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1993年9月 タイ・バンコクとアユタヤ小走り3

【まとめ】渡し船とサムロー、徒歩を駆使してお寺巡り。丘の上の寺院にて天気急変、と同時にお腹が非常に痛くなった私は友に別れを告げて寺を出るが……

9月12日(日)後半戦
ワット・ポー近くにあった渡しから向こう岸へ行く。
ここで玉子っぽい、甘いクレープみたいのを買う。少しばかりサクサクしていてバター風味でもちろん旨い。

このあたりで、あぶなそうなおっさんから
「ぼーと、ぼーと!」と声を掛けられる。乗ってしまったらどこまで連れていかれるやら。ちょっと興味はひかれたんだが、普通の渡し船に乗る。

渡し場。

【ワット・アルン】
逆光で黒ずんだ中にブロンズのような輝きがある。近づいてみると、陶器の欠片が一面に貼ってあった。
カンボジア様式なのだとか。

ペンギンならば船など待たなくても良いか。
逆光のシルエット。
石造の元にはお昼寝中の猫どん。
こちら岸の街並。
のぼるぞー!

周りは、のどかな出店だらけ。
塔は中腹まで登れるのだが、途中がものすごい殺人的な段々。

降りて来た人。タイ人だと思うが確かに「オッカナイ」って叫んだ、気が。

景色はばつぐん。
チャオプラヤ川をぼおっと見ていると、時間の流れまでゆったりしてくる。

川と向こう岸を眺める。
へっぴり腰のme。足先がどうしてもはみ出す。
無事に降りられていばっている。ヤンキーみたい。

また川を渡って、次はワット・プラケオ目指す。

道を挟んで壁と反対側には屋台+出店の列。日本の縁日みたい。シャツ屋、飲み物屋、くだもの屋、骨とう品店、魚屋、八百屋、日用雑貨、占い屋(人だかりがすごかった)。
そのうち一軒でバーミー・ナムを食べる。Nは炒めたきしめんみたいなの。
チャンポンみたいに出汁がよく出ていて美味しかった。
向かい側の多分地元のお姉さんは、黒いスープの中にレバーみたいな小切れがぷかぷかしているものを食していた。

ココヤシの、上を切り取って周りを削ってストロー刺したもの。
冷えていれば甘めの水みたいで美味いのだが。

【ワット・プラケオ(王宮)】110バーツくらい。
タンクトップ、短パン禁止らしく、絵とバツマークがついている。

どこもかしこも金ぴか。
そしてカラフル。

コイン博物館入場込み。各国の勲章とか世界のお金、タイの古銭、王宮の調度品など。雑然としている。

お参りの人多し!

アンコールワットの復元模型がなかなか細かくて良かった、

多分地元の中学生らしき女子たち、修学旅行らしい。5、6人のグループが私たちに「一緒に写真撮ってください」と。
うーん、キャピキャピしてて、いいなー。

アメリカ人や日本人と写真撮りたガールズ

エメラルド寺院という名と派手な装飾のわりにがらんとした空間。
たくさんの信者、観光客が思いおもいに床に座り込んでいる。一生懸命這いつくばって拝んでいる人も。
そう言えば、外のどこかでお経の放送が聴こえた時、近くのお堂に向かって拝んでいる人たちもいた。信仰心あつい人が多い。
外に大きな盃状の水溜めがあって(左図)、そこのハスのつぼみをみな、それぞれ頭にかざしたり軽くたたいたりして(右図)頭に水を振りかけていた。

つぼみが頭頂部に程よい硬さ

休憩所で、白っぽくて四角いプラ容器に入った「王宮印」の飲み物を買い求める。
容器は持ち出し禁止で要返却とのこと。
meは甘いミルクセーキみたいなの、Nは少し甘いジャスミン茶。
休憩所のBGMはなぜかハードコアテクノだった。

博物館には不思議なものがいっぱいだった。

両手のひらを前に向けた仏像。
巨大な骨。

王宮を復元した模様あたりが泣かせどころだったかも。

さすが象が本物っぽい。
キノコみたいな刈り方の木々。

王宮を出てから次の目的地に向かおうとキョロキョロしていたら、やって来たサムローの運転手がやたら饒舌に(英語で)、安くするから、とか途中の市場に寄って行け、などとしつこい。「5分でいいから、買わなくていいから」とかペラペラと。しつこいので答えずにNと走って通りの向こう側に逃げる。同じ群れの一台が追いかけてきたがそれも振り切って少し行った先で、ようやく流しのサムローを拾う。
行先を告げるが発音が悪いのか、運転手さんに通じない。が、今度は、たまたま近くに立っていた英語が分かるオバサマが寄って来られて通訳に立ってくれた。
もう良い人ありがとう!

庶民の足。女子高生、お坊さん、家族連れとか乗ってる
うれしげな運転手さん。

【ワット・ベンチャマボピット(大理石寺院)】
静けさ漂う白亜のお寺。黄色主調のステンドグラスが、蒸し暑い空気によく映える。

周りに各国の仏像がある。日本風のものも。タイからすればやはり異質な感じがするのだろうか。修行中の仏陀像にもお会いできた。

足元の石もツルツル。

ここではトイレに、手動式だがジェット水流付きのホースが設置されていた。手桶より一段進んだタイプ。

【ワット・サケット(プーカオトン)】
丘の上の寺院にたどり着き、参拝したまでは良かったが、丘の向こうに途方もない黒雲が湧き出しているのを見る。

あらすごい雲ですわね。

ちょうどその時、暴飲暴食のツケがまわったのか、水に当たったのか、急にものすごく腹が痛くなる。
聞いたら丘の上にはトイレが無いと。仕方なく、Nに寺院内に残ってもらい、ひとり、丘を駆け下りトイレを探しに。

丘をぐるぐると下るうち、折あしくものすごいスコールに見舞われる。薄いビニル合羽一丁で、さらにらせん状の坂道を下る(腹も下る)。

丘の途中、若者が白Tシャツを脱いで上半身はだかのジーパン姿で雨をシャワー替わりに体を洗っていた。

ようやく丘の下までたどり着く。木陰に古びた神社のような、祠のような建物がある。トイレではなさそうだが、誰もいなければこの陰で……と近づいた時、建物の陰に小柄でおとなしそうなおじさんがひとり、雨宿りをしているでは。ばっちり目が合う。やばい、まだパンツ下ろす前で良かった。こんな時、どうすれば……
そこでふと出たことばが
「ほーんグなむゆーてぃーらーい?」
そう、飛行機内で覚えた「トイレはどこですか?」。今まさに実践会話!
するとおじさん、微妙な指先の動きで目的の方向を指し示してくれたのでした。
コープクンカーの叫びを引いたまま、あわてて示された方向に走ると確かに公衆トイレらしき小屋。この時の幸せと言ったら!
この時ほど、トイレの素晴らしさを身に沁みて感じたことはなかった……

さて腹も落ち着いて、Nの待つ丘の上の寺院までまた、小走りに駆け上がっていく。雨も小降りになり足取りも軽く、やっと頂上に着いたぞ……
なんと、寺の門がかたく閉ざされているでは!
木戸に耳をつけると、中からかすかに人の声は聞こえてくる。門が開くのをしばらく待つことに。

10分か20分経った頃、ようやく門が開いた。しかし、受付の女性が
「ああ、日本人の女の子? あなたが出てからもう少ししてから出て行ったよ」だって。

私が戻るのがあまりにも遅かったので探しに出て行ってくれたのか? と、あわててまた、丘を駆け下る。
友の名を呼びつつ、先ほどのトイレ近くまで降りると、少し大きな建物の陰に数人の若い男の人たちが雨宿りしている。
「どうしたの?」と聞いてきたので「友人を探している」と答え更に呼ぼうと辺りを見渡したところ、向こうの木陰から、懐かしき友の姿が!

よかったよー、良かった、と肩を抱き合う。雨宿りの若者らも一緒に「よかったねー!」と喜んでくれて、しばしともに雨宿り。
「どこから来たの?」「どこのホテルに泊まってるの?」などとやいやい賑やか。聞くと、どこかの大学生らしい。
ようやく雨が完全に止んだので、さて行こうか、と軒先から出て彼らに手を振る。と、そこにNが私を指さして叫んだ。
「どーしたのその合羽!?」
片手を挙げた袖を見ると、なんと合羽の袖から背中にかけてビリビリに破れ、ぱっくりと口を開けていた。
雨宿り連中も大笑い。
家族が心配して、合羽の背中に大きく住所氏名を(漢字で)書いてくれてあったのだが、すでに寿命だったらしい。小さく丸め、ホテルへの帰りしな、駅のゴミ箱に放り込んでしまった。

地元の人がよく履いていそうなゴムサンダルを買ってからいったん宿に帰って履き替え、近くのチャイナタウンに夕飯を食べに行こうと決まる。
せっかくなのでフカヒレとツバメの巣を食べてみよう! と。どんな料理なのかも全く知らずにのこのこと出かける。

似たようなフカヒレ料理の店が並ぶ中を歩き回り、ようやく大衆食堂というか、場末というか、黄色い安っぽいプラ看板に赤い文字の踊る店に入る。
間口の割に奥が深い。二人用のテーブル(ビニルの敷物がちょっとべとつく)に座り、
「フカヒレスープとツバメの巣」と頼む。そして「どちらも一人分で」と付け足す。ふた品で300バーツ。
店員のおじさんは黙って聞いて、黙って下がって行く。
やがて出て来たフカヒレスープは薄茶色に濁っていた。何の出汁なのか表現できないが、そこがまた美味。つるりん、とフカヒレらしきものが口の中に吸い込まれるたびに幸せをかみしめる。
ツバメの巣は真っ白で、甘いシロップ液の中にゆるゆると入っており、これもまたはっきり表現できない風味と不思議な舌触りだったが、更に幸せ気分になる。
そこに山盛りごはんが茶碗一杯運ばれてきた。いや、頼んでないけど、と一生懸命説明したが、なんと、サービスで付けてくれるのだと。
頭の先から足の先まで生乾き、しかも安いサンダルばきのうらぶれた二人連れが仲良くひとつの汁物とデザートを分け合っていたので、店のおじさんが可哀そうに、と思ったらしい。
存分に感謝して、これもまたふたりでいただく。

満腹になって、ホテルに戻る。
無事で何よりでした。




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