なにはなくとも読みやすくていい!
前半の理論編は、その名の通り物語論の理論についてシステマチックな分類や説明をしているんだけど、わかりやすいし日本語の特徴についても触れられていてありがたい。後半の分析編は、2017年の本なので近年の作品にも触れられていて、これまたわかりやすいし読みやすかった。
同著者の『ナラトロジー入門』は、より理論的でこれまたいいらしいんだけど、絶版なので上手く取り寄せないとなんだよなあ。早いうちに読んでおきたい。
ではあとは、パラパラと引用&感想。
・この手の本を読んでいて、すっかりおなじみになってきたプロップの機能だけど、思い返すとこの前読んだ『ザリガニの鳴くところ』は、この機能的にかなり忠実に書かれていたんだなと。
最初の3つだけでもかなりそれっぽいよね!
ついでにプロップの著書の書名に取られている「形態学」について、ゲーテから取ったとし、さらにこんなふうにも書かれている。
こじつけっぽくなりそうだけど、ザリ鳴き(急に変なふうに略した)の著者のバックボーンとも関連づけて読めなくもない……?
ちなみにp.48の「黙説法」でもめちゃくちゃザリ鳴きを思い出したよね。ザリガニが鳴きまくっている。キィーキィー!
・日本における「物語」という言葉について、
と、している。
これは感覚的にすごくわかる。そんでもって実のところ「昔話や虚構の話」という感じがいいな、と思ってたりもするんだ!
・物語論に先立つロシアのフォルマリズムと同様に、
ゲーム用語でナラティブって言ったら、一回性みたいな文脈で読んでいたけど、このコミュニケーションに着目した物語って感じかしら……。形式っていうより語るという行為に重点をおいてるようなイメージがある。と、ぼんやり。
・オーバーラップした語り
そして、『砂の女』から例文をあげ、
おおー、なるほどねえ! これは面白い!
オーバーラップした語りかあ。最近読んだものだと『空色勾玉』がすごくフィットする。地の文があって三人称なんだけど、すごく一人称的な語りと視点なんだよな。なるほどねえ。
あとは、完全に感覚だけど、近代文学で欧米の小説が乾いた感じがして、日本のものがじめっとした感じがしたのは、語りの人称に限らずとも、作中人物にオーバーラップして、地の文が生っぽいからというのはありそう!
……と思ったけど、翻訳の段階でオーバーラップされてたりもするのね。まあでも言語的特性はありそうね。
・精神分析の文脈との接近もあると思うけど、それよりなにより、SFやファンタジー好きからしても面白い。
どっちみち、完全に異なる世界を描くことは難しく、受け手にはさらに困難なので、多かれ少なかれ現実の模倣が入るんだよなあ。
・p.228からの「『蒲団』の内面描写」を読んで、『蒲団』は思ったより客観的に描かれているとのこと。読んだことなくて、イメージでめちゃくちゃ主観的なジメジメ小説だと思ってたので結構意外でした。
・最後に、例として挙げられてて面白そうだと思った作品たち。
小説、『ビラヴド』『ペドロ・パラモ』
映画、『アンダーグラウンド』
これらは気になるのでリストに突っ込みました。本を1冊読むと読みたい本が複数冊増えるので、たぶんここから永久機関が生まれるんじゃないかな??? まあ、いつか読んだり見たり、可能なら感想を書いたりしましょう! では!