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音と私のある日の話。

舌打ちが苦手だ。
舌打ちを聞くと、それが自分に向けられたものでなくてもぴゃっと跳ねたくなるし、続くとそわそわ落ち着きない気持ちになる。
言える場合は、止めてほしいことを伝える。だけど相手も何かしらの気持ちの発散で舌打ちをしているわけで、そしてそれが私へ向けてではない場合は怪訝な顔をされることもある。

舌打ちに限らず、音が苦手だ。愛すべき音はたくさんあって、すべてが苦手なわけではないから厄介なのだけれど、強いて例えるなら食べ物の好き嫌いのようなものかもしれない。時には急き立てられ、時には叫び出したいほど追いかけてくる音がある。反面、別の音に没頭することで怖い音を打ち消す手段もある。

本を読んでいる時、集中して何か書き物をしている時、私はあまり周りの音を聞いていない。話しかけられても尋ねられても前後が分からないのでぽかんとすることがある。だからというわけではないが、本を読むのも書き物も、一人でできる環境が落ち着く。

自分以外の音が苦手なのだろうか。そうでもない。音楽は好きだ。ドラえもんの映画も、タカラヅカも、ミュージカルも。
けれど時々不特定の音が怖くなる。不安になる。逃げ出したくなる。耳を塞いで生きていくわけにはいかない。現実的に考えて不便だし、愛すべき音も聞こえない。

夕方に、まさに夕立という通り雨があった。雷の音は遠かった。雨はざあざざと降り、アスファルトを叩き、窓の外は灰色だった。
窓を開けると、雨音は、強まった。むわっとした空気と一緒に雨の匂いがして、何だか少し安心した。

無音を望んでいるわけではない。だから今日も世界とうまく付き合えるようにしていこう。そう思うことが、今できることなのだろう。

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