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2/27マレーシア マラッカ 自らに根付いている日本人

ジョホールバルの月曜の夜、道を封鎖して中国人達がパレードを行っていた。シャボン玉やクラッカーに迎えられて豪奢な山車や龍の作り物、大きな人形達が闊歩していた。
中国人や西洋人は騒ぐのが得意なように思える。
俺はというとどちらかと言えばやはり、雪がしんしんと降るなかでまだ足跡のひとつも付いていない道をうつむいて歩いたり、鹿威しが水を吐き出し音を立てる様を縁側から覗いていたいほうだ。
昨今は文化や生活等の西洋化が著しいが、まだこういう日本人の方が多いのではないだろうか。


2/23

今日の予定は特にない。いつものことだが。
午前中にシングルルームを片付け外の椅子で宿の予約などを済ませた後、ドミトリーのベッドへと移動した。完全にカーテンで仕切られていて半分個室のようなものでとても快適だった。
住宅街の中の宿から2,30分かけて歩いてジョホールバル街中の中華屋台でワンタンメンを食べた。といっても日本で食べるようなものとは少し違っていて、味が既についている焼きそばのようなソースがかかった麺に中華らしい皮が赤いチャーシューとほうれん草?が乗っていて、それとは別でワンタンスープが付いてくる。
普通の一人分で値段は150円程度で満足いく味だった。

そのあとセブンイレブンでコーラを買ってタバコを吸っていると宿の予約サイトからメールが入る。クレジットカードが無効になっているとのこと。
とりあえず散歩するつもりだったが中断し、宿へ歩いて戻ってスタッフに電話を借りてカード会社へ電話をした。
そのあと自分のスカイプで通話できるよう設定し、何度か連絡を取ってセキュリティがかかっていたと判明した。
解除をしてもらい事なきを得たが、不安に駆られる一日を過ごした。

電話代はいくら?とスタッフへ尋ねる。
国際電話だしわざわざ貸してもらったし、500円くらいは払うつもりだったが、たった50円と言われた。
本当に?
固定電話だから安いんだよ。携帯じゃないんでしょ?
いや、そうだけど本当?
本当だよ。

気持ち程度に100円払おうとするも彼は拒否し、50円だけ受け取った。


2/24

年末に韓国で知り合ったマレーシア人のカイザーと今日は会う予定なのだが、連絡がない。
ここにきてドタキャンか・・・せっかくここまで来たのに・・・

とりあえず一人で待ち合わせ場所のモールへ足を向けた。
途中、パン屋へ寄ってカップケーキとよくわからないパンを買ったが、ここの店員がインド人で笑顔で丁寧に商品の説明などしてくれて、インド人でもこんな奴がいるのかと少し嬉しくなった。

モールに入るとカイザーから連絡が来ていた。
17時に待ち合わせしよう。
今の時間は15時半。一時間半という長い時間を何処の国でも代わり映えのないショッピングモールで潰すこととなった。

17時15分頃、マクドナルドの前で彼と合流した。
22歳で、機械の修理工場のようなところで働いているらしい。生まれはマラッカだが5歳くらいにここジョホールバルへ越してきて育った。
とりあえず朝から何も食べていなかったので(彼から連絡が無かったせいで)マレー料理屋へ。
牛肉の入ったカレーのようなものをサフランライスのようなものにかけて食べた。
そのあと二人で外でタバコを吸いながら1時間ほど色々と話をした。

「旅に出る切っ掛けはなんだったの?」

いつもこの答えが出てこない。
なんで旅をしているのかなんて分からない。

返答に窮していると、彼が口を開いた。

「俺は思うんだけど、お金は稼げば自分のところに戻ってくるけど時間って戻ってこないじゃん。」
「だからやりたいことをやっておこうと思って旅してるんだ。」

以前勤めていた会社の社長も、人生で一番大切なものは時間だと何度も言っていた。
それに気づいているようで気づいていなかった。今でも分かっていると勘違いしているだけかもしれない。

19時を過ぎて、ナイトマーケットが近くで開かれているというのでそこへ向かった。
東南アジアの国というのはそこかしこで夜市があるのか?

そして水タバコの吸える場所へ行き、人生で初めて水タバコを喫った。
煙を肺に入れずに、吹かすような感じで吐き出す。
味が何種類も選べて我々は林檎味にしたが、煙を吐いた後で口の中いっぱいに林檎の香りが残り美味しかった。紙煙草とは全く違うものだった。

会計は全て彼が出してくれた。今日は君の日だといって。
冬に彼は日本に来る予定らしい。俺も冬には日本にいるはずなので彼を迎えて2倍にも3倍にもしてこの恩を返そうと思う。楽しい一日だった。


2/25

シンガポールへ行くため朝早く目覚ましを止めるもどうしても起きられなかった。そして日がな一日だらけていた。
夜に近くの通りでパレードが行われていて彼らの声や花火の音を聞きながら不味い煙草を吸っていただけだ。


2/26

膝の上に乗せてもすぐに降りて行ってしまう猫たちに別れを言って、宿を出た。
バスターミナルではスタッフ達にチケットを見せながらバスを待つ。英語のアナウンスを聞き取れゲートを把握できた。少しは成長を感じた。

3時間ほどバスに揺られ、マラッカへと到着した。
どこへ行っても日差しは容赦なく降り注ぎTシャツを湿らせた。

宿の部屋にはベッドが4つあるが、この旅において初めての二段ベッドではないマットレスタイプだ。もちろんカーテンなどない。
しかし同室にはオーストラリア人の男性が一人いるだけで、彼も大人しい人間だったので問題は何もなかった。冷房も好きなだけ使っていいようだし、朝食付だ。

マラッカの主要な観光地から近く、自転車も無料で貸し出してくれるのでとても便利だし夜も騒がしくない。

近くをぶらつき、チキンライスを食べマンゴーアイスを食べた。

この街が好きだ。
落ち着いた雰囲気のなかで間違いなく世界遺産の街という矜持を持っている。しかしそれは驕りではなく傷つけるものがない穏やかなものだ。

夜中、眠りにつけず外に出て煙草を吸った。
この時には好きな音楽を聴きながらだったので(Tush Sultana)いつもとは少し雰囲気が変わっていた。
目の前の中華屋は店じまいで看板を拭いたり椅子を片付け、猫が残飯を求めている。すっかり涼しくなった街に吹く風は、昼間の猛烈な暑さを微塵も感じさせない。
幸せだと思った。


2/27

遅い朝食、いや早い昼食を取ったあとに自転車を借りて街を周ってみようと思ったが高すぎる気温がそのまま高すぎる壁となって目の前に立ちはだかっているような錯覚に見舞われた。
喉も渇いたのでモールへと避難する。

中のマクドナルドでチーズバーガーとポテトを食べてコーラを飲んで、大きいモールの端っこまで来たところで外へ出るとこの写真の建物があった。
全く前知識が無いので感動したりはなかったが観光気分は味わえた。

そのまま宿へ帰ってきたところだ。
今日の夜ご飯は何にしようか。


限りある時間の横顔逃がさずに
同じ歩幅で進む道のり

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