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3/10ミャンマー マンダレー 電波の無いバスターミナル

運転手は攻める。
およそ80km/hは出ているだろう速度で悪路をものともせず飛ばしに飛ばして暗闇を駆けるバスに外国人は俺だけだった。


3/8

メーソートの宿にタクシーが到着する。
おばさん運転手が国境まで少しハラハラするアトラクションのように連れて行ってくれ、イミグレーションへと辿り着いた。

担当はこれまたおばさんの管理官でとても穏やかな笑顔で終始対応してくれた。しかし聞くことはしっかりと聞いてきた印象で、仮に何かおかしな点がある際はガラリと表情を変えて詰問してくるのだろうなと感じた。

タイ国境を越えて汚い川にかかる橋を歩く。物乞いや客引きが所々に点在し、子供が歩道で大きな方の用を足していた。

橋を渡り切りミャンマー側のイミグレーションの手前で入国カードを管理官に教えられながら記入する。
管理官は噛み煙草のせいで口元が紅色に染まっていた。
滞りなくすんなりと入国を果たした。

酸味の強い臭いが気になった。
メーソートは国境から街中は少し距離があるが、ミャンマー側の国境の町ミャワディは国に入ってすぐ街になっている。

バス会社の客引きに声をかけられるがまずはATMでお金を下ろす。
振り向くと彼はその間、前で手を組んで待機していたようだ。
彼にマンダレーに行きたい旨を伝えるとチケット売り場(歩道にバスのポスターがかかっている机を置いているだけ)に案内され、英語の話せるおばさんに値段を聞いた。

14時発で朝8時にマンダレー着のがあるらしい。
VIPバスで値段はおよそ2000円。多少安いのもあるとのことだが快適性を取ってそのバスに決めた。

途中で検問が3回ほど行われるらしくパスポートのコピーを取らなければならないようだ。
彼に付いて行け。そう言われ客引きのおじさんに付いていきコピーを取った。3部取るのかと思いきや1部だけだし、しっかりと30円支払った。それ込みの値段とかではないのだ。アジアらしくて良い。

そして机に戻ると今度はバス乗り場はここじゃないから彼に付いて行けと言われ、若い男のスクーターの後ろに乗ってバス乗り場へと向かった。まるでRPGゲームのような展開でなかなか面白い。
11kgある大きなザックを前に抱えた彼は何の気なしにスイスイと運転してみせた。

12時頃に乗り場へと到着し、狭い場所の椅子に座らされた。
まさか14時までこうしてミャンマーのテレビが流れる薄暗い部屋でありあまる沢山の種類の荷物とともに待っていなければならないのか。そう考えると恐ろしくなってきたので彼にSIMカードとタバコを買うから出かけてくると伝えると、14時出発だから13時には戻ってきてくれと言われた。
ネットでも読んだが、ミャンマー人は意外と時間にしっかりしている。

SIMカードの設定で担当のおばさんが手こずり30分かかり、そのあとタバコを40円ほどで購入した。

13時に乗り場へ戻って50分に乗り込み、55分には出発した。
バスには乗客のほか、部屋にあった多くの荷物が積み込まれ最後尾の席は荷物が置かれていた。

4列シートではあったが隣には誰も座らず小さいバックパックを置けて快適だった。冷房も多少効きすぎくらいであったし一人一枚ブランケットが用意されていたので問題なかった。

バスは頻繁に止まって荷物を下ろしていたので配達なんかも兼ねていたのだろう。人もポツポツ乗ってきて、乗車率は80~90%といったところだった。
20時頃に一度食事休憩を取った以外でバスを降りることは無く、横目に高床式の住居を見ながら行き届いていない道をひたすらにバスは進んでいった。
タイやマレーシアがいかに現代的であるかを実感できる面白い道程だった。

SIMカードの調子が悪いのか電波が入らない。


3/9

朝6時にバスターミナルへと着きバスを降りるとタクシーの客引きが我先に寄ってきた。全員ミャンマー語だったので一言も理解できない。
とりあえず荷物の預け票を見せると彼らはそれを添乗員に見せて荷物を受け取ってくれた。荷物を受け取った彼に付いていく事にした。

とりあえず煙草を吸いたいとジェスチャーで伝えると車で喫えと乗せられた。
安いホステルに連れて行ってくれと伝えるも、チープが通じない。ホテルだけが通じるようだ。

どうしたものかとしかめ面で煙をくゆらしていると彼が電話を始めた。英語が話せる人間のようで電話を代わり安いホステルで予算は一泊700円くらいだと伝えた。
そして場所が分かったらしく彼は7000チャット(512円)と言ってハンドルを握った。

着いた宿はAce Starという場所。ネットで調べていて安いのは知っていたが、紹介写真が多少西洋人多めでパーティ臭かったのでそこは辞めようと思っていた宿だ。
しかし他に場所も知らないしとりあえず話を聞こう。
ロビーで寝ていたスタッフを運ちゃんが起こし、眠い目をこすりながら彼は一泊700円であることを話した。朝7時にもかかわらずこのままチェックインをしてもいいようだ。
こんな好条件はないと踏んだのでここに決める。

ターミナルからこの宿までは携帯が無い状況で、なんとか辿り着いた感覚が旅していると実感させてくれた。

早すぎるチェックインを済ませ午後まで寝てマンダレーを散歩した。非常に埃っぽくてゴミゴミとした街だと感じたが、他のミャンマーを旅する人間からするとヤンゴンがとても埃っぽくてここはまだ綺麗なほうらしい。
街を歩くと多くのミャンマー人の女の子が可愛い事に気付く。彼女たちは非常にシャイでスレていない。ひと昔前の日本人はこんな感じだったのだろうか。
街には多くの車が走るがそのほとんどは日本車で、バスやトラックなど日本語が書かれたものも多かった。
それよりも多いのがバイクで、ヘルメットの装着率はおよそ30%ほどだろうか。信号は少なく、彼らはクラクションを鳴らして自分の位置を知らせながら走る。

夜は米粉で作ったような細い麺が塩ラーメンのような味のスープに入ったものを食べたがこれがとても美味しくて驚いた。
バスの食事休憩の時のフライドヌードルはセロリの味がきつかったのもあり半分残していたがこれは本当に美味しかった。

部屋に戻ると同室のオランダ人ロッベンから飯の誘いがあった。
もう食べちゃったよと言うとお酒は飲まないのかと引き下がられた。せっかくだし彼に付いて飲みに出た。

正直なところ、日本人は白人に心のどこかで劣等感を感じてるんだよと言うと正直な眼差しで何故かと問われた。
改めて説明するのも難しかったがなんとか伝えてみたところ、そんなことは思う必要ないと彼は言った。ただ生まれた場所が違うだけだと。
実際に優越感があっても目の前のアジア人にそう伝えることはないと思うが彼の言葉は心からの物に聞こえた。


3/10

11時頃ロビーでバガン行のバスチケットを購入し、マンダレーヒルという低い山に登ると頂上にパゴダがあり街を見下ろせるということでそこに行こうかなと考えながらタバコを吸うため外に出ようとしたときに、声をかけられた。

「どこに行くの?」
「ああこれ?バガンだよ。明日ね。」
「今日は?」
「んー多分マンダレーヒルかな。」

彼はヤン・ウーと言って60歳のおじさんだった。見た目はさっぱりとしたシャツに黒のパンツ、ティアドロップ型のサングラスを額にかけて小奇麗にまとまっていておよそ40代に見えた。
彼はマンダレーヒルとそのほかのパゴダ色々、そして夕暮れ時に有名な橋に連れて行ってくれるという。値段は一日で1100円。少し考えたが歩いて登るのも大変かなと思って彼のバイクの後ろへと乗り込んだ。

まず白いパゴダが沢山並ぶ場所へと連れて行ってくれた。

一人で歩き回ったあと彼の元へ帰ると、彼はにこやかに日本人の女性と談笑していた。
ナツキさん。彼女も一緒に回ることになり三人乗りでたくさん他の場所へ訪れた。

一日ずっと一緒に回っていてもストレスを感じる相手ではなく、終始楽しく過ごせて良い相手だった。
彼女はこれからタイに入るらしい。

ヤンさんもずっと笑顔で、写真ここで撮るか?とかトイレは大丈夫か?とかいちいち気を使ってくれた。素敵な人達と出会えて良かった。


目に入る砂埃さえ新鮮に感じることの出来る気持ちで

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