〈2019年版〉スマホページの限界についての考察~腕時計編

まず、最初に、この画面について見てもらいたい。

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多くのグランドセイコー関連のキーワードで1位入札をしている株式会社吉田。この会社は、高級腕時計の代名詞グランドセイコーをネット販売していない。来店予約を受け付けているのみだ。

リスティング広告の運用を一部かじっている私からすると、謎の広告運用だった。

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ページにリンクしてみると、謎は理解へと進む。

「LP制作時の基本が抑えられていない。」

この事実から、自分の中で謎は氷解。この会社はリスティング広告をデタラメに運用しているという結論に至った。


ただ、この結論が間違っていたとしたら!?

今回の話は、この運用がなぜ正しいのかという議論を展開していきたい。


逆説的になるが、2019年現在のスマートフォン向けページについての考え方について紹介したい。


2018年7月にGoogleがSpeed update(スピードアップデート)という検索順位の決定方法の評価項目の追加を行った。

Speedupdate(スピードアップデート)は、SEOといわれるGoogleの検索結果ページの順位を引き上げる仕事の人達にとっては有名な事だが、ページを軽くして読み込み速度を引き上げると集客力が引き上げる(可能性が高まる)という話です。

ただ、このGoogleの判断以前の話で、スマホページは軽くしておいた方が購入率が高まるという状況はありました。

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私の経験では、値段が横一線の商品だと写真の解像度を粗くして、読み込み速度を引き上げただけでも、購入数は引き上がります。大事なことなので、繰り返します。

写真の解像度を粗くしただけでも、売上(購入数)は増える事があります。

スマホページは、写真や画像の画質よりも表示速度の方が重要です。5Gなどモバイルの通信環境が高速化した現在でも、スピードが重要です。念の為ですが、これは日本国内のスマホページの話です。発展途上国の貧弱な回線環境の話や格安スマホの話をしているわけではありません。


さて、最初の疑問に戻ります。

なぜ、グランドセイコーをなぜネットではなく、店舗で売るのかという疑問に話を戻します。

高額商品の売り方は商品の魅力を伝えるため、ページを長くすると容量が重くなり、表示スピードが落ちます。表示スピードが落ちると、ユーザーはページから離脱する比率が高くなるので、売上はあがりません。

そのため、スマホ向けページは、ページを短くするために、よりシンプルに商品の特徴を紹介していく必要があります。

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つまり、PC向けページとスマホ向けページは用途を分けて考えたほうが良いかもしれません。では、具体的な事例を見ていきたいと思います。

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楽天がデバイス毎の売上げランキングをだしているので、デバイス別の売上を分析してみたいと思います。

キャリア別の楽天の売上げランキングを見ると、腕時計カテゴリーは「PCランキング」と「全体ランキング」は出していますが、スマホランキングは出していないようです。

そのため、「PCランキング」と「全体ランキング」の売上を比較することで、スマホのランキングを推測することにします。

※集計日は2019年11月17日。

楽天市場の腕時計のランキングの上位1,000アイテムを見たところ、「PCランキング」ではグランドセイコーの該当は15件ありました。一方で、「全体ランキングには9件。全体ランキングの9件のうち、PCランキングにランクインしていない商品は1アイテムしかありませんでした。つまり、8件はPCで購入されているだけ。1件はスマホで売れているという内訳になります。

ちょっとわかりにくいので図解すると、重複部が9件、PCのみ6件、スマホのみ1件。重複部はPCの貢献と推測されるため、スマホでのグランドセイコーの購入は1件と推測されます。

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さらに、スマホで売れたと推測される1商品ですが、これは中古品。新品価格が23万円のものが13万円で売られていました。なお、PCで購入されているグランドセイコーの平均価格は35万円。

ここから推測されることは、スマホでは高い商品は売りにくいということです。


さらに議論を進めたいと思います。

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店舗毎にランキングへのランクイン数を分析したところ、PCだけで強い店は存在するのですが、スマホだけで強いお店というのがありませんでした。

■PCだけが強い店舗

 高山質店、ブルークウォークカンパニー、楽天ビック(ビックカメラ☓楽天)

■スマホも強い店舗

 neelセレクトショップ、ジャックロード【腕時計専門店】

PCだけが強いお店というのは、総じてページにあまり費用を投入していない印象を受けます。楽天ビックはテキストばかりですし、高山質店とブルークウォークカンパニーは、スマホのオートスケールに対応しているだけのような印象です。

では、飛び抜けてスマホも強い店である「neelセレクトショップ」を分析してみましょう。

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neelは、スマホページもPCページもかなり作り込んでいる印象です。恐らく、腕時計販売を行う店舗の中では屈指の作り込みを行っていると思われます。ただ、ランクインの状況を見てみると、PCページに比べるとスマホページでは明確に20万円以上の商品では売れ行きが悪いことがわかります。

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ここから、スマホで物販を行うに当たり、限界は20万円未満というのが一つの目安なのかもしれません。

つまり、グランドセイコーの広告を出している株式会社吉田はそこまで分析が出来ているのかもしれません。サイトで売るよりも店舗誘導につなげたほうが売上が増えるという検証結果があるのかもしれません。


▼まとめ

PCのみで売れている店舗は、ページ内に多くの情報が詰め込まれています。それはコンテンツリッチというか、とにかく情報を詰め込んでいる印象を受けます。ただ、スマホで売れている店舗は情報をある程度絞り込んでいる印象を受けます。

ここからわかることは、スマホページは情報を絞り込むため、その情報の取捨選択が難しいことと、そもそもスマホに適化したページでは高いものを買うというマインドは醸成することは難しいのかもしれません。


もしかしたら、PCページとスマホページはこのように用途を分類して考えたほうが良いような気がします。

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