行き先は…

無限に続く一本道に
すみれの花が咲いていた
ぼくがその深紫色を
感覚に取り込もうとするとき
後ろから遮ったやつがいた
「馬鹿!そんなものほおっておけ!」
「うるさい!」と僕は叫んだ
しかしそのスーツ姿のバッタ男は
鞄から硝子で出来た容れ物を取り出すと
その細長い緑色の触手を伸ばし
すみれをむしり取って
容れ物に入れてしまった
だからぼくの感覚は
バッタ男を取り込むと
すみれもバッタ男もいなくなってしまって――
結局、また僕は独りぼっちになってしまった
そうしてぼくは
ふたたび何かが立ち現れるまで
無限に続く一本道を
歩くすべしか残されてはいない
力なきこの道を
歩くすべしか残されてはいない




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