つかの間の平穏

モラハラ上司、クラッシャー部下、、、
この次の着任先は、至って平和だった。

仕事を任せてくれる上司。
慕ってくれる部下。
これまでの部署で培った経験が活きるような部署だったので、ようやく自分にとっては居場所を見つけたような状態であった。

それまでぼーっとしっぱなしの頭が、少しずつ戻り始め、睡眠サイクルもだいぶ改善された。
つくづくこういう時に思い出すのが「マズローの欲求」。
生理的欲求→安全欲求→所属&愛の欲求→承認の欲求→自己実現の欲求

個人的には「承認欲求」の位置は個人差があると思うけれど、つくづくこれまでが「安全欲求」との闘いの日々だったため、それよりも上の段階に自分の考えを巡らせる余裕など久しくなかった。

そんな自分が、急に安全欲求を手に入れた。
完璧に自信を喪失した自分が考える次なる欲求も、自然と後ろ向きになる。
自分の居場所はどこにあるだろう?
自分に一体何ができるのだろう?
日々、無事に仕事をできるだけで感謝しなくてはならないわけだが、心のどこかに執着しているものがある。

本音を言うと、人事から離れて以来、ずっと人事教育に未練があった。
けれども、その望みは異動を繰り返し、気づかぬうちに絶たれてしまった。
自分を人事教育にスカウトしてくれた人は、他の部署に異動してしまった。
それに、あのモラハラ上司がいる限り戻る事はできない。
そういう密かな執着心だけが、この平和な期間に大きくなったような気がする。


一方、部署内では日々忙しいながらも、なんとか自分らしさが発揮できる仕事ができていた。
自分の企画した案件が、ささやかなヒットとなった。
嬉しかったが常に不安がつきまとった。
目先の事に喜ぶよりも、先々ずっと戦い続けなくてはならない不安の方が大きかった。
漠然とした不安感がどうしてもぬぐえない。
そう、つらい日々を繰り返した自分にとって、この「平和」はどうしても刹那的なものにしか思えなかったのである。

私の日々突っ走る姿を見ていた隣の部署の上司が、いつも私に声をかけてくれた。
「そのままだと、お前ダメになるよ?どこかでリセットした方がいい。」
当時、私はこの言葉の意味に全く気付かなかった。

そんなある日・・・上司に呼び出された。
「僕(上司)、異動が決まったよ。」
私は、肩の力が急に入るのを感じた。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?