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コロナ禍で起きた急成長ベンチャーのHardThings~倒産

先日、救済を要望された会社についてNoteにまとめたいと思います。なお、当該企業については、キャッシュアウトし、会社関係者で連絡が取れる人が居なくなっており、夜逃げに近い形になっています。


1,会社の状況

コロナ禍でも、業績を急速に伸ばしている。特に、通販などはD2Cなど、芽が出始めていたところが、一気に成長が加速してきている。6月末に食品のサブスクリプションサイトから投資の打診をいただいた。出資と会社の内部に入って、会社の立て直しを要望された。

その会社の売上を確認した所、3月に月商250万円程度だったものが、倒産直前の7月の時点では月商が1,000万円まで膨張していた。

成長することは良いことです。ただ、ここまで急成長した場合、その成長は毒になります。その通販サイトの場合、仕入は現金、売上はカード。入金サイクルは商品発送後、1.5ヶ月後になります。つまり、月商250万円であれば、運転資金は400万円程度で済みますが、月商1,000万円だと運転資金は1,500万円以上必要になります。資金調達を経験していないベンチャーにとって、1,500万円の資金を集めるというのは簡単な話ではありません。

問題になったのはお金だけではありません。受注などのオペレーションも売上が4倍になると対応出来ません。普通であれば、システムを増強し、人員を増やさずに対応出来るように進めていきますが、それも間に合いませんでした。アルバイトを雇って対応を試みていますが、誰が見ても非効率なのはわかるものの、その整理すら出来ていない状況でした。

問題は仕入の部分にも及びます。商品の仕入、加工原価が売価を上回ってしまいました。5000円の商品を1,000円で売っているような状態でした。売る商品が増え、調達コストが暴騰していました。特にひどかったのは、商品の仕入担当が連携が取れていないため、商品の在庫管理がきちんと出来ずに、足りない商品と多すぎる商品が出ていました。

2,会社の立て直し

冷静に考えれば、新規の会員登録を止め、売上の増加を止めれば、会社は地に足をつけ、立て直すことは簡単にできます。ただ、その冷静さを経営陣たちは失っていました。

僕は会社に関わって1日目で、会社の企業価値の算定と立て直し計画に着手しました。まずは、不足している資金の確認を行った所、既に会社の借り入れ、経営陣の個人的な借り入れ、仕入元への入金遅延、給料の遅配などで既に2,500万円の資金ショートが起きていました。

経営陣との協議では、会社の価値(バリエーション)は10億円で、資金調達で1億円を調達したいということでした。この金額は、成長状況を考えれば出資してくれるベンチャーキャピタルは居る可能性はあるかと思います。ただ、会社組織として決済、承認の手続きを経るベンチャーキャピタルから右から左に調達出来る金額ではありません。

僕は、新規の会員登録を止めて、状況の立て直しを主張しました。しかし、経営陣側は売上を止めず、彼らの望む評価額での資金調達を望みました。彼らが受け入れたのはベンチャーキャピタルではなく、エンジェル投資家からの調達を目指すという点だけでした。

3,資金調達のための奔走

会社の方針が決まったため、私はExit経験のある起業家の友人へのアプローチをはじめました。しかし、帰ってきた答えは、いつ商品仕入が止まり、サイトが止まるかわかるかわからない企業に対する評価額としては高すぎるという答えでした。

何人かエンジェル投資家からのフィードバックを経営陣に伝えました。しかし、経営陣としては成長分も考えると5億円の評価額と1億円の調達は譲れないという結論でした。

私としては、今回は5億円の評価で5,000万円の調達を行い、体制を整えた上で、年内に再度の資金調達を行うべきではないかという主張をしました。エンジェル投資家を回れば、5,000万円という金額も夢ではないと思いますが、1億円になると短期間で調達出来る自信がなかったからです。経営陣は、私の提案を受け入れず、まずはエンジェル投資家たちとのMTGを行った上での判断という事になりました。

4,死刑宣告

複数の仕入元から商品の調達が出来なくなる旨、通告を行ってきました。キャッシュがないため、一部入金することで、商品の仕入れができるように交渉しましたが、受け入れてもらえませんでした。

経営陣によれば、給料の遅配で仕入担当が会社に不満を懐き、仕入元に会社の状況を密告され、仕入元との関係がこじれてしまったということでした。

会社の命運がかかっているため、仕入元に身売りを持ちかけました。しかし、決算書を見るまでもなく、倉庫には需給バランスが崩れたことで賞味期限が切れ売れなくなった商品の山がいくつもありました。売れない在庫の山が資金を食いつぶしたのか、在庫の管理が会社の資金を食いつぶしいたのか、すぐに分かる状態ではなかったのです。新規の会員登録の伸び以外に、アピールする点がないダメ会社に、普通の会社が投資をしてくれるわけもありませんでした。

経営陣は会社の将来性を諦め、M&Aの仲介会社にアプローチをはじめました。個人で借り入れを行っている、個人保証をしている分の借金だけを返済できる金額での売却を模索し始めました。

しかし、仕入が止まってしまっているサイトに興味を持ってくれる人が居ないのか、M&Aの仲介会社から1週間経っても引き合いがないという状況でした。

結果、個人の借金への督促に困ったのか、経営陣とはコンタクトが取れなくなりました。会った出来事を思い出すがままに書きましたが、この話は、若干フィクションを入れましたが、この2ヶ月程度の間で起きた話です。





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