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【 大怪獣のあとしまつ 】 感想vol.082 @MOVIX八尾⑤ 22/2/7

22/日/ビスタ/監督:三木聡/脚本:三木聡/撮影:高田陽幸

東宝ではなく、松竹と東映による怪獣映画。私の子供の頃から、怪獣映画といえば東宝の一択であった。その流れは現代にも続いている。そんな中で、松竹と東映が初めて手を組んで送り出した作品となれば、一体どんな映画になるのだろうか、と興味が尽きなかった。予告篇を観る限りでも、なかなかに真面目なご様子。これは観ねばなるまい、と劇場へと向かう。

ストーリーについて。
突如として現れ、日本中を恐怖のどん底に陥れた巨大怪獣が、謎の死を遂げる。安堵に沸く一方、新たな課題が浮かび上がる。この怪獣の死体をどう処理するのか。死体は腐乱し、悪臭を放ち近隣に影響を及ぼす。また、腐敗ガスが死体内に充満することにより、やがては大爆発を引き起こす危険があった。その死体処理を担当することになったのが、首相直属の機関、特務隊の帯刀アラタであった。政府閣僚同士のいざこざに巻き込まれながらも、任務を遂行すべく、彼は東奔西走するのであった。

下調べをしなかった私が悪いのであるが、監督は三木聡ではないか。そりゃ、そうだろう。真面目なものになる訳がない。上手いこと、宣伝に乗せられてしまったものだ。
ただ断ったおくが、私は彼の作品が嫌いな訳ではない。滑り散らしてどうにも笑えないギャグが逆に可笑しみを生むという、形容し難い空気を生み出すことの出来る、稀有な監督であると思っているので、その点は評価している。テレビドラマの『時効警察』も好きで視ていたし。
では何故、今作の監督を務めることになったのか。あくまで個人の意見でしかないが、東宝への挑発でしかないだろう。何をやっても一人勝ち状態の東宝に対して、我々はこんなにも、自由にふざけたことが出来ますよ、と一矢報いたかったのではないか、と推測する。
あとは単に、ウルトラマンに対する問題提起だろうか。地上戦を終えて、シュワッと空へ飛び立つが、怪獣の死体はそのままだ。まあ、大体は光線によって爆殺することの方が多いし、宇宙空間に持って行くこともあるが。
じゃあ、この死体を科特隊はどうしてたんですか、という素朴な疑問に対する、松竹と東映による、大がかりな突込みであろう。であるならば、ギャグ映画になってしかりである。今作を非難する意見が多いようであるが、期待を裏切られたからといって、作品そのものを低く評価するのは間違いだ。人間生きていたって、望み通りになることなんて、砂粒以下だろうて。寛恕の心が必要ですぞ。ただまあ、下品な表現が多過ぎたので、もうちょっとマイルドでも良かったのになぁ、とは思います。

いくら人類が知力を注いで策を立てても、歯が立たないものはある。そんな時は、人知を超えた存在に頼るしかない。だから今作も、やはり光の巨人が登場するのだ。これは暗にではなく、もろにウルトラマンのことではないか。やっぱり、皆好きなのだ、ウルトラマンの事が。会社は違えど、応援しているのだ。東宝に対して、いい加減なものを作ったら、許しませんぞ、という松竹と東映からの激励が込められた作品でもあったのだ。だから私は、『シン・ウルトラマン』を大いに期待して待つ。

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