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No.2 Burberry / トレンチコート

第二弾はBurberryのトレンチコートになります!

「トレンチコートといえばバーバリー!」
と皆様の頭の中で何故か結びつくほど
トレンチコート=Burberry の印象がありますよね。

なぜ、トレンチコートといえばBurberryなのか
なぜ、これほどにまで支持されているのか

今回はこれ程にまで世間に定着した経緯や
Burberryの魅力を紹介できればと思います。


Burberryはイギリスを代表する
ファッションブランドで
1956年にトーマス・バーバリーによって
創設されました。
その当時は主にアウトドア関係の衣類を
幅広いラインナップで展開し、
少しずつロンドンを中心に認知されていきました。

当時のロンドンは気候が変わりやすく、
その時代のレインコートは重く通気性の悪い
ロウを塗ったワックス加工か
ゴム引きのコートしかなかったのです。

ゴム引きのコート


そこでトーマス・バーバリーは
洋服だけでなく生地の制作をスタートしました。

当時、農民や羊飼いが雨を防ぐ為に
使っていたアイテムが麻素材の羽織もので、
水を含むと膨張するリネンの素材を活かしながら
雨風を防ぎ、懸命に働いていたことから
新素材の生地の着想を得たのです。

1879年
長繊維のエジプト綿を極めて細く織り上げた
今でもBurberryを象徴する「ギャバジン」という

軽量かつ丈夫で破れにくく通気性もあり、
撥水性を兼ね備えたオールシーズン使える
革命的な生地を開発しました。


コットンギャバジンを開発した後も
季節に応じて、より保温性の高い
ウールギャバジンも開発しました。

そんなギャバジン素材はウールやコットンの他に
今日ではコットン×ポリエステルの混紡のものが
スーツやコートの素材などに使われております。

更に詳しく説明すると
平織りだと織り目の角度が90度で
雨が滲みやすいから
それを45度にした綾織りを採用しました。
そうすることで、糸の隙間をきつく織り上げ
糸同士の隙間を極限まで無くして
45度の角度をつけることで
雨が染み込まず流れるようにさせたのです。
だからコットンでも水を弾いちゃうわけなんです。


しかも生地だけではなく織る糸にも
防水加工をしているから撥水性は勿論、
汚れも付きにくく長持ちするんですよね。

スニーカーを買ったら汚れから守る為に
防水スプレーを振って防ぐライフハックは
約150年前から誕生していたわけですね。
昔の人すごい…。

ちなみに「ギャバジン」の語源は
中世スペインの巡礼者が着ていた
「ガバルディナ(gaberdine)」から来ております。
そういった意味ではこの素材は民間にとって
救い人といっても過言ではないでしょう。



そうしてトーマス・バーバリーは
1895年、ギャバジンを使用した
タイロッケンコートを製造します。
戦争でのイギリス人士官用に作られたコートで
胸にボタンがなく、腰のベルトで
固定する(Tie Lock)という簡易な留め方で
これが後のトレンチコートの生みの親になるわけです。
※ちなみにバーバリーのタイロッケンコート、
 一枚袖がとても貴重でかつ形が綺麗なので
 現在高値で取引されております…


その後、第一次世界大戦中に
機能性の高い軍服の需要が高まり、
「ぜひBurberryに作って欲しい!」と
英国陸軍省より依頼を受けました。
そしてイギリス軍人たちが使用するために
タイロッケンコートに様々な改良が加えられて
1914年、遂にあの「トレンチコート」が開発されました。


実は皆様が着ている洋服の根源は
だいたいはそういったミリタリーの
要素が多く含まれています。

ちなみに「トレンチ」とは
塹壕(銃撃や砲撃から身を守るための穴)
という意味で、
あのクラシックなイメージに反して
トレンチコートには
様々なディティールがあるのです。

銃や双眼鏡、手袋、ホイッスル等の
軍用品を吊るす為のエポレット(肩のボタン部分)
手榴弾の持ち運びに使われた
Dリング(ベルトに付いたD字型の金具)
ライフルを発砲した際の衝撃を緩和させたり、
雨水の侵入を防ぐ為のガンフラップ(胸にある当て布)
雨水が背中からすばやく流れ落ちるように
デザインされたストームシールド(背中の中心部)
肩の可動域を広げる為のラグランスリーブ
(首から脇にかけて縫ったステッチ)


軍人用に開発されたということもあり、
たくさんの工夫が備わっているんです。
(これ以外にもまだまだ工夫が施されています…)

腰のベルトも実はコートの重さが
肩に集中せず腰と背骨に分散できるからなのです。

でも、今ではトレンチコートのベルトを後ろや
前で結んだり「いらないから」と取り除いたりと
自由な着方ですよね。僕はそれでいいと思います。

あくまで軍人にとっての利便性が
名残としてあるだけで、僕たちにとって
「機能的」「お洒落」であればいいのです。
勿論ベルトを付けるのも存分にアリですよ。

ハリウッド映画でも、有名なお方たちが
このトレンチコートを羽織って活躍しています。
「カサブランカ」のハンフリー・ボガートや、
「ティファニーで朝食を」のオードリー・ヘプバーンも作中に雨の中コートを羽織っていました。
ちなみに「ルパン3世」の銭形警部も着ています。
(実はお洒落さんだったんですね笑)


イギリス内で有名になったBurberryですが
日本ではまだそこまで有名ではありませんでした。
ですが、1964年の東京オリンピックで
英国女子チームが着ていたBurberryのコートが
偶然、風でなびいた際に見えたコートの裏地の
綺麗なバーバリーチェックによって
人々の注目を集めたのです。

そう考えるとBurberryが人々の生活に浸透し
あのチェック柄=高級ブランドという
価値観を見出した先駆者でもあるのです。


※今回は丸善がインポートした話や
バーバリーとライセンス契約していた
三陽商会ならびにBLACK LABELの話をすると
とてつもなく長くなっちゃうので省いちゃいます…


現在に至るまで150年の歴史があるBurberryですが
中年層に支持されていた一方
若者層への支持に欠けており、
若者へのニーズの確保に苦戦しました。
しかし、2018年再熱のきっかけになった人物が
元ジバンシーのデザイナーのリカルドティッシです。
この方がBurberryのCCOを担当してから激変しました。

まずブランドロゴを変えたのです。
100年以上ロゴに使われてきた
「馬上の騎士」も無くして
シンプルなフォントに変更しました。


Burberryだけでなく、
バレンシアガやセリーヌやマルジェラなど
有名なハイブランドもロゴを変更しました。
これは移りゆく時代と共に
紙面からモバイルに変わりつつある
媒体やメディアの変化が大きく関係しました。
たしかにパッと見てわかりやすい上に
モダンな印象ですね…

次にTB(トーマスバーバリー)モノグラムという
デザインの柄を考えました。
今までのBurberryは
落ち着いた雰囲気のデザインでしたが、
今後に向けて若者へのアプローチに路線変更し、
新しいトレンドに沿って従うだけでなく、
自ら新時代を作り出す思いを強調しているそうです。


最後に再熱のカギになったのが
元々のクラシックなラグジュアリーファッションに
相対するストリートファッションを混ぜたのです。
それにより独自のラグジュアリーストリートという
新しいスタイルを確立させたのです。


これには勿論、世間からの賛否はありましたが
自分は破壊と再生(Scrap & Build)こそが
カルチャーの本質だと思いますので
クラシックにおいてもストリートにおいても
その本質はお互い通ずることだと思います。
このクラシックの反対語のモダンを
自然に取り入れ上手く融合した
リカルドティッシは素晴らしい功績を残しました。

来年2023年からはボッテガヴェネタの
元デザイナーのダニエル・リーが
BurberryのCCOを担当します。
この方もセリーヌやマルジェラでの経験があり、
いくつもの受賞歴があるので
古くからのBurberryの伝統や
リカルドティッシのこれまでの取り組みを
どう継承し、どう表現するかが期待されますね。

以上を含めて
Burberryのトレンチコートの歴史や
現在に至るまでのファッションの変化が
少しでも皆様に伝わりましたらとても嬉しいです。


コートだけでなく現在のアイテムも
十分にかっちょいいものが沢山ありますので
ブランドへの固定概念なんかは一旦おいといて
HPやSNSを覗き見すると
意外な出会いがあるかもしれませんね。


ではでは。

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