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慧音のひとり言ーレミゼを語る③ー

昨日更新をサボりました、慧音です。ごめんなさい。
ちょっとミス・サイゴンショックから動画漁りを繰り返していたらいつの間にか寝てました。健康優良児なので夜遅くまで起きてられないんです。

そんな前置きはさておき。本日は「On Palore(仮釈放)」と「The Bishop(司教)」です。さあさあ参りましょう。

On Paroleーー仮釈放

昨日の記事でPaloreと書いてました。ごめんなさい。仮釈放です。トゥーロン徒刑場から出てミリエル司教の家にたどり着くまでの曲です。

映画版だと割とカットされておるのですね。歌をカットした代わりに、音楽と風景でヴァルジャンの長い旅路(原作では「トゥーロンから四日間歩いた」「今日は十二里(=約47km)歩いた」と書かれていました、Google先生によればトゥーロンからディーニュまでは137kmくらいだそう)を表しているのは、それはそれで良いですよね。原作のいろんなシーンを詰め込んでくれて映画版は映画として良い。身分証身分証言われてねぇ。

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137kmってやまなみハイウェイと同じ距離なんですね。尾道から松江まで歩くようなことをやったわけです。ヴァルジャンは。泣けるな。

映画版の未公開シーンに、刑務所に泊めてくれって言うシーンもあるんですよ。また観てみてください。

ミュージカル版だと、希望に満ちて徒刑場から出て、仕事してたら仮釈放中だとバレてお金も半分しかもらえず追い出される、というのが原作で書かれているグラスでの出来事。ディーニュへ辿り着く前の話ですね。お金もらえてるから映画版よりは良いのかも。でも無賃労働辛いもんね。この頃はまだヴァルジャンはトゲトゲしてます。法律クソくらえ! つってね。
ここも新旧演出でちょっと変わったはず。

この曲に関しては映画版の演出をミュージカルと共に観たいなぁと思いますね。

Valjean Arrested, Valjean Forgiven(The Bishop)ーー司教

日本語版だと「司教」と一括りにされてますが、本当は「ヴァルジャンの逮捕と赦し」てな感じ。ヴァルジャンが性根を入れ替えるきっかけです。

映画版司教は10thでもヴァルジャンを演じた、初演ヴァルジャンのコルム・ウィルキンソンさん。10thではさすがに歳を感じる歌声ではありましたけど、1832ー33年のヴァルジャンはぴったりでしたね。彼が実際に演じた初演を観てみたかったです。
25th司教はアール・カーペンター。レミゼではジャベール役で有名ですね。POTOのファントム役もやってた人です。25th POTOではオークショナーをやってました。

「Come in sir,〜」のメロディは後のマリユスソロ「Empty Chairs at Empty Tables」と同一です。

映画版だと、この司教パートが終わると一旦曲が途切れて、司教の食前の祈りになります。ここで司教が「そして我らの客人にも」って言うのがグッときますね。ヴァルジャンが戸惑うのがわかります。

原作だと、司教の家を訪ねるなり「俺はこうこうこんな罪を犯して19年徒刑場にいた罪人だ」って言うんですよ。でも司教は意に介さず、マグロワール(司教の家の唯一の使用人の老女)に食事とベッドの用意を命ずるわけですね。神様。ミリエル司教に関しては前回もチラッと述べたとおりユゴー先生が第一編丸々使って語ってるのでそれを読んでくだされば彼の聖人ぶりがおわかりいただけるかと。原作のこの辺のヴァルジャンの動揺ぶりはすごいので是非読んでみてください。第二編の三です。

映画版の話に戻りますが、ヴァルジャンが食器を盗むシーンで司教の顔に月の光が射したのは演出ではなく偶然らしいです。自然の演出が司教の神々しさをアップさせたということで素晴らしいですね。この光が司教の顔を照らすのは原作にもありますが。
食器を盗む前の葛藤のシーンで天井のマリア様の絵が光るように見えたり、ここの劇伴とカメラの構図と、もう演出が素晴らしいですわ。
ヴァルジャンが家出た後食器を落としてしまうのも、背徳感とか感じて良いですね。多分、司教じゃなかったらそんなに罪悪感を感じずに盗んだでしょうから。ここは本当に良い。

映画版ではヴァルジャンの台詞はありませんが、ミュージカル版ではヴァルジャンは自分の心のうちを歌います。全然反省とか戸惑いとかないんですよ。この歌詞が。19年の刑罰で歪められた心が見えてこれもまた良い。何よりここのヴァルジャンの「Took the silver, Took my FLIIIIIIIIIIIIGHT!!」が本当にかっこいい。これは日本語歌詞より英語歌詞の方がかっこいいですね。日本語歌詞だと「逃げたーーー!!!」なので。ちょっとダサい。笑。

ヴァルジャンの「FLIIIIIIIIIIIIGHT!!」に被せる感じで、警察のテーマが来ます。このメロディ本当にかっこいいんだが。二人の警官が次々にヴァルジャンを責めていく感じがいいですね。
10thのコルム・ヴァルジャンは、警官パートは半分諦めモードみたいな立ち方なんですが(アップがない)25thのアルフィー・ヴァルジャンは「チッ、こいつら、クソが。」みたいな顔してるのが面白いところですね。アルフィー・ヴァルジャンはちょっとイライラしてる。

映画版はここも台詞オンリーです。捕まったヴァルジャンが司教の家まで連れてこられて、「この男が銀を盗んだのですが、これはあなたがあげたものなのですか?」と。それに対して、「That is right. But my friend」までは台詞で、「you left so early」からは歌で返すコルム司教。台詞から歌へのつなぎ方がとても綺麗なの。感動ものですよ。そして、「あげちゃうの?」って顔で司教を見てるマグロワールと「お兄さまったら」感満載のバスティーヌ嬢。この二人の表情の違いが彼女らの関係性を上手く表してますねぇ。

ミュージカル版にもこの二人の婦人は出てきますが、そんなに大きな役ではありません。歌もないし。25thではバスティーヌ嬢(多分)が銀の燭台をあげる役として出てましたが、10thではどちらも出てきません。まあコンサートですので仕方のないこと。

「That is right.」でヴァルジャンが弾かれるように司教を見るのは10th25th共通ですね。映画版はどっちかっていうと「何を言い出すんだこの人は」感がすごい。「俺を突き出せばいいのに」と思ってそうですね。

原作では憲兵の言葉を遮って小芝居を打ちます。ここの遮ったセリフがミュージカル版でも歌詞としてありますね。「この銀の燭台もあげたのになんで忘れちゃったの?」って。

そして、憲兵たちがいなくなってから「約束してください、善い人になると。」ってさー! 善い人にならざるをえないじゃないか!!! もうね、神々しすぎる。特に映画版のコルム司教は本当に原作ままですよ。トムフーパー監督ありがとう。

新演出になってから、ガヴローシュ役の男の子がこの「The Bishop」終わってからプティ・ジェルヴェ役として出るようになりました。知らずのうちにコインを盗んじゃった事件ね。この事件は新井版漫画の演出が好きです。新井版漫画本当に良いから読んで。全8巻です。

まとまりがなくなってきました。とりあえずミリエル司教は神。ミリエル司教と出会ったことがヴァルジャンの人生最大の幸福だと思います。

さて、次回は彼が司教によって乱された心のうちを歌うナンバー「What Have I Done? (Valjean's Soliloquy)(ヴァルジャンの独白)」を語ります。

それでは、良い夢を。

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