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いましか出来ない「はい、300万円」とは?

   ##現金決済の門出に##
キャッシュレス決済が爛熟期に入った。 
とはいえ現金決済がなくなった訳ではない。早晩なくなることは確かだが、ここ10年ぐらいは存命だろう。だから、だからこそ「はい、300万円」なのだ。

「はい、300万円」は、その起源が吉本新喜劇にある。
芸人さん演じるレジ店員が「300円」のお釣りを客に渡す。その際に、「はい、300万円」と言って渡すのだ。
300円を渡すときに、300万円と偽って渡す。
ベタの極みだが1万倍に盛って笑いをとろうとするのがいかにも新喜劇らしい。これは先程述べたとおり現金決済でしか使えない「裏技」である。

だから、だからこそ、今しかできない「はい、300万円」なのだ。
じきに訪れる現金の決済ユニットからの卒業。これを祝して「はい、300万円」をつかうのも小粋ではないだろうか。


   
   ##こんなん、受けるん?##
ここでは読者から、「こんなベタが、受けるの?」という当たり前の疑問が予想される。
大丈夫、受ける。意外かもしれないがジワりとくる。

ここから少しワタシの体験談をしよう。 
私は大阪の福島にある将棋道場によく行っていたのだが、その受付けの兄ちゃんがこの技の「使い手」だった。
私が1700円の席料を払うため1000円札を2枚渡す。するとお釣りとともに「はい、300万円」の声がかえってくる。兄ちゃんはしたり顔だ。
当然、私は無視する。それでも次の機会にまた「はい、300万円」だ。当然、私は無視する。
軽く20回は無視してやった。それでも兄ちゃんはめげない。
21回目の「はい、300万円」で私は敗れた。ツボに嵌まってもた。
私は生まれてはじめて笑ったのだ。
ここまでがワタシの嘘偽りない体験談。


   ##おもんないのが、面白い##
旧旧ドイツの宣伝大臣ゲッペルスが、プロパガンダのコツをこういっている。
『3回同じフレーズを繰り返すこと』。
例えば、
「現下のドイツに必要なことは、一に公共事業!二に公共事業!三に公共事業!」といった具合だ。集まった人々は熱狂しワアッっと盛り上がる。
勢いを駆ってナチス党は予算を獲得しアウトバーンを整備。瞬く間に不景気を終わらせた。こうしてナチスは与党の座を磐石にする。いわゆる群集心理を利用した大衆煽動だ。

このように3回でもフレーズリピートは絶大な効果がある。これが20回ともなると、奇蹟が起こる。

「はい、300万円」 

300円に万つけただけやん。
しかし、おもんないという嘘偽りない事実が、繰り返されると逆にジワジワと面白くなる。
無視されても無視されても向かってくる健気さが愛おしくなる。そしてジワッとくる。人間は哀しいときに笑う。これを最大限利用したのが吉本新喜劇であり福島道場の兄ちゃんだ。

「はい、300万円」 × 20 = 哀しさ × 20 ≒≒ 笑い

プロパガンダも笑いも、意外と理屈に出来る。


   ##2つの門出に##
ところで関西将棋会館が今年度をもって福島から高槻に移転する。
「はい、300円」の兄ちゃんも、きっと移転するはずだ。
だから、高槻に行ったあかつきには、1000円札を2枚燻らしながらこう言ってやろうと思う。



「はい、2000万円」 

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