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神戸南京町と春節祭             第1回 邪気を祓う新春の祭 

川瀬流水です。2024(令和6)年2月10日(土)から12日(月・祝日)の間、神戸南京町で春節祭が行われました。中国をはじめとするアジアの多くの国々では、旧暦のお正月を「春節」(しゅんせつ)として盛大に祝いますが、神戸の南京町でも、1987(昭和62)年から、これらをアレンジした形で「春節祭」が行われてきました。
 
神戸という街の発展は、1868年1月1日の神戸港開港とともにスタートします。街の発展の中心となったのは、開港と同時に設けられた外国人居留地ですが、神戸では最初から周辺地域への雑居が認められていたため、街には広く外国人と日本人が混住し、ともに協力し合う形で暮らしてきました。

旧外国人居留地と旧雑居地エリア図

私は、広島から移り住みましたが、神戸という街は、国の内外を問わず、他所から来た者を区別なく受け入れてくれる優しさをもった街だと常々感じてきました。これは、この街の発展のスタート時点から、多様な人々が力を合せ、ともに暮らしてきたことによるものではないかと思っています。そして、この点こそが、神戸の一番の魅力ではないかと思っています。
 
南京町は、外国人居留地の西隣に形成されました。神戸に住む中国系の人々(華僑)は、概ね、都心部から山手にかけて居住し、南京町は飲食店舗を中心とする商業エリアとして活用されています。

南京町エリア図
東の玄関「長安門」
西の守り「西安門」
南の守り「海榮門」

春節祭には、3日間とも行かせてもらいました。これだけ盛大な春節イベントは、本場中国でもなかなか見られないとも言われます。

賑わう屋台1
賑わう屋台2

今回は、まず南京町広場で披露された様々な演目に焦点をあててみたいと思います。演目は多岐にわたりますが、そのなかから獅子舞と、東京中国歌舞団による演技を取り上げます。

南京町広場に押し寄せる人々

 
春節祭で披露される獅子舞は、白や青など多彩な色のモフモフの身体とクリクリの大きな目玉、愛らしい仕草で大人気でした。獅子舞には、人々の無病息災を願い、邪気を祓う役割があるといわれます。

舞い踊る獅子
前立ちする獅子

獅子は広場で舞ったのち、周辺の店舗を順番に巡っていきます。集まった観客の邪気を祓うとともに、地元の人々の無病息災・商売繁盛を呼び込む演目として、欠かせぬものとなっています。
日本という異国の地にしっかりと根づく祭の形を、みることができました。

店舗を巡る獅子

獅子舞では、広場の観客の前を回りながら、また店舗のなかに入りながら、獅子が人々の頭を甘噛みしていきます。噛むという行為には、頭に巣くう邪気を食らうという意味があるといわれます。なんと、ラッキーなことに、私も甘噛みしてもらいました。嬉しい。

女の子を甘噛みする獅子

東京中国歌舞団による演技のうち、雑技(ざつぎ)をみてみましょう。まず、女性演者による皿回しとリングを使った演技です。

華麗な皿回しの演技
美しいリングの演技

次は、男性演者による高所パフォーマンスです。イスを何段も積み重ねた上、倒立等の演技が行われます。

イスを何段も積み重ねて倒立
素晴らしい演技でした

危険と隣り合わせの演技をやり抜く技の力は、困難に打ち勝つ力に通じ、観客の我々にも勇気を与えてくれるもののように感じます。今回も、ハラハラドキドキの演技が無事終わったあとの達成感を、いくらかお裾分けしてもらうことができました。

東京中国歌舞団による変臉(へんれん)は、中国四川省の伝統芸能である「川劇」(せんげき)の必須演目です。「臉」は「人の顔面」を表わします。顔を覆う面が、一瞬にして色とりどりの異なる面にすり替わる、一子相伝の秘芸とも言われる至高の瞬間芸です。

背後に流れる音楽と演舞の絶妙のマッチングで徐々に盛り上がったその瞬間、顔面がすり替わる早業は、驚き以外の何ものでもありませんでした。

見得を切る演者
変臉1
変臉2
変臉3
変臉4(顔面はまだまだ変化するよ)


広場をぐるりと取り巻く観客を巡りながら、所々に立ち止まり、観客の目前で一瞬で顔面をすり替える早業を目にして、観客はどよめき、春節祭一番の人気を博していました。

観客の目前で魅せる早業

 獅子舞、雑技そして変臉と、素晴らしい演技の数々をみてきましたが、これらの鍛え上げられた技の力は、それを目にする人々の気分を高揚させ、無病息災・商売繁盛を叶えてくれる特別な力をもっているかのように感じさせてくれます。

春節祭は、新春を迎えたこのときに、我々の行く手に漂う邪気を祓ってくれる新春の祭にふさわしいものでした。
 
次回は、春節にちなむオーナメントやグルメについて、みてみたいと思いますので、ご覧いただければと思います。

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