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圧迫感

病院で事務職をしていた時の同僚、S君の話。

社会人になって初めての一人暮らし。S君はとにかく独立したくてアパートを探していた。

出来るだけ家賃は安く済ませたいと考えていたS君は不動産屋を何軒か回って自分が納得出来る家賃の部屋を見つけた。

すんなりと契約もまとまり、アパートへ引っ越すS君。その当日の夜。新生活への期待と不安なのか、中々寝付けない。

ようやくウトウトとしてきたのは明け方近くなってから。ベッドに横になっていたS君は急にみぞおちから胸にかけて妙な圧迫感を感じた。
ずっしりと重みのある圧迫感。

S君は最初、昨日夕飯を食べ過ぎて胃もたれになったのかと思った。

その日は圧迫感だけで済んだので、そのまま朝を迎え、仕事に行った。S君は、あまり遅い時間に夕飯を食べるのはやめよう。そう思った。

仕事が始まり、アパートから職場へ通う毎日。初めての一人暮らし。相変わらず明け方近くにある謎の圧迫感は続いていた。

毎日クタクタになってアパートに帰って来て、夕飯を早くとり胃もたれ対策しても、早めに寝ても疲れが取れない。S君は病院に行く事にした。診断の結果は、健康に問題は無いと言われてしまった。

悶々とした状態でアパートに帰ったS君。明日も仕事、とりあえず休む事にした。

‥明け方近くになり、やはり圧迫感を感じる。いつにも増して重さを感じる。そう、まるで人間がウマ乗りになっているかのようだ。

S君は本当に人が跨っているんじゃないだろうな?そう思いながら薄目を開けてみた。

‥それはS君に跨っていた。どうやら中年男の様だ。痩せてるくせに重さは感じる。腕は枯れ木、その指は枯れ枝のように細い。はっきりと顔は見えないが、白濁した目でS君を見つめている。

S君は思わず叫びそうになったが、全く声が出ない‥俗に言う金縛りというやつだ。

そいつはゆっくりとS君の首に手を回してきた。
じわじわと、ゆっくりと首を締め始める。

焦るS君、全身から滝の様な汗が流れる。とにかく苦しい。息ができない。どんどん男の指先に力が入ってくる。男の白濁した目から激しい怒りを感じる。

このままでは殺される!と思った瞬間、ベッドサイドのスマホが鳴り出した。

気づくと男は消えていた‥S君のお母さんからの着信だった。S君は全身汗びっしょりだった。

S、大丈夫?電話の先でお母さんが心配そうに声をかける。S君は今、見知らぬ中年男に首を締められていたことをお母さんに話した。

そういえばお母さん、何故こんな早朝に電話してきたんだ?とS君は聞いた。

お母さんは、S、親戚のR叔母さんは覚えてる?R叔母さんて、霊感があるのよ。あんたの住んでいるアパート、良くないものが憑いてるから早めに出た方が良いって言ってたの。

お母さん、なんか胸騒ぎがして朝早かったけど、Sに電話してみたの。そしたらあんた、知らない男に首絞められてたって言うじゃない!

そのアパート、すぐに解約しなさい!お母さんにそう言われたS君はその日のうちにアパートを解約し、引っ越しするお金をお母さんに借りて実家に戻ったという。



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