勢力拡大

 下田のやり方は汚い。しかし、それは正攻法だろう。一番合理的な。
 それは周辺、隣接するところとは同盟する。同盟とは助け合うことなのだが、敵に回らない程度の同盟もある。しかし援軍に来てくれる同盟が都合がいいが、こちらも助けに行かないといけない。これは困る。だから、敵に回らない程度の不戦、不可侵同盟を得るのが下田のやり方。
 しかし隣接する全てと同盟するわけではなく、一番弱そうなところとは同盟しない。まずはそこを攻めるのだ。攻めているとき、留守を狙われる恐れはない。味方で囲まれているため。
 そして攻め取れば、それと隣接するところとまた同盟する。そこが弱いところなら、そのまま攻めてもいい。
 そして周囲の中で、一番弱そうなところと同盟関係をやめる。以前より強くなったので、手が出せるようになったので、今ならいける。
 そこを取ると、さらに大きくなり、周辺の殆どを取ってしまえるが、もの凄く大きなところとも接触しているので、こことはしばらくは勝負できない。下田の勝負とは、勝つことが分かっている相手としかしない勝負で、負ける相手とは同盟し続ける。
 大きな勢力に便乗し、おこぼれを貰う。大きな勢力が攻めきれず、途中で引き返したときなど、そこへ攻め込む。敵は既に消耗している。だから簡単に取れる。
 そして取った箇所の周辺とも同盟関係を結ぶ。弱ければ取ってしまう。
 そうしている間にもう一つの大きな勢力とどこかで接触する。当然同盟だ。これで大きな勢力二つと同盟したことになる。
 そして、また同じことをやっているうちに、三つ目の大きな勢力の近くまで来てしまう。その頃になると、最初近くにいた大きな勢力はもう小さな勢力になっている。下田がそれだけ大きくなったためだ。だから勝負すれば勝てる状態。
 この大きな勢力を取ると、下田はもう押しも押されぬ大勢力になる。しかし小さな勢力はもう食べ尽くしたので、大きな勢力しか近くになかったりする。
 残った大きな勢力の中で、一番弱そうなところを次は狙う。
 もう既に一番大きな勢力になっているので、何処でも取れる状態なのだが、それでも慎重に、一番弱いところから順番に片付ける。その方が被害が少ない。
「そんなに上手く行きますかねえ、下田君」
「机上ではそうです」
「問題は同盟の質だよ」
「はあ」
「相手も同じ手を使ってきたらどうするのかね。同盟しているから攻めてこないとは限らないだろ。それにこちらはその手で同盟を破って取りに行っているんだからね。相手もそうするでしょ」
「そこに気付きませんでした」
「分かったらよろしい」
「はい」
 
   了

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川崎ゆきお

川崎ゆきお超短編小説 コレクション 5

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