値打ちで、牛タンだけでなくカルビまで注文して満喫することができました。トッシーさん、ありがとう!でも写真で比較する限り、牛タンの厚みが、妻が見つけてくれたお店のほうが厚いような気がしましたよ。

これってセレンディピティを楽しんだってこと?

ちょっと大げさかもしれませんが、普段、物事を計画的に進めるだけになりがちで、遊び心のない堅物な僕が、偶然に出会った人たちとの交流(セレンディピティ?)で得たとても素敵な旅の思い出でした。

小学校時代に国語の教科書に出てきた寺田寅彦の随筆「案内者」の中で紹介されているオーソドックスな旅に対するヘテロドックスな旅を思い出しました。妻と僕の東北旅行は、妻が綿密に計画を立ててくれたオーソドックスな旅なんだろうけど、その中にちょっとだけあったヘテロドックスな部分が旅の思い出を大きくすることに貢献してくれたようでした。



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