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ありがとう、消しカス

小学校4年生の秋、その日のことを私は一生忘れないだろう。

なにかの授業でたくさん消しゴムを使い、大量の消しカスが出た。いつもなら、ゴミ箱に捨ててしまうだろう。
しかし、私はその消しカスに「捨てないで」と訴えかけられた気がしてしまったのだ。そんな私は、筆箱にストックしていた100均のミニサイズのジップロックに消しカスを詰めた。

今思えば、これが私の人生の転機だったのかもしれない。

小学校時代の私は、今からは想像できないほど無口だった。学校に行っても一言も喋らず帰り、休み時間はずっと一人で座っているような人で、無論友達も全くいなかった。
しかし、ひたむきにその後も消しカスを集め初めて1年、次第に周囲の人に消しかすを集めていることがバレ始めた。すると、しだいに周りの人たちが消しカスを集めていることを面白がってくれるようになった。消しカスを寄付してくれる人もいた。消しカスのおかげで、少し友達ができた。

そして中学校に入学した。私の通う中学校は地元から離れていたので、小学校が同じ人は誰一人いない。なので私はイメチェンを試みた。自己紹介で、「趣味は消しカスを集めることです。」と言った。めちゃくちゃウケた。小学校とは違い、たくさん友達ができた。
その当時、既に消しカスは150gに達していた。
それからの私は、自己紹介で毎回これを鉄板ネタのように言うようになった。

また時が流れ、私は生徒会選挙に立候補した。 
立候補したはいいものの、とてつもなく倍率が高かった。私の学校の生徒会選挙は公約がほぼ禁止されていることもあり、どれだけインパクトを残せるかが鍵だ。
私は選挙演説で「私はこちらを御覧ください、これは私が小学4年生のときから集めている消しカスです。ちりも積もれば山となるということわざ、まさにこのことですね。このように私にはコツコツと積み上げる力があります」
というようなことを言った。いま思えばインパクトだけで選挙に勝とうとするのはいかがなものかと思ったが、公約が禁止のようなものだったのでこうするしかなかった。
結果私は当選し、晴れて生徒会役員になった。それと同時に、全校生徒に「消しカスの人」という認識が広まった。
生徒会に入り、様々な活動をして色々なことを経験し、学んだ。私は生徒会に入ったことで大きく人生が変わったと言っても過言ではない。

高2の6月、日本中高生協議会という団体の「オンライン〇〇大会」というイベントに参加した。自分は学校外の活動は一切したことがなかったのでとても緊張した。
イベントの冒頭で自己紹介を求められた。そこで「趣味は消しカスを集めることです」と、お決まりのフレーズを言った。もちろん、ウケた。
私はこの半年後に、当時の代表であった先輩から、この団体の新規運営の第一号として誘われることになる。
後からわかったのだが、なぜ特に有名なわけでもないし、とりわけすごいわけでもない私を運営に誘ったのかというと、あのときの自己紹介をみて、「初対面の人の前であそこまでボケられるのはすごいと思ったから。」ということだった。

日本中高生協議会の運営に所属してからというもの、ものすごく高い技術を持った人や、超頭の良い人、コミュ力おばけの先輩、各界隈で活躍している人たちばかりでものすごく刺激的な環境の中で過ごす毎日はとても楽しく色鮮やかなものだった。 
そうこうしているうちに、3月で代替わりの時期となり、気がついたら「日本中高生協議会」の代表に推薦(?)され、代表になっていた。

そして「消しカス」を集めるようにコツコツと積み上げた生徒会活動の実績が実を結び、なんと生徒会大賞2023で特別賞を受賞。受賞者の中で唯一の活動当時高1での受賞だった。

こうして、あの日消しカスを集め始めたことがきっかけで、ものすごく人生が変わった。 
学校では消しカスの人という名誉なのか不名誉なのかよくわからないイメージがつき、生徒会界隈で少しだけ名前が知れ渡り、学生団体の代表を務めることになり、私の人生は消しカスなしではもっと地味なものだっただろう。

現在は団体運営と勉強の両立に勤しみ、とても忙しく充実した日々を送っている。

あの日私に「捨てないで」と訴えかけてきた消しカスに感謝するばかりである。

#あの選択をしたから
#学生団体
#高校生

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