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『アルジャーノンに花束を』と『DEAR ALGERNON』

名作『アルジャーノンに花束を』を読んだ。

32歳になっても幼児の知能しかないパン屋の店員チャーリー・ゴードン。そんな彼に、夢のような話が舞いこんだ。大学の偉い先生が頭をよくしてくれるというのだ。この申し出にとびついた彼は、白ネズミのアルジャーノンを競争相手に、連日検査を受けることに。やがて手術により、チャーリーはアルジャーノンのように天才に変貌したが…

昔、わたしの物ではなかったけれどずっと本棚にあって、でも全く読む気が起こらなかった本。
なので、この本を読む日が来るとは…と思いながら読み始めた。

今回わたしがこの本を読んだのは、10代の頃BOØWYや氷室京介に憧れた恋人が、会う度にアツい解説と共に曲やエピソードを聞かせてくれる中で、
「『DEAR ALGERNON』という曲は、氷室さんが『アルジャーノンに花束を』を読んで作られたんだよ。」
と教えてくれたことがきっかけ。
あ、あの本か!とすぐに表紙を思い出し、昔1ミリも興味がわかなかった本に俄然興味がわいた。そして速攻読んだ。
わたしのこのスピード感て素晴らしいと自分で思うし、こういう時は大抵大きな感動がその先に待っている。

その予感は的中だった。

チャーリーが書く経過報告という形で物語は進んでいくのだけれど、最初はひらがなばかりで誤字だらけだった文章が、実験が進んでだんだんと知的な文章になっていく、というのがすごく面白かった。それがまた最後、切なくもあるのだけれど。
そして何より、最近カードリーディングをしたり自分の内面を探っていった中で学んだ、傷ついたままの子供時代の記憶(いわゆるインナーチャイルド)の話だったことも興味深かった。
わたしも、カードを引きに来る方達も、みんな心の奥深くに傷ついた子供時代の自分がいる。そしてその傷には親が関係していることが多い。
チャーリーは知能が上がっていくと同時に、母親との過去の記憶が思い出され、それがどういう意味で、今の自分の問題のどこに関連しているのかがわかるようになる。
チャーリーとお母さんの描写は読むのが辛かった。子供の頃に愛情を受けられないって、どんなにかチャーリーは悲しかっただろう。

こういう心の奥深くの見えない傷が、人生がうまくいかない原因だったり自分らしさを消してしまう原因だったりして、本来の軽やかな人生を生きられなくしてしまっている。
自分で傷に気がつきさえすれば絆創膏を貼って治すことができるけれど、気が付かない限り傷は開きっぱなしで、傷ついた子供時代の自分が気づいてもらえる時を待っている。
32歳のチャーリーも、ずっと子供の頃の自分に見つめられていた。

本棚にあったあの頃にもし読んでいたとしても、きっとこういうところまではわからなかった。心のことを学んでいる今、読むタイミングだったのだなあと思う。人生ってうまくできている。


本を読み終えて、今までは『恋人が大切にしている世界』という感覚で一緒に聴いていた「DEAR ALGERNONを、1人で聴いた。


DEAR ALGERNON 優しさには出会えたかい

DEAR ALGERNON 温もりには出会えたかい

I WANNA FEEL MY LOVE
I WANNA FEEL MY DREAMS
I WANNA FEEL MY SOUL
I WANNA FEEL MY LIFE
I WANNA FEEL MY LOVE
こうしていつも愛を感じていたいだけ


物語を読んだ上で改めて歌を聴くと、情景が浮かんで泣けてくる。
この本で曲が書けるほど感動した氷室京介という人は、ものすごく感覚が美しくて優しい人なのだなあと思った。

恋人が憧れた氷室京介、その人が読んで感銘を受けた本を、30年後にわたしが読んでいる。
その人が本からインスピレーションを受けて作った曲を、今わたしが聴いている。
そういう循環って素敵だなあと思う。
『恋人が大切にしている世界』がわたしの世界の一部になったのも、素敵なことだなあと思う。
でも、わたしの心が震える恋人の心を震わせた人なのだから、わたしに響かないはずがない。


別の曲で

ちっぽけな愛のささやかな力で
悲しみはいつも抱かれるのを待っている

という歌詞がある。
本当にそうだなあと胸が熱くなった。
わたしの奥深くで積み重なっていた悲しみは、恋人の愛が抱いてとかしてくれた。
わたしもきっと、恋人の悲しみを抱いてとかせているんじゃないかなと思う。
主人公チャーリーの心の奥深くでも、傷ついて悲しんでいる子供時代のチャーリーが、ずっとずっと自分を抱きしめてくれる愛を待っていた。


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