風上辰流

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【小説】臘雪と垂迹

-------現在執筆中です。随時更新します。------- 1  霜枯れた松梢に埋もれ、虚に顫動する雉子は、垂雪に紛い落魄する。枯凋した躯体を煽る松籟は颯々と、雪面に伏す双翼へ纔に翳る。扮飾を纏う丹華の如き肉垂は、俄に皓白な地へ瀝り妙々と、漸次硬結する骨肉の褪色に比し、殊に鮮烈な余韻を引き、凜冽を包含して甚だ冴ゆる。乾坤の只中煤ぶる屍骸は、煙霞を佩ぶ心鏡に映発し、痼疾である澆薄な私心を故ら揺り、雪雫が氷晶へ転ず須臾を一瞥す。  諏訪湖を囲繞する杉木立は、冠雪の掩蔽に樹梢

    • 太宰治【人間失格】におけるキリスト的「父性愛」と仏教的「母性愛」

       破滅型私小説の書き手である太宰治が上梓した、「人間失格」という異様な作品について取り上げる。太宰の自己否定的な作風を、単に精神病気質の一言で片付けてしまう様では、文学としてつまらない。一方で太宰の作品は評価が難しい所もあるため、この記事では個人的な読解が多く含まれる事を了承して頂きたい。 人間とは何か  人間とはどの様な存在かと問われた時、我々は漠然とした感覚を抱く事しか出来ず、詳細に言語化するのは不可能に近い。しかしながら人間は、その不確かな感覚をそのままに放置して、

      • 【文学観】自己の再定義

         僭越ではありますが、自身の文学観について書き連ねようと思います。私が掲げる文学のテーマを下記に示します。 喪失した自己の再定義 東洋思想と仏教 形骸化した文化の再興と精神性の向上 連帯性の回復  上記の4つを掲げ、日々執筆に精を出しています。未熟者の浅薄な知識での文学観ではありますが、少しでも読んで頂けたなら光栄です。 純文学とは  純文学の一般的な認識として、純粋な芸術性を目的として創作される文芸作品とされている。文学における芸術性とは文体などの表面的な物で

        • 【小説】徒世の空華

          noteでの公開はサンプルとなります。 本文はKindle、Kindle Unlimitedに掲載しています。 1  山吹の葩卉が悠々と零る余韻は、清冽な水が充溢する余地に、一片の花弁の余波を齎すが如く、日没に伴い散失した貴し和魂は、春月の杳然たる微光に包まれ聚む。  山吹は川縁から梢を放擲して撓み、水面を弄う程に枝垂れ、舞落つ花弁は玉川の水を顫動させ、汀に嵩む水紋は幾重にも干渉し、茫洋たる月明を返照して凪ぐ。風韻漂う山吹の葩卉は清淑に、夜陰を映ずる水面の翳に揺動し、朧気

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        • 四季四部作
          2本
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          1本