川虫すごいぜ

海の中にはエビやカニなどが魚の死骸などを食べてスカベンジャー的な役割を果たしている生き物がいる。これらの生き物がいるおかげで、海の中が魚や鯨の死骸の腐敗臭で満ちることはない。誰も食べるものがいない死骸は微生物が分解するしかなくなるので、ものすごい腐敗臭がするのである。

川の生態系はエビ、カニだけではなく、昆虫が保っている。ヘビトンボの幼虫などが魚や動物の死骸を食している。トビケラの幼虫、カワゲラの幼虫やユスリカの幼虫が川の有機物を食べているおかげで川はきれいに保たれる。

これらの虫は成虫になると羽ばたいて川の上流へと飛ぶ性質がある。幼虫のうちは川の流れに流されてしまうので、成虫になると流された分を取り戻そうとするのだ。こうして、川に流された有機物や栄養分が再び上流へと運ばれる。成虫の死骸は優秀な植物の肥料となる。

川の昆虫のすごいところは、成虫が飛べることだ。エビやカニは水でつながっているところまでしか生息域を広げられないが、昆虫は孤立した池や沼に真っ先に入っていけるので、生態系に欠かせない存在である。

あの迷惑な蚊でさえ、水の浄化と森の生態系の維持に欠かせない存在だ。もしも蚊がいなかったら、水たまりはバクテリアの出す臭い匂いでいっぱいになるだろう。

昆虫はカエルやサンショウウオの餌となり、さらにカエルやサンショウウオは鳥や狸の餌となり、森の動物たちを支えている。

しかし、近年、昆虫の数は劇的に減りつつある。ドイツなどでは昆虫の数があまりにも減りすぎていて、空き地の昆虫を保護する法律まで作られている。空き地の草を刈らずに残すことで、少しでも昆虫が増えて欲しいということらしい。

原因としては環境汚染や酸性雨、農薬などがあげられる。

北海道でも糞虫の一種であるダイコクゴガネが絶滅の危機にある。かつては牧場に行けば必ず見られた昆虫であるが、散布された薬剤の影響でほとんど見られなくなってしまった。

ダイコクゴガネぐらいいなくなっても同じような糞虫のセンチコガネがいるのかもしれないが、人間にとって致命的な打撃になりそうな昆虫がいる。それはミツバチだ。ミツバチはデリケートなので農薬にとことん弱い。蜂蜜は風邪をひいた時などに重宝するため、ミツバチの死滅は人類にとってかなりの痛手である。

このように考えると、昆虫の生きられる世界は人間が生きられる世界である。逆に、昆虫が生きられない世界は人間が生きられない世界である。昆虫を中心に生態系を考えていけば、環境問題に対してかなり有効ではないだろうか。自然界の健全さの指標として使える。

嫌われ者の昆虫ではあるが、昆虫がいなければ地球はおしまいであると言っても過言ではない。今から4億年ほど前に最初に陸上に進出したのは昆虫である。我々の祖先である両生類や爬虫類はもっと後に陸上に進出している。昆虫はいわば先輩なのである。この4億年近くの間、昆虫ありきで森が形成されてきたのだ。

気持ち悪いと言われがちだが、昆虫にもっとスポットライトが当たってもいいのではないかと私は考える。

最後まで読んでいただきありがとうございます。


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