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認知症の方が好きなんですか?と聞かれた日、の話。

以前の話である。
「認知症の方が好きなんですか?」と聞かれたことがある。「はあ」としか答えられなかった。
「好きです」というのは何か違うし、そもそも好き嫌いで考えたことがない。意表を突く質問というものを意図しているならば大成功だろうが、それで突いてくる意味が分からない。因みに聞いてきたのは職場の管理職で、確か定期的にある管理職面談の時だった。
なんでそんなことを訊かれているのだろうか。まあ単に私が認知症ケアに関する資格を当時複数所持していたからとか、その程度の理由だったようだが。

認知症とはなんだろう。
認知症と一口に言っても、それは大きな見出しに過ぎずにそこから枝分かれしていく。いくつかの病気の症状の一つに「認知症状」があるとも言える。認知症と呼ばれるものになる「原因」の病気があって発症するのだから、いつどこで誰がどうなるかわからないし、絶対に認知症にならない保証は無い。予防方法や進行を防ぐ薬なんていうのはあるけれど。更に言えば、認知症と診断されても軽度から重度、個人個人で症状何てバラバラで一見するとそんなことわからないパターンも山ほどある。
私だってどうなるかわからない。

好きか嫌いか。その質問に意味はあるんだろうか。
私はケアワーカーだから、出会った人たちの手伝いをする。そこに認知症の人という括りはないというか、既往歴として確認はするけれど、「認知症」という言葉が好き嫌いのふるいにかける要素にはならない。
え、基本的にそういうもんですよね?認知症の好き嫌いで仕事してませんよね?と思わず面談後に他の同僚に確認してしまった。とりあえず周囲からは「なんでそんなこと聞かれたんだろうね」という反応で概ね一致した。

今でも思う。何が聞きたかったんだろう。
「この仕事が好きですか」という質問なら、考える。
「人が好きなんですか」という質問でも、考える。
「認知症の方が好きなんですか」
答えはあの時も今も変わっていない。
「考えたことなかったです」

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