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『最後のマスカラ』④ #毎週ショートショートnote

*最後の鱒から


仲間の姿を見かけなくなって久しい。
たぶんオレが鱒としての最後の生き残りなのだろう。

春・・・今の時期には大昔から、仲間たちの一大イベントがあった。
降海型のオレたちは約1年の海での回遊の後、母川に遡上していた。
サクラの咲く頃に再び川に帰ってくるので
サクラマスとも呼ばれていた。

雌は産卵のために命を賭して遡上し雄も後に続く・・・・

産卵を終えた仲間たちは川の上流に身を横たえ、その死骸は
海からの養分を大地に伝えてその地の自然と同化する。

だが、悠久の時を経てあらゆるものが様変わりした。

もはや地上にオレたちの天敵だった二本足の生き物の姿も見ない。
供給される養分を失った上流の自然も荒涼地帯と化した。


最後に生き残ったオレが遡上することにどんな意味があるのだろう?
上流に辿り着けたとしても、そこに子孫を残すべき雌の姿はない。
全ての力を使い果たしたオレに何が待っている・・・・?!

それでもいい。

ただ・・・突き動かされる衝動のままに!!!


【了】

(410字)


*この物語はフィクションであり、実在の人物・出来事・場所
名称・事件等とは一切の関係がありません。


*こちらに参加させていただいてます。
今回のお題は 『最後のマスカラ』
裏お題が・・・『サイコの鶏唐』でした。

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