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伝説のこどもたち ゆかちゃん3

ゆかちゃんとおかあさんの毎日は、その日から変わりました。学校から帰ったら、ゆかちゃんの手を持ってその日の出来事をお話しするのです。(書くのですけどね)

わたしたちは、全く気づきませんでしたが漢字や簡単な英語も読めていました。 

その日、私は、ゆかちゃんを背にしてお母さんと話をしていました。

「ねぇ、本当ぜんぜんわからなかったね。ゆかちゃんがわかっているということ、ねぇ」二人で愉快な話をしていたつもりでした。ふと、背中から何かを感じました。振り向くと、ゆかちゃんが泣いていました。さめざめと…私の知っている奇声をあげて頭を叩いて、飛び跳ねてではなく静かに…頬を涙が滑り落ちていました。

なぜ?なぜ、泣いてるの?ゆかちゃんは、動きません。ひょっとして、私が、わからなかった って言ったから?

ゆかちゃんは、静かにうなづきました。

そして、私たちは、泣きながら謝りました。ごめんなさい、ごめんね、わかろうとせずに、わからなくてごめんなさい。

そこから、私たちはなんでもゆかちゃんに話すことにしました。すると、どんどん変わるんです。単語レベルから、長い文章へ。しかも、楽しくて楽しくて。毎日変わるゆかちゃんが、面白くて、可愛くって。


「今日、面白いことがあったんですよ。わたしの腕を取って、校門まで行き、小首を傾げてから、また教室に戻りました。あれはなんだったんでしょう?」お迎えの時間に、担任から聞いたそうです。

帰宅してゆかちゃんに聞くと「せんせいがかわいいからつれてかえってかわいがってあげようとおもったけどでかかったからやめた」と書いたそうです。おかあさんは、「かわいがるってなに?」と聞きました。「わからない」と、ゆかちゃんは、答えました。

クラスで川遊びにいって、カニを連れて帰ったそうです。多分、みんなで可愛がりましょうと、いったのではないか?と、いうことでした。それで、先生を可愛がろうと思ったのかなぁ?と、おかあさんと話しました。

本当に失礼なのですが、当時、自閉の人が、感情的なこととかがわかると思ってなかったので、とてもびっくりしました。

クラスにダウン症の男の子がいました。ダンスが上手なその子のことを、ゆかちゃんは大好きだったそうです。

お母さんは、ゆかちゃんに言いました。「でも、○○くんは、□□先生のことが好きなんだよ。ゆかちゃん勝つ自信ある?」

「かつとおもうよかわいくするから」

次の日、給食のあと○○君の食器を片付けたそうです。

昨日、面白いはなしがあったんだよねぇ、ゆかちゃん、先生におしえてあげて(お母さんは、とても得意げです。)

その日は、郊外学習でした。ゆかちゃんは、持っていた傘を用水路に捨てました。なんで、そんなことしたの?

「かさをすてたらせんせいたちはゆかのところへきてくれるとおもった」

(その日、クラスのやっちゃんがパニックになったので、先生たちは、みんなそこに集まってしまったそうです。ゆかちゃんは、一人でどこかに行ってしまう可能性があるので、くれぐれも目を離さないでくださいと、お母さんから言われていたにもかかわらずです) それでどうなったの?

「またやっちゃんのところにいった」それで?

「ようすいにかばんをすてた」なるほど!

ゆかちゃんさ、ゆかちゃんが入っちゃえばよかったのに

「よごれる」なるほど!

ゆかちゃんがやっているいろんな事に、意味があったんだと、気が付きました。

そうか、ゆかちゃんは、変わってない。

変わったのは、わたしたちですね。




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