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京葉線快速縮小問題を考える⑪通勤快速の海浜幕張停車実現可能性

通勤快速が復元しそうな気配

京葉線通勤快速の復元は自治体から特に強く望まれているところで、筆者としてはその利用状況から各停化やむ無しと考えてきたところ、どうもなんらかの速達列車として復元されそうな気配になってきている。

本稿でも何度か取り上げている通り、従来の通勤快速停車駅そのままでの復元はJRも難色を示しており、なんらかの見直しは不可避と考える。その本命ともいえる案が海浜幕張への追加停車であり、本稿でも既に分析してきた。

しかし、部外者が思い付くようなことを鉄道事業者が検討していないはずがなく、検討したうえでこれまでは通過としており、2024年ダイヤ改正では各駅停車化の判断したものと推察される。今回はその理由を改めて深堀してみたい。なお、以下断りのない限り平日朝の上りの記載とする。

通勤快速の海浜幕張停車への懸念点

まず「速い優等」への旅客集中が考えられる。例えば途中2本の各停を追い越す通勤快速を海浜幕張に停車させてしまうと、同駅での乗換えにより海浜幕張以東での各駅停車2本分の速達需要が通勤快速に集中してしまい、今度は通勤快速「だけ」が混雑する事態が生じる。本来ならば通勤快速を頻発運転すれば良いところ、東京方ではより混雑が激しい武蔵野線の流入もあり増発リソースに乏しい。これらの検討の結果、全列車を各駅停車として先発先着の輸送に徹する……とする各駅停車化のロジックにもつながる。

次に、海浜幕張駅でのホーム滞留問題が考えられる。具体的には海浜幕張ひと駅に停車しても以西で各停追越し(または海浜幕張で緩急接続)を行う限り、千葉みなと〜検見川浜間の旅客を集客してしまい、その乗客が海浜幕張駅ホームに滞留、海浜幕張駅下車客(当駅は通勤目的地でもある)との交錯などを招く懸念が生じる。2023年現在、朝ラッシュ時に京葉快速の運行はなく、その廃止前も快速は各停の追越しはしていなかった。20年ほど前は新習志野、新浦安で追い越していた時代もあったが、長らく行われてこなかったのはこの旅客交錯を嫌ってのことと推測出来る。

仮に海浜幕張停車が困難とされた場合の別案は、以前にも本noteで検討しているが、南船橋や新浦安(以西)などが考えられ、以下に改めてメリット・デメリットを整理する。

通勤快速の追加停車駅の再整理

【①海浜幕張追加停車】
〇利用者数が多く、同駅自体も目的地であり利用者の理解を得られやすい
〇各停からの片接続(または緩急接続)により千葉みなと〜検見川浜利用者も利用可能
×集客しすぎる懸念があり、混雑平準化やホーム滞留に課題がある
△設定するならピークを外した時間帯になりそう

海浜幕張750各停から通快への乗換ができる

【②南船橋追加停車】
〇武蔵野線接続駅であり混雑する西船橋方面から東京方面への新たな選択肢となる
×各停追越後の停車のため京葉線各停からの乗換不可
〇上記は集客しすぎない点でメリットになりうる
〇西船橋方面行の後追いにすることでダイヤ次第では海浜幕張〜新習志野間の利用は可能
×千葉みなと〜検見川浜の利用はできず「意地悪」な設定
?船橋市が漁夫の利状態となり、利用者の理解を得られるか?

京葉線ではなく、海浜幕張始発武蔵野線から乗換可

【③新浦安(以西)停車】
〇最混雑区間での戦力列車になる
△平行ダイヤ区間であり所要時間はそれほど増えない(新浦安での先行追越が出来ず3分程度は所要増)
×京葉線系統各停からのシフトは期待出来ず、本数整理に繋がらない。その結果、武蔵野線増強も出来ない

新浦安で各停(武蔵野線)追越せず3分所要時間増

まとめ

列車の混雑状況や各駅での乗降状況は分かっても実際の流動までは在野では把握し切れず、結局のところ鉄道事業者(JR)がどのように判断するか、とならざるを得ない。

朝上り新木場断面で見ると、武蔵野線の混雑が激しいことは自明で、朝ラッシュ時における混雑平準化とは「西船橋方面からの混雑緩和」が目的と理解している。加えて、2024年ダイヤ改正での通勤快速各停化の次のステップとして、京葉線系統の整理・武蔵野線系統の増強を見据えていたと推測できる。通勤快速が(形を変えても)復元するならば、武蔵野線系統の増強は通勤快速に代えて設定した特急(さざなみ4号・新わかしお4号)の廃止、または別の時間帯へのシフトにより対処するしかないのではないか。

通勤快速の南船橋追加停車案はダイヤ趣味的には面白く、追加停車自体が武蔵野線対策も兼ねており、利点が多いと感じる。ただ、趣味者以外にはその理屈が伝わりにくく、よほど丁寧に説明しないと再度の炎上や沿線自治体との関係悪化に繋がりかねない点はデメリットになり得る。

新浦安以西停車案は拙稿で何度か言及してきた。この案では新浦安以西での利用率向上は出来そうだが、京葉線各停利用者の転移は見込めないことから京葉線系統の整理には繋がりにくく、将来的な武蔵野線増強が難しい点がデメリットとなる。

結局のところ、海浜幕張停車が利用者にとって理解しやすい点、将来に向けた柔軟性(通勤快速と京葉線各停の平準化と本数整理、転じて武蔵野線増強)を備えた点で無難ではないかと考えている。

通勤快速の京葉線内追加停車で京葉線各停に余裕が生じれば、京葉線各停を整理出来、武蔵野線増強の余地も生まれる。通勤快速復元、特急廃止、京葉線各停の整理、武蔵野線増強がワンセットになって初めて、各方面への需要と速達性のバランスの取れたダイヤになる。どのような停車駅設定かはさておき、近い将来に期待して本稿でのまとめとしたい。

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