音楽ミックスの順番が違うからうまくいかない芸術家気質の人


今日(2024 年1月)の収録でとても芸術家気質なアーティストの曲を録音&ミックスさせてもらった。
というか録音しながらミックスの指示を出す方なので、録音終わりと同時くらいにミックスがほぼできている感じ。

でも本人なっとく行かないまま帰ることが多い。僕の耳で聞いても当然ものすごく悪いミックスである。(指示された通りに動いてるだけなので)

その理由は多岐にわたるのだが、

せっかくなのでここでAudio EngineerMusicianの、大きな違いを書き記しておこう。

ミュージシャンは感受性豊かでその場の直感力がすばらしく、物の捉え方ひとつとっても他人と違う感想を出せる一方、理論的に何がどうなってるのかまったくわからないまま作る人が多いので再現性は0に近いのだ。
例えば「シンセサイザーのトランジェントのアタックは〜msで、ディケイは何々、430hlzを-1.3dbして〜」というようには作らない。

しかしオーディオエンジニアはそれとは違い、全て理屈で整音から始める。なんならミックスする前にコンプの値を先に決めることさえある。
アタック 20ms
レシオ 1:5
スレッショルド-24
で、これは800hlz以下を-6dbしようかな
とかね。

頭の中で図形を描くように最初に最後の完成形を想像してから音をいじることが多い。

じゃあどの様な順番で行うのか書いておこうと思う。
2024年1月時点でのマイブームのやり方なのでまた変わるとは思うけど。


  1. コンプの圧縮率を決める

全てのトラックを確認し、コンプの値を先に決めてしまう。
これはどこにどのくらい隙間を作るかの意識です。コンプをかければスペースがなくなります。なのでどの周波数をどのくらい埋めるかを決めるのです。

2.センターと右と左に何を配置するか決める

コンプが決まってるということはどの楽器がどの周波数を多く持つトラックなのかわかってきます、なので例えば4khl付近が多めに鳴る楽器があったとしてこれを右20と決めたら、同じような帯域の周波数を持つ楽器を左20にしようなかなと大まかに決めていきます。

3.不必要な帯域を削る

この時一番やりがちなのが、メキメキ前に出てくるかっこよく聞こえる音をそのままにしがちなのですが、マスタリングでこの辺りブーストしたいなっていうのも意識して削ります。ギラギラしたかっこいい周波数帯域の最終的な統一感のためです。

4.被ってる音で不要なものはないか探す(&整音)

イントロ〜Aメロではかっこよく鳴ってる音もラスサビあたりだと他の楽器がどんどん増えていくので不要になることがある。その場合に音量を上げ下げしておく。あとは音のリリースあたりで被ってくる次の楽器とのスイッチ具合も確認。被りすぎなら後ろを削ってうまくスイッチするようにしたりもする。場合によってはiZotope RXで細かいクリック音をとることも珍しくないです。

5.ヘッドルームを確保。(ゲインステージング)

意外と思われるかもですが僕はヘッドルームはこのあたりでじわじわ下げ始めます。-14〜-20あたりでやることが多いです。(VUメータの都合)

6.リミッターで上を止めます

音圧を上げるのではなく止める感じです。実は気付いてないだけでTrue Peakが一瞬超えてるときがあります。すると音はクリップしてざらついた音になりなんだかかっこよく聴こえます。かっこいいなぁって思ってたらマスタリング時に、あれ?音汚いな。。。ってなってしまいますのでそれを防ぎます。
クリッパーとかで歪ませることもありますが、それはあくまでコントロールして使うものです。常に音をUnder Controlの状態を維持します。

7.リバーブ、ディレイ、コーラスなどで加工

加工が必要であれば加工します。とはいっても実は結構これも気分で変えてたりします。その分微妙に音量を再調整したりしていきます。

8.バスコンプできゅっきゅ

各グループごとにバスコンプできゅっきゅと詰めておにぎりを作る様な感覚で、隙間をどのくらい埋めるか決めながら丸めていきます。
この時、僕は歪みぐあいも作ったりしてます。とはいえかなり薄がけして少しデコるイメージですね。

9.マスターに少し色付け

マスタートラックにEQとコンプをさして少しだけ色つけをする。
この時ほとんど数値を変えなくても音圧が出るっていうくらいがちょうど良いです。がっつり変化させた方がかっこいいっていう感じであればミックス失敗と思って間違いないです。ミックスの勉強に戻りましょう。

10.別の日に耳が健康な状態で最終確認をする。

作曲、録音、ミックス等をした日は大抵耳はかなり疲弊していてよく聴こえてない状態です。なので別日に聴いてイヤホンやヘッドホンで確認して終了です。


いかがだったでしょうか?参考になれば幸いです。



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