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墓標の山

この猛暑を "墓標の山"に登る人がいる。
熊よけの鳴り物を 打ちながら。

どれほどの人が 知っているだろうか。
鳴り物の響きが
鎮魂の鐘に 聞こえることを。

尾根へ続く道のかたわらに
番号記号だけが記された"墓標"が
無数に大雑把に 散らばっていることを。

その散らばっている墓標の場所に
犠牲者となった搭乗者の
痕跡や欠片があったことを。

墓参のために拓いた山道では
行き交う際の挨拶が
「ご遺族の方ですか」
であることを。

世の中では風化しても
自分の中では風化しない
未曾有の航空機事故。

夕闇迫る ちょうど今頃
恐怖と絶望と一縷の望みに翻弄された人たちが
空の中にいた。

またいつか 参りに行こう。
オスタカという 名の響きまで神聖な尾根に。

8月12日。
- 日航機墜落事故 -

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