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カンヌライオンズ2023速報 by 銀河ライター【3日目】

キーワードはAI時代の「自愛」と「自尊心」?


現地からお届けしている「カンヌライオンズ2023速報」3日目。

今日は「PR」「ソーシャル・インフルエンサー」「クリエイティブB2B」「データ」「ダイレクト」「メディア」の6部門が発表になっています。

受賞結果を見ていきます。

※クレジットは以下の順です。

①施策タイトル
②企業名(ブランド)/商品名
③企画(エントリー企業)/制作会社
④エントリー国名


PR部門

Self Love Bouquet
Doordash
GUT,LosAngels
USA

デリバリーサービスとして知られる「ドアダッシュ」が、バレンタインに実施した「セルフ・ラブ(ご自愛)」キャンペーン。

期間中にこの商品を購入すると、11本の赤いバラとともに、TikTokで人気に火がついたセックスグッズ「ローズ・トイ」(バラの形をしている)が花束になって宅配される。

バレンタインに他人ではなく、人生で最も大切な人「自分」への愛を贈ろうと呼びかけた。

※キャンペーンの全体像を解説するケースビデオがオンライン上に見つからなかったので、CMを紹介しています。が、いきなりの年齢制限……。昨日の受賞作に比べて、そこまで危険な動画ではないと思うのですが。


メディア部門

#TurnYourBack
Dove
Oglivy,London+David,Madrid
United Kingdom+Spain

長年(記憶では15年以上?)にわたり、女性の「リアル・ビューティ」を提唱しているDove。その一環として現在は、TikTokで大人気の「Bold Glamourフィルター」に反対している。AIが一瞬にして、その人の顔立ちを整える美顔ツールだ。

Doveの「Self-Esteem Project(自尊心プロジェクト)」による調査では、13歳までに80%の女の子がフィルターで写真を加工したことがあり、写真を定期的に加工する子供の48%は、しない子供に比べて容姿に対する自尊心が低いという。

「だれかがアクションを起こさなければならない」

そう考えたダヴは、TikTokのユーザーに「#TurnYourBack on Bold Glamour」(ボールド・グラマーに背を向けよう)と、後ろ姿の写真の投稿を呼びかけ、啓発しようとした。



クリエイティブデータ部門

The Artois Probability
Stella Artois
GUT,Buenos Aires
Argentina

ベルギーの代表的ビール「ステラ・アルトワ」。その源流となる醸造所の歴史は古く、1366年に開業しているそうだ。ゴッホやモネ、ブリューゲルといった美の巨匠たちも、このビールを“広告”していた。つまり絵画に登場させていた。

その事実に着目したステラ・アルトワは、描かれた年、地域、グラスの種類、液体の色などのデータと、ブランドに残された膨大な史料を照らし合わせて、歴史的な絵画にステラ・アルトワが描かれている可能性をパーセンテージ表示するAIツールを開発した。

プリントやアウトドア広告などに展開するだけでなく、ユーザーが美術館の絵画にモバイルを向けて「ステラ・アルトワ探し」ができるアプリもリリースしている。

ダイレクト部門

Runner 321
Adidas
FCB,Toront
Canada

アディダスは世界各地のマラソン大会に個々に呼びかけ、ダウン症のランナーの出場権を確保する取り組みを行なっている。彼らは背中に「321」のゼッケンをつける。そしてアディダスは、321大会での実現を目指している。

「321」はダウン症にとって象徴的な意味を持つ。この疾患は21番染色体によって引き起こされる染色体異常症(tri-21)とされ、それにちなんだ数字である。世界ダウン症の日が3月21日なのも同じ理由だ。

キャンペーンでは、アディダス初のダウン症スポンサー選手であるクリス・ニキックやほかのアスリートたちに密着した映像も制作した。

クリエイティブB2B部門

EART4
B3 Stock Exchange & United Nations Global Compact/EART4
ALMAP BBDO,Sao Paulo
Brazil

SDGsに対して腰が引けているビジネス界のリーダーたちを、すぐに国連の目標に向けてのアクションへと誘いたい。でも、どうすれば? 彼らは社会貢献ではなく、ビジネス文脈の話なら関心を持つだろう。

そこでB3は考えた。この組織は証券取引所として、2005年に世界で初めて国連グローバル・コンパクト(人権・労働権・環境・腐敗防止に関する10原則)に賛同している。

そして世界でもっとも緊急性の高い企業の"IPO”を行うことにした。その会社名は「地球(EART4)」だ。

気候変動や飢餓、水害など、「株式会社 地球」の”財務状況”は最悪。このプロジェクトでは地球の最新データを収集、”株価”に反映させている。その価値は日に日に下がっていく。科学的知見に基づく"年次報告書”も公開した。

一連のB2Bキャンペーンの結果、ブラジルのTOP100企業のうち、70%が国連グローバル・コンパクトへの賛同を決め、ブラジル国外にも広がっているという。

ソーシャルインフルエンサー部門

Flipvertising
Samsung/Samsung Galaxy Z Flip4
Chep Network,Sydney
Australia

Z世代はネットのターゲティング広告に対して特に懐疑的だ。スポンサーなしのコンテンツを好む。そこでサムスンは「ギャラクシーZ Flip4」リリースのタイミングで、その名にちなんだ「Flipvertising(逆手に取る広告)」を実施した。

視聴すると「新商品をプレゼント!」してもらえる動画広告が表示される。そのための検索ワードを、インフルエンサーの力を借りてユーザーに広め、わざとサムソンが提供する特定の動画広告のターゲットになるよう促した。

このことにより、参加ユーザーのオンライン広告環境はサムソン関連のコンテンツだらけになる。つまり、景品であるギャラクシーZ Flip4をゲットするための「がらくた集め(スカベンジャー・ハント)」を楽しみながら、プロダクトの購買意欲を高めようとした。結果、業界平均より600%高いエンゲージメントと34%の売上増をもたらしたという。

受賞速報はここまで。アナウンサーの永井美奈子さん、日経広告研究所の北村裕一さんとご一緒している「現地で深掘りシリーズ」は明日(現地時間木曜)16時から。日経カバナにて。

本音・本気・本質がスパークする良いセッションになってきています。参加者の皆様、ご参加を。

現地で深掘りシリーズの様子(Photo:
Yoshiki Ishii)

もうひとつ重要なお知らせ。キラメキさんの勉強会も、明日(22日木)、セレモニー終了後に行います。おおよそ22時くらいから(現地時間)。

有志でやっている海外クリエイティブ勉強会「NETA倶楽部」(Facebookコミュニティ)にご登録いただければ、場所・時間等の詳細見られます。申請してみてください。お料理お酒もご用意いただけるそうです。お時間あればぜひお越しください。


毎年同じこと書いてて恐縮ですが、目・肩・腰にくる3日目。今日はこんなところで。「自分をいたわる」「自分をリスペクトする」はいま、世界共通のキーワードみたいですね。

参加者の皆様、くれぐれもご自愛を!


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