そのリスクは、「瞬間的」?「永続的」?

リスクの意味は、「危険」。

セーフティー(安全)の反対語。

リスクが伴う投資、リスクの大きな事業、リスクの分散を図る、などと使われる。

「なにかにチャレンジする(前向きな行動)」ことは、その反面で、「危険なことがある(後ろ向きになってしまう事象)」。その覚悟を持って、行動してください、といったところだろう。

ただし、一般的に使われるようなチャレンジングな行動にのみ付け加えられるものではなない。

例えば、「リスクのある後退」「リスクのある停滞」「リスクのある停止」などだ。

あまり聞き慣れない組み合わせだが、なんとなく”そのリスク”が想像できてしまう行動だ。

つまり、前向きな行動にも後ろ向きな行動にも、全ての行動には「リスク」が伴うわけで、「リスク」の伴わない行動など、一つもないということだ。

好きな女の子に告白したい。でも、断られたら自分が傷つくかもしれない。だから、告白することにはリスクが伴う。

その通りだろう。

しかし、こう考えることもできる。

断られたら自分が傷つくから告白したくない。でも、何もしない、ということにリスクはないのだろうか。

好きな女の子は煮え切らない自分には好かれていないと判断し、別の男と付き合うことになった。

こうなると、”後悔”という長きにわたって消えることのない傷を心に作ってしまうかもしれない。

だから、告白しないことにもリスクが伴う。

こうなってくると、前向きとか後ろ向きといった問題ではない。どの行動をすることでの「リスク」を自分は受け取ることをより拒否したいのか、といった問題だ。

この二つの「リスク」を、おおざっぱに整理してみると、一つ目は、(告白したことでのリスク)『瞬間的な自己嫌悪型』、二つ目は、(告白しないことでのリスク)『永続的な後悔型』と言える。

『瞬間的な自己嫌悪型』は、主に行動を起こしたことにより発生する「リスク」。

「なぜ、自分があの女の子に告白できると思ったんだ(あの女の子はあまりに競争率が高く、自分のことなんて相手にするはずがなかったのに)」「なぜ、あのタイミングで告白してしまったんだ(もう少し関係を深めてからの方が良かったのに)」といったところだ。

まれに、自己嫌悪が、他者への攻撃性に変異する場合があるだろうが、そういったことも含めて、『瞬間的』と言える。

『永続的な後悔型』は、主に行動を起こさなかったことにより発生する「リスク」。

「なぜ、あの女の子に告白する勇気が自分にはなかったのか(あの時告白していれば付き合えていたかもしれないのに)」「なぜ、あの女の子のことをもっと信じられなかったのか(自分に好意を持ってくれていたことを後で知ることになるなんて)」といったところだろう。まれに、その後悔は、人生を左右するほどの後悔になる場合があるだろうが、そういったことも含めて、『永続的』と言える。

この二つのタイプの「リスク」は、あらゆる行動に当てはまる。

では、多くの行動の中で、この「瞬間的なリスク」と「永続的なリスク」は、どちらがより選ばれているのか?

統計があるわけではないが、おそらく、「永続的なリスク」が圧倒的に選ばれているはずだ。

なぜか?

それは、痛みの種類を考えるとわかりやすい。「瞬間的なリスク」の痛みは、”急性”の痛みだ。その瞬間、それはとても痛い。それも、いきなり痛くなる。心の準備もできていない内に。

逆に、「永続的なリスク」の痛みは、”慢性”の痛みだ。なんとなく痛くなり、徐々にその痛みが増していく。心の準備はある程度できているので耐えることができる。薬(多くの場合、諦めるといった気持ちや時間)の力でその痛みを和らげることもできる。

可能性を広げるためには、今すぐに行動を起こすことが必要になる場合が多い。

つまりは、「瞬間的なリスク」が伴うことが多い。

私たちは、生きている限り「リスク」から逃れることはできない。だが、「リスク」を選ぶことはできる。

あなたは、どちらの「リスク」を選びますか?


規律を守ることとリスクを冒すことは矛盾することではない。規律を守りながら、いつ、どこでリスクを冒すかアイディアがなければならない。

Ivica Osim(イビチャ・オシム)

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