見出し画像

日本橋・秋田、20190318

 東京駅に着いたのは5時台。3月18日の予定は東京駅から秋田駅までただひたすら移動するだけである。この旅はほとんど18きっぷで北海道に行くことだけを目的にしていた。ただ北海道に上陸してみたかった。よってスケジュールとしてはかなり変だ。

 出発予定の7時台までは時間がある。せっかくなので、東京駅から徒歩圏内の日本橋を見に行くことにした。

 ご存じの通り、日本橋の上には首都高が通っている。いろいろな意見があるが、日本が景観すら大切にできなかったことに私はやはりがっかりする。

 日本橋は昔から旅の起点だ。私の旅にとっては中間点だが、夜の間は寝ていただけだったので、本格的に移動するのはこの日からともいえる。

 最初は、宇都宮まで。疲れるのでグリーン券をわざわざみどりの窓口まで行き購入した。グリーン車は2階建てで、私は1階に座ってみた。普段見ることのない景色がなかなか面白い。

 宇都宮から先のルートはあんまり覚えていない。おそらく、郡山、福島を経由した。

 福島から米沢に抜ける途中に、峠という駅がある。そこでは餅が立ち売りされている。乗換駅ではなく、ただの途中駅なので、購入するには到着前からお金を用意しておかなければならない。峠の力餅。1,000円。列車から降りることすらせず、売り手の人が列車に寄ってきてドアで買う。

 このあたりでは新幹線が在来線と同じ線路で走っているので、新鮮な光景を目にすることができる。山形駅で乗り換え、新庄、横手を経由して秋田へ向かう。このあたりは混雑していて、ほとんど座ることはできなかった。横手につく頃にはあたりはもうすっかり暗くなっている。

 山形~秋田の区間は、3月になっても雪深い。横手駅で中学生が乗り込んでくる。先生の愚痴を言う。ところ変われど、雪が深かろうと、人間はたいして違わない。当たり前のことだが、目にすると感動する。

 今日は秋田で宿泊して終了。
 ただひたすら移動した1日だった。飛行機あるいは新幹線を使えば、東京から秋田への移動は一瞬だ。でもこれで良い。
 人はどうして旅をするか。それは簡単に言えば、日々の生活からのつかの間の脱却だと思う。人は日常生活の方法としてはるか昔に定住を選択した結果、暮らしを続けるうえで様々な決め事をしなければならないので、法と言葉で自らを縛り付ける必要が生じた。
 定住の反対は非定住、すなわち「移動」である。旅をすることでこうしたロゴス(法・言葉)から逃れられる。自由になれる。遍歴する芸人や職人の無縁性は、自由としての一面があることはよく知られている。また、その無縁性は差別につながることもあった。江戸時代、芸人の身分は低い。極端に言えば、旅の本質は移動にあるのではないか。ただひたすら移動することも大切なのである。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?