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京阪の美味しいものと アラサー男女の痴話話 連続した物語にしていますので、最初から読ん…

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京阪の美味しいものと アラサー男女の痴話話 連続した物語にしていますので、最初から読んでいただけると嬉しいです。 2022.1〜第一章 2022.7〜第二章 2023.4〜第三章

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Shirako_oishi まとめ(2023.5更新)

勝手にキャスティングとかプロフィールまとめてくれた読者がいて嬉しすぎて更新笑 東京カレンダーを意識した、関西カレンダー。 ただ、本家のようなハイエンドではなく、中流階級の男女のあれこれを書いています。 アラサーのあるある?な恋愛模様を、大阪・京都の飲食店での駆け引きやあれこれをベースに書いています。 読んでいただけると嬉しいです。 白子が一番美味しい。 第3弾 2023.4新章開始(グリルABCから) 舞台は2022年冬から2023年春。アラサー恋愛、これもある

    • スタンドニュー太閤(大阪・上本町)

      一人飲みなんて久しぶりだ。年明けの3連休の初日。誰かと飲みたかったが、いつの間にか気軽に誘える友人がほとんどいなくなっていたのに気付いた。結婚生活と社会人学生生活で人付き合いをおろそかにしたのもその理由の一つだが、何より31歳の女の多くは小さい子供を育てているのだった。年始に一泊だけ、離婚以来初めて実家に帰った。父親は怪訝な顔をしてあまり口を利いてくれなかったが、昔から私の味方をしてくれる母親は、「でも、カナちゃんはお仕事頑張ってるんやし」とフォローしてくれた。けれど実際、仕

      • ラ・スイート神戸ハーバーランド(兵庫 神戸)

        カナは、頑なに家の場所を教えたがらない。今朝も、家の前まで行くよ、と言ったのに、谷町通り沿いでと指定された。ついさっき「着いたよ」とLINEを入れたばかりだから、まだしばらく来ないだろう。臭いが残らないように車の窓を開け、カナの前では吸わないようにしているIQOSのボタンを押す。まだ付き合って数週間しか経っていないのに、近場とはいえ車で泊まりがけの旅行はどうなのだろうと悩んだ。けれど、元嫁の冨美子には釣り合わなかったような場所に、見栄えのするカナを連れて行きたかった。 早め

        • 新鮮処とろろ(大阪 西大橋)

          学生時代のバイト仲間で偶然にも同じ高校出身。趣味嗜好や考え方も合って、今では彼の起こした会社で共に働いている。新卒で入った支店で私のOJT担当だったレミさんの今のパートナーの話を聞いて、嫉妬しなかったと言えば嘘になる。 「レミさんも、ご家族とかお友達とかあるのに、私のために時間割いていただいてありがとうございます」 「ええよ。タクミとは実家も近いから年末年始の帰省も一回で済むし。久しぶりやなあ。私が上京して以来だから、2年半ぶり?」 「もうそんな経つんですね。相変わらずお綺

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        Shirako_oishi まとめ(2023.5更新)

          ラ・トォルトゥーガ(大阪・北浜)

          毎回コースの店だと、芸がないのがばれてしまうと思った。けれど、俺が細部まで知っている女なんて元嫁の冨美子だけだ。冨美子は、記念日などに仕事関係で知ったちょっと良い店に連れて行こうとするといつも嫌がった。私はそんな所にいていい女じゃないから、と。確かに彼女にはこういった店は不釣り合いだった。 「2人だったらこの中から3つ選ぶのが丁度良いって調べてきました」 俺は個人事業主だし、特に仕事納めだとか始めだとかいう概念はないのだが、世間一般で言う仕事納めの前日、カナを食事に誘った。

          ラ・トォルトゥーガ(大阪・北浜)

          肉割烹 鋒(大阪・心斎橋)

          「綺麗やね。こうしてまた好きな子と見れるなんて、生きてて良かったわ」 クリスマスを明日に控えた御堂筋には、色とりどりのイルミネーションが光っている。青だったり赤だったりてんでバラバラで統一感がない。周囲を見渡すと、カップルと言うよりは、忘年会帰りのサラリーマンが目立つ。 「ごめんなさい。明日は先約があって一緒におれへんくて」 「ええんやって。まさか12月に入って彼女出来るなんて俺も思ってなかったし。今日こうして会えるだけで嬉しい」 そう言って長谷川さんは、私の手を握りながら豪

          肉割烹 鋒(大阪・心斎橋)

          マキショウ(大阪・谷町六丁目)

          もっと適当な居酒屋とか、いっそのこと昼間のカフェとかで切り出せば良かったかもしれない。あまり得意でない日本酒に流されてしまった。床には、耕平が脱ぎ散らかした服が散らかっている。危ないから外しなよと言ったネックレスには、tkと刻印されていた。顔も良くて背も高くて、稼ぎも悪くない彼がこの年になってもたった一度の結婚さえしたことのない理由が、こういう小さいところから察せられる。 耕平とは、3ヶ月前、取引先のおっちゃんに、 「カナちゃんも経済なの」と馴れ馴れしく言われ連れて行かれた

          マキショウ(大阪・谷町六丁目)

          電氣食堂(京都・烏丸)

          凄く綺麗な人だなと思った。年は、同じか少し上くらいだろうか。専門学校からもそう遠くない三条烏丸のカフェで彼女は働いていた。 18歳の夏、初めての一目惚れだった。 「ヒデキ、お前離婚したんだって?」 トマトのキムチをつまみながら、森川さんが切り出した。ミョウガが良いアクセントになっているなと味わう。 東京の外資系法人で働く森川さんは、多分同級生で1番の出世頭だ。もっとも彼は大学を出てから専門に入っているから4歳年上で、昔から兄貴的存在だった。コロナも落ち着いてきたし久しぶり

          電氣食堂(京都・烏丸)

          台風飯店(大阪・谷町六丁目)

          「でも、それお父さんとか許すん?自分の知り合いの息子と別れてから連れてくるのが高卒とか。しかも同郷って、色々調べられるんちゃうん?」 サッポロの大瓶をコップに注ぐなり、高校時代からの親友の奈美は言う。 「高卒やなく専門卒な」 「どっちでもええけど。てかあんたは大丈夫なん?話は合うん?」 「いや。結婚するつもりはないし。第一学歴だけが全てじゃないやろ。今バリバリ働いてて、稼ぎもええんやし」 「そんなもんなんかなあ。まああんたがええならなんも言わんけど」 正直、長谷川さんが大学

          台風飯店(大阪・谷町六丁目)

          貝料理専門店ゑぽっく(大阪・心斎橋)

          「長谷川さんって、本当に綺麗な目をしてますね。きっとお母さん美人なんやろなあ」 背筋の伸びた女が、鯛と貝の吸い物を美味しそうに啜りながら言った。 脳裏に、またあの光景が思い浮かんだ。水を汲みに台所に行くと、その隣のリビングとは到底言えない6畳の和室で、母が1人テレビを見ている。蛍光灯の一つが切れ、部屋は薄暗い。友人たちの母親とそう年齢は変わらないはずなのに、肥えて醜い母。俺に気付かず、老いて酔った父が母の元に向かっている。父は、母の服を脱がし、醜い肉を触る。母は何も言わない

          貝料理専門店ゑぽっく(大阪・心斎橋)

          肉和食 月火水木金土日(大阪・福島)

          なんや東カレみたいな店やな。そう思った。 隣にいる色白の男の笑った目が、私を愛おしそうに見つめている。 どうせ、今だけやろ。 思えば、まだ家から近い米原高校にと言われたのに、その反対を押し切って彦根東に行って、滋賀大の経済でええやないと言われたのに、京都の大学に行って。10代の時から私は親の思う良い子には生きてこなかった。恋愛運が格別に悪くて、20代のうちにバツをつけたのも、筋書き通りだったのかもしれない。 けれど、あのビワコムシまみれの街から出て、いま大阪の都会の、あ

          肉和食 月火水木金土日(大阪・福島)

          ヨコボリ(大阪・北浜)

          手が冷たい子だなと思った。自分は暑がりなので、その冷たさが気持ちよかった。 顧問先とのつながりで、この店はよく訪れている。今日も、近くの会社訪問を終えてからすぐの6時に入店しているにもかかわらず、満員だ。いつものことか、と思うが、ふとiPhoneのカレンダーに目をやると、今日は金曜日だった。 「この辺の店、結構若くて可愛い子多いよな。昼間はよれたサラリーマンのおっちゃんばかりやのに」 若手の士業連中が集まるゴルフコンペで一緒になって以来仲良くしている服部先生とは、もう3年の

          ヨコボリ(大阪・北浜)

          グリルABC(大阪・天満橋)

          自分試しの恋だったのだな、と、返事がくることのないLINEの画面を見て思った。 今回ばかりではない、ずっとそうなのだ。 遅めの昼休みはあと30分で終わる。古い喫茶店の2階は、25歳くらいだろうか。若い男の子の集団に占拠されていた。悪そうではないけど、あまりガラが良いわけではなさそうだ。このあたりで普通に働くサラリーマンではないことだけはわかる。 忙しなく走り回るおばちゃんが、薄い卵にくるまれたオムライスを運んできた。こんな日でもお腹は減るのだ。昨日は結局一睡も出来なかっ

          グリルABC(大阪・天満橋)

          ふうびとすうろ(京都・河原町)

          結局、2回目の三連休を優樹と過ごすことはやめにした。今更予約が取れるかもわからない旅行の提案にも心は踊らなかったし、先週のデートで、「やっぱり違う」という思いは決定的になった。 今週末は、今まで眺めているだけで何もアクションを起こさなかった、自分の将来について改めて考えてみることにする。もうそのための予約もした。優樹には、「両親が来ることになった」という見え透いた嘘を吐いた。じゃあ休み前の木曜は?と言われたので、仕事終わりにこうして会うことになったというわけだ。 夜7時、

          ふうびとすうろ(京都・河原町)

          岡北(京都・岡崎)

          この辺りに平安神宮と動物園があることはなんとなく知っていたが、美術館が立ち並ぶエリアだというのは今日初めて知った。そういえば、博物館ならば上野公園のところに何回か行ったことがあるが、美術館に足を踏み入れたことは人生で一度もない。愛佳さんがあまりにも自然に、「今は何の展示しているかなあ」などと言うので流されて来てみたが、やはり全く興味は湧かなかった。愛佳さんにとっては、デートでも一人ででもそういう場所に行くことは日常のことらしい。 「今日初日だし混んでるかなあ。まあ食べ終わっ

          岡北(京都・岡崎)

          TOSA(大阪・北浜)

          Instagramのストーリーズでレミさんが関西に来ていることを知り、連絡せずにはいられなかった。「夜しか時間取れないから大阪でなら」という誘いに私は迷わずOKし、平日の夜だと言うのに、京阪電車に乗って大阪に向かっている。仕事もプライベートも充実しているレミさんに、私のしょうもない話を聞いてもらうのは申し訳ない気がするが、どうしても前回アルバイト仲間で飲んだ時に彼女が「年下の子といい感じだった」と言っていたことが気にかかっていた。 プレゼントで貰ったネックレスは、つけるどこ

          TOSA(大阪・北浜)