「山懐の女たち」 第2回 「草鞋縦走 村井米子」 正津勉
前回、「鳶山崩れ 幸田文」を書いた。「正味五十二キロ」の瘦躯を、案内者に負われて崩壊地を登る老婆。文、明治三七(一九〇四)年生まれ。その姿を偲ぶにつけ、胸を奮わされた。明治生まれの女は、いやほんと、並大抵でなく凄い。
このとき拙稿に向かいながら思い出される女人の詩があった。当方偏愛、指折りの詩人・永瀬清子。明治三九年生まれ。じつはその代表作とされる「だまして下さい言葉やさしく」という一篇がそれだ。これがつぎのようにも男衆殿にたいしてやんわりと、「だまして下さい……」そうし