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写真を組むということ:土門拳

写真の世界でレジェンドと言われるような人たちの写真集を読もうと思い、土門拳さんの『筑豊のこどもたち』を読んでみました。

この写真集で印象に残ったのは、ボタ拾いのパートでした。
かつて炭鉱業で栄えた筑豊の人々にとって、ボタ(ボタ山)というのは、身近な存在だったのだと思います。
炭鉱業の衰退と共に貧しくなる中で、ボタ山から使えそうな石炭を拾ってくるという行為は、生活に深く関わる部分なのだろうと感じました。
土門さんは、以下の7枚でボタ拾いを表現していました。

一人の幼い男の子が、ボタ山の中に座ってボタを拾っている最中の写真
②ボタ拾いで汚れて、シワまで見える1枚目の男の子ののアップ
ボタ山の手前に座ってこちらに振り向く2人の男の子と、
 その奥でボタ山に登りボタ拾いをしている5人の大人たち
④拾ったボタを背負って、ちょうど町に帰ってきたであろうお婆さん
⑤町までボタを持ち帰ってきた3人の女性の後ろ姿
⑥ボタが入っているであろう重そうな袋を持ち上げる少年
⑦燃えているボタ

1枚目、4枚目、6枚目は一人にフォーカスした印象的な写真です。
それに対して残りの写真は、リズムを生み出したり、
情報の補足によってボタ拾いのイメージをより膨らませたりしていると思いました。


1枚目:ゴロゴロとボタが転がって足場の悪い危険な場所に、幼い子どもがいるという違和感
2枚目:ボタを拾って暮らしているという生々しさ。リズムを生む”寄り”の画。
3枚目:ボタ山とボタを拾う人の対比から感じるボタ山のボリューム感。リズムを生む”引き”の画。
4枚目:生きるためには老人もボタ拾いをしないといけないという生々しさ
5枚目:ボタを拾って生活している人が何人もいるという情報の補足
6枚目:貧しくなる町の中でも、力強く生きているエネルギッシュさ。
7枚目:ボタが燃えることにより発生しているエネルギー。(6枚目からのつながり、連想。)

写真集は何十枚の写真で構成されていますが、ボタ拾いというテーマだけを取り出しても、その中で、リズムを作ったり、重層的な表現を行ったりされているのだと今回気づきました。
こういったところに表現力、伝える力が宿るように感じました。


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