南北コリアの言葉の違い② 日常単語

前回に続き、南北KOREAの言葉の違い…シリーズの二回目です。

前回は語頭発音についてでしたが、今回は単語に焦点を当てまして、その中でも日常単語の違いについて触れてみたいと思います。

前回の終わりに少し書いたのですが、南北つまり韓国と北朝鮮では基本単語と言いますか、日常単語ではそんなに違いが無いです。これは
北朝鮮の映画やドラマ、ニュース等媒体からわかります。というのは、こういった〈媒体〉というのはそれが放送される地域の人々に一般的に受け入れられる言葉、つまりポピュラー語を使うからです。

実は韓国では、テレビはむろんYOU TUBEなどでも北朝鮮の映画やニュースを簡単に見れないそうです。ところで韓国では、北朝鮮の言葉(基本的に同じコリア語)を〈北韓語〉として規定する方もあります。私の個人感ですが、その北韓語という枠では、どちらかというと韓国と、ある意味の単語に関し〈別の〉単語を強調しているようです。

例…〈ジュース〉
韓国では…ジュッス 北朝鮮では…タンムル(これは〈甘い水〉と和訳できます)

しかし南北ではいわゆる〈日常語〉においては同じ言葉が多いのですね。例えば〈Family〉は南北ともに漢字語由来の〈가족(家族・カヂョッ)〉であり、家族の住む〈House〉はどちらも〈집(チプ)〉です。

北朝鮮では今から30年以上前に〈우리 집 문제(ウリチプムンヂェ・我々の家の問題〉という計12作の映画シリーズがありましたが、ここでもチプ即ち家が使われているのみならず、
この映画タイトルを韓国で言っても勿論意味は完璧に通じるわけですね。
このシリーズのいくつかは実は日本でも紹介され、東京国際映画祭にも参加してたようです。


写真のものは〈우리 처가집 문제(我々の妻の家の問題)〉というシリーズ第5作目(1980年製作、VHSでは4作目と書いてあります)のVHSですが、91年に日本で公開もされた模様ですね。当時はほのぼのタッチで日本にも売り出してたのかもしれません。
この映画の監督림창범(林昌範)氏はこの作品の他に〈사랑의 노래(愛の歌)〉という映画も監督されていて、この〈妻の家の問題〉も〈愛の歌〉も今では多分YOU TUBEでも視聴可能かと思います。

こういった映画を見ると、現在の北朝鮮は変わり過ぎにも変わり過ぎた感があります。昔の映画では俳優さん韓国に負けない??いい味出してるんで是非。前置き長くなりましたが、以下、南北コリアの日常語(もちろん一部です)の共通のものと違うものを挙げてみましょう。{( )は漢字語です}

①共通のもの
家族関係
아버지 父 
어머니 母
형(兄)
오빠 兄さん
언니 姉さん
누나 姉さん
동생 弟または妹
할아버지 祖父
할머니 祖母
고모 父の姉・妹
이모 母の姉・妹
삼천 叔父さん

人関係
사람  
남  他人
저,나  私
너  君
남성(男性)
여성,녀성 (女性)(語頭発音が違うのみ)

食べ物・飲み物関係
밥 飯
김치 キムチ
비빔밥 混ぜ飯
냉면・랭면(冷麺、語頭発音が違うのみ)
국수 麺類
갈비 あばら骨の肉、カルビ
삼계탕(参鶏湯)
된장국 味噌汁
물 水
술 酒
소주(焼酒) 焼酎
사이다 サイダー

家関係
집 家
지붕 家の上即ち〈屋根〉
문(門) ドア
뜰 庭

音楽関係
피아노 ピアノ
기타 ギター
장고・장구(長鼓) チャンゴ・チャング、横長の太鼓
북 プク、円形太鼓
거문고 コムンゴ・朝鮮の弦楽器
가야금 カヤグム・琴

スポーツ関係
축구(蹴球) サッカー
야구(野球) 野球
농구・롱구(籠球・バスケットボールの意、語頭発音が違うのみ)

②異なるもの(左韓国、右北朝鮮)
その国の人たち
국민(國民)   인민(人民)

韓国は北朝鮮を→북한(北韓)と呼び、北朝鮮は韓国を→남조선(南朝鮮)と呼ぶ

標準語
표준어(標準語)   문화어(文化語)

大丈夫だ
괜찮다   일없다(大事ではない、の意)

じゃがいも麺の冷麺
함흥냉면(咸興冷麺)   농마국수


마음    심장(心臓)

仕事をする人
일하는사람,직장인(職場人)   로동자(労働者),근로자(勤労者)

トイレ
화장실(化粧室)   위성실(衛生室)

民謡
소리   민요(民謡)

関連
관련(関連)   련관(連関)

カメラ
카메라   사진기(写真機)

レントゲン
에크스선   렌트겐선

血液検査
혈액검사(血液検査)   피검사

ウイルス
바이라스  비루스

商業施設
상업시설(商業施設)   봉사기관(奉仕機関)

接客
접객(接客)   상업봉사(商業奉仕)

ジュース
쥬스     단물(甘い水)

かき氷
빙수(氷水)   단얼음(甘い氷)

また、北朝鮮に特有の日常単語として以下のようなものがあります(もちろん一部です)。

동무 これは北朝鮮で他人について言うとき、一般的に使われる2人称語。実は南北分断以前から朝鮮で使われた言葉だったが、分断後韓国では消えた。

선주후면(先酒後麺) 〈寒い時期に、先に焼酎を飲んでその後温かい麺類を食べる〉の意で、これをすると寒さから体が温まるのが速いという。

글투 各人の書く文章のニュアンス

소리빛깔 声の様子・イントネーション

질병폭발기(疾病爆発期) 身体に色々と疾患が出てくる一番危ない時期、主に40代を言う。

친절성(親切性) 親切な様子

전투(戦闘) 元の戦闘(war)の意とは別で、地域または国で何かを必死にやる時期。

個人的に〈心〉が北朝鮮では〈心臓〉になるのが関心深いです。やはり映画で〈심장에 남는 사람(心に残っている人)〉というのもありました。ところでこの〈心臓〉も、分断以前に朝鮮で使われていたようです。

次回③は、南北の〈言葉使い〉の違いに触れてみます。









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