詩や小説を書いたり、書かなかったりしています。精神の活動報告。宣伝の為のスキはいりませ…

詩や小説を書いたり、書かなかったりしています。精神の活動報告。宣伝の為のスキはいりません。

マガジン

  • 小説集

    小説をまとめています。長くて十五分ほどで読めます。

  • 詩集

    練習帖ですが、よければご覧ください。

  • 考える葦

    思い浮かんだことの記録

最近の記事

banksy

 バンクシー展が開催の日を過ぎて一週間ほどが経ったが、客入りはまずまずといったところだった。バンクシーの作品が日本に来日するのはこれが二回目である。一回目はテレビの昼の番組でも芸能人がいつものごとくおふざけしながら大きく取り上げられた。中でもバンクシーがヨルダン川近くの町の壁に書いた「フラワー・スローワー、フラワー・ボンバー、レイジ、あるいはラブ・イズ・イン・ザ・エア」はバンクシーの象徴的作品として有名である。花束を投げるマスク姿の男の表情は病的に見える。一回目の展覧会は若者

    • 母の姿

      春の日溜まりで 色とりどりに咲く 窓辺のパンジーを 体を縮めて見ている 母の姿 強い日差しに照らされ 光り輝く いつかは消えゆくその姿 私がこの世を去るときに この一時も連れて行こうか うららかな春と一緒に

      • 夢の丘

        夢の月の丘は まあ、きれいなバラの花が 咲き乱れていること あのきれいな人の 白く細い腕 穏やかな川が 真珠色に輝いている なだらかな芝の丘の 月の光よ まどろみの中で それは一つになるだろう 鏡の破片を 一枚の鏡にするように 夢よ 不在の私をいつも何処へと つれてゆくのだ

        • 春の夕暮れ

          春の夕暮れ時 橙色の街灯の下を 勤めを終えた人びとが 緩んだ空気の中を おのおの向かうべき場所へ 歩いていく カフェへ? 愛する人のもとへ? それとも孤独の中へ?   春の浮き浮きした雰囲気に 人びとは溶け合いながら 春の夜の一つの情景になっている

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        • 小説集
          12本
        • 詩集
          31本
        • 考える葦
          5本

        記事

          春の歌

          自由の歌を歌いませんか 涼しい木陰の やわらかな小道で 大きな酒樽を沢山積んだ 馬車の周りに集まって 緑や青のペンキを顔に塗った髭のじいさんや 頬が紅色に染まった女たちと一緒に ああ、風は青い山に吹くし 花吹雪が犬小屋に吹き込んでいる 春の歌を歌いませんか 今はいっときの悲しみはどこかに忘れて

          春の朝

          昨夜 春の嵐が 窓のシャッターをうるさく鳴らしていたが 今朝 嵐は去って  静かな朝だ ときおり思い出したような風が 竹林の間に吹き 音を立てている 空は晴れわたり まるで春が たった今 つぼみのようにいきいきとふくらんで 花ひらく準備をしているかのようだ

          冬の朝日

          水平線と黒く垂れ込めた雲とのわずかな隙間から 真っ赤な朝日が光っている 波は暗い夜の中で音もなく  寄せては返す 私は凍える朝に立ちつくしている ただ眼を透明にして 朝がここから開くのを心待ちにしながら 堤防の奥まで歩くと 巨大なテトラポットが 薄明りで神性を帯びている  私を見定めて その判断を先送りするのだろうか 海水が私の罪を清めるとは思えないが ドドーン――海水が堤防を越えて ひたひたと路面をぬらした 波は白い駿馬のように砂浜を駆け回まわる そんな夢のような一瞬が

          冬の朝日

          怒りの感情の覚書

          私は自分の怒りに対して罪悪感を抱かないようにした。怒りという高貴な感情は喜びの感情などと同様に大切に扱うべきであると考えるに至った。 世間で怒りは不遇に扱われがちである。    

          怒りの感情の覚書

          山城賛歌

          山城の竹林の隙間からお寺の大屋根が見下ろせた。 山を下りお寺の朱の楼門をくぐるとき 門の右隣の空き地の中を 軽トラックが弧を描きながら でこぼこの土の上を走っていた 「何やってんの?!」と、小学生くらいの弟の方が空き地の端から言った。 「地ならししてんの!」と、大学生くらいの兄の方が言って、 運転席からこちらを見た。 その視線には何やら敵意のようなものが 滲み出ているようだった。 こちらも相手が嫌になった 本殿まで、両脇に白い干支の彫り物が列ぶ、急な階段を上って行った まだ午

          山城賛歌

          泥棒

          泥棒どもはたくさんいる その花菖蒲の葉叢の陰に あの古刹の寺の窯の中に 庭の芝生の日溜まりに あまりに早く 冬から春に季節がめぐるほどの早さで かすめ盗って行く 枯葉が舞って 気付いた 遅し! もう手遅れだった! 無花果は熟したが それは惨めな夢の影 色とりどりの小石が転がる浜の 永遠の歌

          JAZZ

          孤独な夜はJAZZを聞く そう、俺は月明かりに照らされた男 ベージュのトレンチコートの胸ポケットに 秘密のメモ書きが大量に入ってる 大きく開け放たれたステンドグラスの窓から トランペットの音が山を越えて流れていく 狼男がトランペットの音を追いかけて、 今にもその音色に泣き出しそう 山の反対側のセレブが沢山住んでいる街の灯は 点いたり消えたりして、 いつ終わるとも知れない遊戯に 人だかりができている! 狼男はついにその街まで下りて来ちゃった! あるスターが玄関扉を開けるとばった

          行き先は…

          無限に続く一本道に すみれの花が咲いていた ぼくがその深紫色を 感覚に取り込もうとするとき 後ろから遮ったやつがいた 「馬鹿!そんなものほおっておけ!」 「うるさい!」と僕は叫んだ しかしそのスーツ姿のバッタ男は 鞄から硝子で出来た容れ物を取り出すと その細長い緑色の触手を伸ばし すみれをむしり取って 容れ物に入れてしまった だからぼくの感覚は バッタ男を取り込むと すみれもバッタ男もいなくなってしまって―― 結局、また僕は独りぼっちになってしまった そうしてぼくは ふたたび

          行き先は…

          怒った顔 悲しそうな顔 歓喜の顔 恍惚とした顔 曖昧な顔 感情は崇高である 感情は顔に現れる 我々は他人の顔の中に人以上の何か―― 歴史上神と呼ばれるもの――を 顔という形象を媒介にして 日々見ているのであろうか。

          夜更けに思う

          努力する〈べき〉だ 成功する〈べき〉だ 親切にする〈べき〉だ 寛容である〈べき〉だ 優しくある〈べき〉だ 俺はこの〈べき〉にナイフを突き立てた するとそいつは白い小さなカタツムリみたいに成り果てた―― まるで十字軍のようだ 十字軍が行進している 赤い国旗を高らかに振りながら見送っている婆さんらがいる 子供らは小高い丘から行進の人だかりを眺めている だが、十字軍の行進はこれが最後だ なぜって俺がナイフを突き立てたから 今は白いカタツムリのようになった もう誰もいまい――

          夜更けに思う

          手と 手と 手と 手と 手と 手と 手と 手と 手と 手と 手と 手と 手と 手と 手と 手と 手と 手と 手と 手と 手と 手と 手と 手と 手を 繋ぐ 手は 私だった

          大晦日

          便器を念入りに磨く 年越し蕎麦を啜る 国と私の絆 曇りなき窓は青い 落葉した栗の木が天に向かう それが自然だから 夜が来た いつものことだ だから今日もいつもの一日だ 乞食は龍の化身だった―― だからあの湖に消えた 燃えさかる湖面 暗闇に浮かぶ民衆の眼

          大晦日