見出し画像

「THE SECOND」元年に寄せて



楽しみにしていた「THE SECOND」グランプリファイナルが放送された。

今年初開催の大規模賞レースは、結成19年目のギャロップの優勝で幕を閉じたわけだが、個人的には、いち視聴者としてかなり楽しめる番組だったと感じた。

以前よりお笑い賞レースに関する記事や「THE SECOND」の優勝予想を投稿していたこともあるので、早速感想等について書いていこうと思う。



【審査方法について】

「THE SECOND」は、数多存在するお笑い賞レースの中でもめずらしい「会場のお笑い好き一般観客100名による審査」が採用された。
審査員それぞれが【とても面白かった(3点)、面白かった(2点)、面白くなかった(1点)】の3段階で絶対評価し、100人の合計点数で勝敗を決めるというもの。
これに関しては、制作側が理由として「特定の審査員が批判されたり炎上するのは好ましくない」「大きく点差をつけるバランスブレーカーひとりの采配によって結果が決まってしまうことを避ける」という意図を明言しており、実際狙い通りになっていたように思う。

”お笑い好きの一般審査員”というところに不安感を示す声もあったようだが、M-1グランプリの敗者復活投票が、単なる芸人の人気投票になっていない所をみても、今大会のレギュレーションとして信頼に足るものだっただろう。

また、採点基準を”絶対評価”としていた点も非常によく作用していた。対戦する2組のうち、どちらのほうがより面白かったかではなく、単にその芸人のネタ単体がどのくらい面白かったかを基準とすることで、審査員自身が賞レースの審査員であると同時に、あくまで一般観客であるという部分を強調できていたのではないだろうか。

この、”一般審査員が””絶対評価で点数をつける”システムが、結果として、お笑いの賞レースで漂いがちな「観客を笑わせる」こと以上に「審査員に評価される漫才を作る」という雰囲気とは相反した、「目の前の観客をいかにして笑わせるか」という、ある意味ではお笑いの本質ともいえる空気感を演出していたように思う。

【ネタ時間6分の漫才】

本大会のネタ時間は「6分間」となっている。これは、M-1をはじめとする漫才賞レースのスタンダートである4分と比較し、1.5倍とずいぶん長い。この6分という時間をどのように使うのか、漫才にどんな影響が及ぼされるのかが注目だった。

結論から言うと、この”6分の使い方”が、本大会の最大の見どころであったように思う。

各組の1本目のネタに焦点をあわせても、「金属バット」や「マシンガンズ」は、本ネタと言える漫才の大筋的な部分を短めにし、残りの時間を冒頭のつかみや観客イジり、果ては緊張していることに対する自虐などに時間を割き、アドリブっぽさを感じさせる構成に仕上げてきた。

「スピードワゴン」は、キャラクター性を押し出した一人コント型の漫才だったが、序盤の短いボケを繰り返す構成を後半で一気にストーリー展開させたり、聞き手の井戸田さんがコントの世界に引き込まれるギミックなど、4分尺では難しい奥行きのあるネタだった。

「超新塾」や「テンダラー」のように、ネタ時間という枠の中に緻密に計算されたボケをテンポよく詰め込むスタイルも面白かったし、喧嘩に近い掛け合いのくり返しでどんどんボルテージを上げていく「囲碁将棋」のストロングなネタも、「三四郎」のようにお笑い好きが観ていることを前提にニッチなボケを入れることで拍手笑いの時間まで想定したネタも、それぞれが”THE SECOND攻略法”という感じがして楽しかった。

最終決戦で「もうネタが無いんだよ」と言いながら全編アドリブに近いネタで会場を沸かせるマシンガンズと、ラストの爆発的なボケの為の前振りとしてほぼ4分間に渡って一人しゃべりを展開するギャロップの対戦は、6分×3本のネタが必要だったからこそ観ることのできた、THE SECONDならではの頂上対決だった。

【ベテラン同士の対決という構図】

THE SECONDがどんな大会になるのかについては未知の部分が多かった。
もちろん、結成15年を超えたベテラン芸人たちの漫才は、経験や場数を感じさせる素晴らしいものばかりだった。
それと同時に、賞レースの優勝を争う場から一度は卒業した面々が、再び栄光を賭けて戦う様に心打たれたお笑いファンは多いことだろう。

日常的にテレビや劇場で大活躍している彼らが、がっぷり四つのタイマンでネタをぶつけ合う姿、負けた悔しさに顔を歪め涙を浮かべる姿、審査結果に一喜一憂する姿、若手時代から世話になった先輩を倒して感極まる姿など、数々の名シーンを目にすることができたことが、何よりもこの大会の意義であったように思う。




この大会がが、世間一般にどのように認知・評価され、来年以降どういった形で継続していくのかはわからない。が、実力も人気もあるベテランたちが、まるで少年漫画のような闘いを繰り広げる「THE SECOND」、その記念すべき第1回をリアルタイムで目撃することが出来たことが嬉しい。
今回の結果に刺激を受け、次回大会への参加を決意した芸人も少なからずいるだろう。次回の「THE SECOND」は、もっともっとすごい大会になるに違いないと思うと、今からワクワクが止まらない。

これだからお笑いの賞レースって大好きなんだよな。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?