嘘つき仮面

🔷嘘つきの仮面

私がA妻M美に初めて接した時の驚きは、
今もよく覚えています。

初対面での挨拶の際、
軽いお辞儀をしてそれを戻すと、
それまで後頭部しか見えなかったそのヒトの顔に、
映画「13日の金曜日」の殺人鬼と同じ白い仮面が、
私には、見えたからです。

当時は只々、一瞬驚き、大変不思議に思っただけでしたが、
後に、彼女がひどい嘘吐きである事を認識した時、
なるほど、と納得したものです。

よもや信じがたい話かとは思いますし、
自分自身でも未だ思うのですが、
私には昔から、このような事は割とよくあったのです。
恐らく私の祖先に関係する由縁なのかと思います。

今思えば、当初の彼女は、
至って調子のいい発言に満ちていました。
そして、
やたらめったら、話し続けていました。

今思えば、常に誤魔化す発言を出していないと、
職歴などの詐称がバレる事に、
怯えて、いられなかったのではないかと推察します。

ですから、彼女から放たれる言葉は、
相手への媚と、自分を大きく見せる発言ばかりでした。
今になって振り返れば、
それらの自分を大きく見せる発言も、
悉く「嘘」だらけでした。

そのようなヒトですから、
一つの嘘を隠すべく、どんどん嘘だらけにもなったのかもとも思います。
というか、
嘘を言う事で、上役や周囲の信用を彼女は得ていましたので、
実力とのあまりの乖離が、
仕事でそれなり密に関わった人には、すぐバレるという状態でもありました。

しかし、
それらにすぐ気付くような視力の人は、
至って他者の動向にも細やかで冷静穏和で謙虚な人が多いものですから、
パワハラ体質のヒト達とは異なり、
敢えて、大袈裟に騒ぐ事もしませんでした。
わかる人にはわかってるよな、という感じで。

しかし、
上役の多くは、彼女の自称経歴や発言を信じ、
また媚にも気を良くしてなのか、
彼女の嘘の数々に数々に気付く事もなく、
逆に騙されて、彼女の都合通りに動くまでに至っていました。
おそらく、彼女がいいかげん「いい年齢」であったからです。

マスコミの夫がいて、(自称の)立派な経歴も持ち、
もう既に妙齢でもあった彼女が、
まるで若輩者のような吹聴をわざわざするなどとは、よもや考え難く、想像もしない上司も多かったのだと推察されます。
決して、
嘘をつかなさそうな外見でもなかったのですが、
年齢的に、そのような事をする年齢には、見えなかった訳です。

それなりの中堅の官僚よりも、彼女はやや年上で、
何らかの長のクラスと同等の年齢でした。
それに加え、
「マスコミの夫」「元病院秘書」「弁護士と懇意」「セレブ」と云われれば、
それらの「肩書きへの偏見」から、
発せられる嘘の数々を嘘とも思わなかったのだと思われます。
つまり、
結果的に嘘を信じていた多くの長の人達は、
「自身の偏見によって、事実の確認を怠った」状態だったのでしょう。

しかし其処って正に、
ことに外交には特段に、
必要な事であった筈だろうに、とは、
素人考えにも思います。
それは、ふと我にかえって客観視をすると、
とてもこわい事にも思います。

また、悪事の発覚や訴訟のおそれに、日々内心怯える類の素行の官僚方には、
彼女の「弁護士と懇意」発言が、輝いて見えもしたのでしょう。
同様に、「マスコミの夫」を仲間にしてしまえば、
今後の不祥事発覚も隠蔽して貰えるツテと考えたでしょう。もしくは、情報操作にも使えます。
何より「(自称)セレブ」の自分達との(偽りの)同等感が、彼らの安心となっていたかも知れません。

私が最初に見た「白い仮面」は、
多分、その欺きの「気」を察知したからだったろうと、
私は思ったりします。

あんな仮面がはっきりと見えたのは、
後にも先にも、彼女だけです。

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