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五輪ロゴ報道に違和感があるのでちゃんとまとめてみよう

五輪ロゴをめぐる騒動もデザイナー佐野氏の会見でだいぶすっきりした方も多いのではないかと思いますが、メディアの報道や委員会の回答にはいくらか違和感を覚えずにはいられません。

違和感その1。「世界中の商標を調査して大丈夫だったので法的に問題は無い」という委員会の回答。
基本的に商標権と著作権は別のもの。今回ベルギーのデザイナーが言っているのは「似てるよね。盗作じゃないの?」という話であって、著作権侵害の話。それに対する回答としてははっきり言って的外れ。委員会の回答自体もそうですが、それをそのまま報道するメディアの側も理解してないということが露呈しています。

違和感その2。「劇場が商標登録をしてないのだから、ロゴを守る気がなかった。なので訴えるのはおかしい。」と言っていた一部メディア。
これも上記と同じで、劇場が商標を登録して守ろうとするかしないかと、デザイナーが著作権を侵害されたと言うかは全くの別問題。

違和感その3。「盗作じゃないにしても、ケチが付いたので一回チャラにして一から作り直したら方が良いとは考えないか」と言っていた一部メディア。
著作権は登録制ではないので、全ての既存ものものを調べるのは無理。全ての著作物は、侵害の訴えを起こされる可能性があるもの。ただし、裁判で侵害とならなければ法的に問題は無いので、訴えられただけで「ダメ」と言ってしまう感覚に何の説得力も無い。
個人的には、今回のロゴは著作権侵害にはならないと思っています。

今後、もし本当にベルギーのデザイナーが訴えて、裁判になったとして、著作権侵害と認められるにはいくつかの条件があります。
(詳しいことはおそらく多くの弁護士さん、弁理士さんがブログ等で書かれると思うので、簡単にまとめます。)
(1)そもそもリエージュ劇場のロゴは著作物なのか。
著作物と認められなければ、著作権侵害も成り立ちません。シンプルなロゴなどが著作物と認められるかは微妙なところです。
「Asahi」ロゴマーク事件

(この判例では、著作物性とは認められませんでした。)
(2)実際に似ているのか。
(3)知ってて真似したのか。
元のデザインに「依拠」して作ったのか、平たく言うと、知ってて真似したのか、というところが問われます。訴えた側が訴えられた側が知っていたということを証明しないといけないのでハードルが高いと言えます。
今回会見で佐野氏が「考え方が違うので盗作ではない」と言われていましたが、おそらく彼が言いたいのは、「独自の考え方でたどり着いたデザインであり、他のものに依拠して作った訳ではない」ということではないかと思います。
「ワン・レイニー・ナイト・イン・トーキョー」事件

(この判例では、依拠していないと判断され著作権侵害ではないとされました。)

個人的な意見ですが、今回はそもそも(2)の点で「似てるとは言えない」と最初から思っています。また、もし裁判になったとしても、リエージュ劇場のロゴが(1)の著作物であると認められる可能性も低いと思いますし、(3)が証明できるとも思いません。
ですので、東京五輪ロゴは自信を持って使っていってもらいたいと思っています。

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