川崎ゆきお

漫画家

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最近の記事

ノイズ

 最新テクノロリーでいろいろなことが分かってきたのだが、計測できるものは分かるが、そうでないものは間接的な計測になるらしい。  そのものは測れないが、それに影響されたものの動きなどは測れる。そういう動きが、あるかないかだけでも、測れないままよりも一歩進んだことになる。  しかし、そのもの自体は謎のまま。他に与えている影響で調べるしかない。  では昔の人はそんなことは知らなかったのかというとそうでもなさそうだ。別に計測器があったわけではなく、ただの想像だ。おそらくそれはこんなも

    • 冴えない日ほど

       今日は天気も悪いし冴えない日なので、高田は大人しく、静かにしておこうと思った。  いつも、はしゃいでいるわけではないが、こんな日は動いてもろくなことはない。気持ちも落ちているし、低気圧で頭も痛い。まさにろくな日ではない。  では七の日があるわけではないが、ラッキーナンバーの七が来るかもしれない。しかし、ろくな日ではないので、その期待もない。  仕事も上手くいっておらず、何とかならないものかと日々考えているが、思うようにはいかない。世の中そんなもので、調子のいい日が続くことが

      • 地味

        「最近は地味好みですかな」 「ああ、そういうわけではありませんが、地味なものは落ち着けます」 「それは貴殿の好み、やりたいこととは違うような気がしますが、如何ですか」 「やりたいこと、好み過ぎたものは疲れます」 「でも、本当はそれを選びたいのではありませんか」 「そうなんですがね。気合いが入りすぎて疲れるのです」 「その疲労感が良いのではありませんか」 「程よい疲労感、疲れならいいのですが、それが強いと逆効果です。最近では避けているほど」 「それで平凡なものがいいと」 「平凡

        • 姫の人形

          「筋者ならできると申すのじゃな」 「という噂でございます」 「姫の人形に呪いがかかっておるらしい。憑きもの落としに頼んだが、さっぱりじゃ。抜けん」 「三人ほどですか」 「ああ、三回やってもらったが、抜けん。やはり筋者でないと無理なのか」 「そのように伺っております」 「探し出して、来てもらえ」 「それがどこにいるのか、誰がそうなのかも分かりません」 「では、その方はどうして知っておる」 「我が領内に住む農婦です」 「その者に聞き出せ。何処におるのかと」  家老は農婦を訪ねたが

          変化

           普段とは少し違うことがあると、その後の展開が変わってくるわけではないが、少しは変化する。ある変化がある変化をもたらすようなもの。  しかし、一寸した変化なら、しばらくすると普段通りになる。普段からやっていることの続きへ。  しかし、ある変化により、普段見えなかった断面のようなものが見えたりする。それは常にあったのだが、その方角から見ていなかったり、または気付かなかっり。  これも大したことではなく、池田に影響与えることではないが、少しは気になる。  池田が普段気にしていなか

          冴えない日

           何となく冴えない天気の日だった。  曇っているためだろう。昨日までの暖かさがなくなり、少し肌寒い。昨日は暑いほどだったので過ごしやすい春の中頃。このまま初夏になり、暑くなるはずだが、今朝は気温の上昇は一休みで、逆に涼しい。  それはいいのだが、竹田も冴えない。いつも冴えているわけではないので、そんなものだろう。晴れておれば空元気も出るのだが、今日は大人しいというよりこれで平常のよう。  本来の竹田だ。背伸びしたり、あらぬ事をやろうとする竹田ではない。ただ、それは保守的で、守

          冴えない日

          常識

           世の中の常識が覆されると痛快な気分になる件もある。ずっと信じていたものが、実は違うと。  しかし、本当に信じていたのだろうか。そう教えられ、それが普通になっているのだが、あまり実生活には関係のないことも多い。  たとえば歴史的な新発見で、定説が覆った場合も、実生活に影響を及ばすようなことではなく、ただの知識だっりする。  そして覆っており、定説が違っているのに、相変わらずそれを使っている人もいる。知らないのだ、覆ったことを、そして事実ではなかったことを。  しかし、それを知

          妙案

           筋書き通りだといいのだが、なかなかそうはいかない。筋書きを書いたのはその手前、またはもっと以前かもしれないが、それほどの昔ではない。しかし何十年前に作った筋書きもある。それはさすがに通用しなかったりする。  最近書いた筋書きでも、それをやる場合、思わぬ伏兵が忍んでいたり、またその筋書きをやるのが億劫になることもある。書いたときと気持ちが変わり、状況も違うためだろう。  それでは筋書きなしで実行するのはどうだろうか。しかし、これもパターン化された筋を使うことが多い。書き手はい

          完璧

          「これぞまさにど真ん中、完璧だと思えるものがあるのですがね。完璧すぎて息が詰まります」 「完全に壁に囲まれているわけですからね」 「だから、窮屈に感じます」 「でも完璧というのは防御のことでしょ。その城内は安全とか」 「そうなんですか。私は完成度が高いもので、欠点のないものがそうだと思っています」 「何でもいいですよ」 「それで、続きなのですが、少しは欠点が欲しい」 「完璧すぎることが欠点でしょ」 「はい、壁の一部が破損しているとか、弱いところがあるとか」 「じゃ、完璧じゃあ

          失敗と成功

           失敗しそうなとき、これは失敗すると、そのイメージが来る。普通だろう。  また、これはどちらかが分かりにくいとき、どちらのイメージが来るだろうか。どちらでもないかもしれない。  失敗するかもしれないとは言い切れないし、成功するとも言い切れない。だから分からない。ただ半々だとすると失敗の確率の高さから、どうせ失敗するだろうと、思う方があとが楽。  最初から失敗すると思っていたので、その通りになっただけ。しかし確率が半々なら成功する可能性も半分ある。しかし半分では頼りない。  た

          失敗と成功

          日常の奥

           日常の中に潜んでいる奥深いもの。そこまでは行く必要はないのだが、奥の奥が見えていることがある。  そんなものは見る必要はないので、普段は見ていない。もっと目の前のことや違うことを思い浮かべたり。  日常が崩れたとき、平常時でもチラチラと見えていたそれがもう隠されないで露骨に出てくる。日常とは皮一枚。紙一重というやつ。  この紙切れ一切れだけでも、十分目隠しになっている。そっと手で紙切れを外すと、それがあるのだが、そんな行為はやる必要がないし、やろうとも思わない。  ただ立ち

          既にある

          「最近はどうも釣れん」 「いつもよく釣っておられるじゃないですか」 「いいのが釣れん」 「しかし、釣らなくても既に持っておられるのではありませんか」 「釣るのが楽しい」 「でも十分、持っておられますが」 「それはいい。同じものでも良いものなら何度も釣りたい。そして持っておく」 「随分と溜まったのではありませんか。これ以上必要なのでしょうか」 「いや、だから釣るのが楽しい。たとえ雑魚であっても、何がかかったのかと分からないときは、釣り上げたときの楽しみとなる。雑魚でがっかりが多

          月一の圧

           平田は月に一度だけの用事がある。同じ日に、二つのことをするのだが、どちらも圧、プレッシャー、バイオスのようなものがかかり、数日前からその影響下に入る。  まるで台風の圏内。しかし少し風が強い程度の強風圏。まだ暴風圏内ではないし、台風はその円の中を通るのだが、それなりに広いので、平田の真上を通るわけではない。それならストライクだ。  また、圏内に全く入っていなくても、月が変わると、今月もあれをしないといけないと思うだけで、その影響下に入るが、これは遠いので、さすがに身近に感じ

          無難

          「無難なところをスーと行ってますなあ」 「すいません。つい安全運転で」 「それはいいのですが、これは車ではありません。安全運転が必ずしもいいとは限りません」 「そうなんですが、ついつい」 「安全地帯だからでしょ」 「たまには冒険もします。一寸ですが」 「一寸過ぎて分からない」 「その一寸でも冷や汗ものなんです。変なことをやり出したのではないかと思われますので」 「誰もそんなことは思っていませんよ。それに一寸では気付かない。今まで通りだと」 「それに一寸した冒険でも自分自身では

          わや

          「ハレがケガレに変わる」 「昨夜の雨のためでしょう」 「満開の桜。まさにハレの場」 「それが散りましたねえ」 「花びらも下に落ち、泥水の中。いずれにその花びらも濁り汚れる。もう愛でる者なし」 「でも、まだ落ちていない花もありますし、葉が生き生きとしております」 「葉桜では詮無し」 「綺麗ですよ。まだ晴れ晴れしています。私はこの頃の桜が一番好きです。すがすがしさも感じられ、生命力にあふれておりますゆえ」 「ほう、そう見るか」 「でも葉桜の頃まで、花のない葉だけの桜になりますと、

          爬虫類型

          「沼田さんなんですがねえ。何とかなりませんか」 「僕とは同期だ。彼の方が成績がいい。だから主任だ」 「主任補佐でしょ」 「実際には沼田君が仕切っているようなもの。それに主任はもう年ですからね。沼田君に任せているのでしょ。それで逆によくなった。うちの班はそれで伸びた。その沼田君を何とかしてくれとは何だね」 「どうも相性が悪いのです。嫌なんです。顔を見ただけで、声など聞くと、もう駄目です」 「それは悪口かね。それはやめた方がいい。ここだけにしてくれ」 「相談する相手が先輩しかいな