看板商品
「ヤジロベー饅頭にヤジロベー煎餅、ヤジロベー飴はいかがですかぁ〜!」
え…今なんて?
ヤジロベー?
『ドラゴンボール』に出てくる、天下一武道会で小活躍して、最終的にはカリン塔のバイトリーダー的存在になる決して主要キャラとは言えないあのヤジロベーの饅頭に煎餅に飴?
なんなんだこの店は。
思わず足を止めずにはいられなかった。
どんな会議をしたら店の看板商品をヤジロベーで押す方向に落ち着くねん。
驚くことに、声を張り上げている、恐らく看板娘であろう国仲涼子さん似の別嬪店員さんは嫌々売っているのではなく、この方針にしっかり納得したからこそできる笑顔で売っているではないか。
ヤジロベー煎餅に興味を示している客のおばあちゃんはヤジロベーを知っているのか?
尋常ではないくらい足が太いことを知っているのか?
いやそもそもドラゴンボールを知っているのか?
気になる。暫く様子を眺めていたい。
でも約束の時間にたとえ1秒でも遅れたらエルガ様に殺されてしまう。
しかしどうしても気になる。
「本日発売の新商品、ヤジロベーパエリアはいかがですかぁー!」
そんな馬鹿な…
ヤジロベーパエリア?
ヤジロベーをゴリ推しするのも珍しいけど、パエリアをお土産にしてること自体がまず珍しいがな。
うわなんか乳首立ってきた。
この方針はただただヤジロベーが好き過ぎるという愛情的理由からなのか、それともまだ誰もやってへんとこを攻めてみようという戦略的理由なのかどっちや?
あぁ、ご主人の話を聞きたい。
なんでや!
なんでよりによって今日がエルガ様の黒ライオンの散歩の日やねん!
そろそろ行かないと時間に遅れる。
また来て絶対に理由を聞き出したんねん!
キーンがヤジロベーを看板商品にしている店に気を取られていることなど露知らず、その時エルガ様は人間の姿になりすまし、初めての『くら寿司』を楽しんでいた。
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